【読書感想文】うんこは地球を救う!『ウンコロジー入門』
本書はタイトルとは裏腹に、真面目に環境について考えさせられる本である。
自然環境を大切にしている著者は、ある時から水洗トイレが環境に悪いことと糞便を大地に還すことがいかに環境にとって良いかに気がつき、水洗トイレを使わない生活を、つまりは野糞をする生活を続けている。
本書を読むと、いかに人間が、いや人間だけが生命のサイクルから離れてしまっているかがよく理解できる。
本来であれば、生き物というのは飲んだり食べたりしたものを糞尿にして全て大地に還していた。その糞尿は菌類や植物などの小さな生き物たちの栄養となり、またそれが巡り巡って別の生き物の食べ物となるのだ。
しかし、人間が発明した「水洗トイレ」というものが、そのサイクルから人間だけを分離してしまったのである。
それに本来であれば何もせずとも土に還るものを、人間は大量の水を使って下水に流し、また大量のエネルギーを使って燃やして灰にして、コンクリートに固めているのだ。
見た目的には綺麗で清潔な水洗トイレは、実は環境という側面から見ると甚だしく地球を汚している一因なのである。
一方で糞便を大地に還すとどうなるのか、という実験を著者は自ら行なっている。
大地に糞便をし、土を被せる。それは虫や菌類、植物たちの栄養となり、時間が経つにつれて発酵して、匂いもなくなり、やがては栄養がたっぷり詰まった土となり、また違う植物がその土から芽を出す。
人間以外の他の生き物たちは全てそうしているのに、人間だけがそのサイクルから外れてしまったのだ。
とは言っても、実際の生活のなかで野糞をしようとしても、なかなか難しい現状がある。僕自身2年前まで都会に住んでいたので、その難しさは容易に想像できる。
野糞をしようとしたって、そもそもできそうな場所がない。思いついたのは公園の茂み……、くらいだが、もしそんなところで糞便をしようものなら即座に通報されかねない。かけつけたお巡りさんに「水洗トイレが悪いんです……。うんこは地球を救うんです!」なんて言っても、頭がおかしいと思われるだけである。
じゃあ、どうすればいいのか。
答えは一つ、自分にできる範囲でやってみる、ことである。
都会に住んでいたとしても、年に一回キャンプに行く時だけは水洗トイレを使わない、とか。
実家が田舎にあって後ろが林になっているからその時だけは使わないとか。
年がら年中、都会に住んでいて水洗トイレを使わないのが難しいのなら、せめてトイレットペーパーを使う量を減らすように意識してみよう、とか。
それぞれにできる範囲で取り組むだけで、環境というものは変わってくる。自分一人がやっても変わらない、と思うかもしれないが、人間というものは誰かがやっていると別の人間も感化されて始め出すものなのである。
田舎に住まう僕自身としては、知り合いの有機農家さんがすでにコンポストトイレという水も使わずに糞便を発酵させて畑の肥料にするエコなトイレ、をやっているので教えを乞うてみようかと思っている。というか、それをやるための知識が欲しかったので、本書をわざわざ購入したのだ。
なかなか環境について考えて行動する人は少ないとはわかっているものの、一人でも多くの人が環境について知ってくれたらと切に願う。