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日本の支援教育を考える【246限目】
2024.12.12
私が教職に就いた1971年頃は、特別支援教育は特殊教育と呼ばれ、学校の中では、特殊学級「心身に障害がある子どもの学級」として、通常の学級とは別という位置づけでした。
それから養護教育という名前になり、平成19年度(2007年度)に特別支援教育がスタートして、特殊教育から名前が変わり特殊学級も特別支援学級に代わりました。
対象となる子どもの範囲も広がり「心身に障害がある子ども」から「特別な教育支援を必要とする児童生徒」になりました。そして、学校全体で子どもたちの支援・指導を考えて実施するという体制ができて大きく変わってきました。また子どもの就学先の決定も、保護者の意向が重視されるようになりました。
特別支援教育がスタートして「心身に障害がある子ども」に加えて「発達障害のある子ども」が対象になり、それを実現していくためには、たくさんの課題があります。
特別支援学級には、障害の種類や程度の異なるこどもたちが在籍していますので、指導案も集団全体の流れとともに、一人ひとりの子どもにあった指導が必要です。
子どもたちの障害は、知的障害、自閉症、情緒障害、肢体不自由ですが、視覚や聴覚の障害、LDやADHDなどを併せて有する場合があります。
そのため、支援学級の担任は、個々の子ども一人ひとりの実態を把握し指導に当たります。学級に5人の子どもがいれば、1対5ではなく、担任と子供の1対1の関係が、5パターンあると考えると、担任ひとりではとても大変な指導内容になります。
通常学級を担任して
私のクラスの特別支援学級在籍の子どもたちは、国語・算数や支援学級での行事以外は、朝の会・給食・掃除・帰りの会も一緒に生活することが多く、学級の子どもたちも支援学級の子どもたちと同じ時間を過ごします。
支援学級へ行ったり、一緒に学習したり、休み時間も一緒に遊びます。支援学級では教室を20分休憩や昼休みに開放して、教室にはない遊び道具(パズル・トランポリン・昔遊び・絵本など)で遊んだりすることで、学級の子どもたちもだんだんと、どうすれば楽しく過ごせるかを理解していきます。
大勢の中でいると気が散ることもあるので、無理をせずゆっくりと、落ち着いて学習できるように配慮していくと、だんだんと教室でも落ち着いて学習できるようになってきます。
しかし交流を進めるにあたっては、子どもたちの負担にならないことや、体調が悪いときなどは、そっとしておくなどの配慮が必要だと思いました。
それでも通常学級が安心できる環境でないことも多々あります。通常学級の担任は、支援学級の担任に比べると、障害に対する理解が十分ではなく、どのように支援したらよいのか戸惑うことも多くあります。
パニックを起こしたり教室から出て行ってしまったりすることもあります。そんな時は、支援学級の担任との情報交換をしたり、支援学級での様子を見に行ったり、TT(ティームティーチング)で支援学級の授業に入らせてもらったりして、子どもをよく理解するために交流することが大切だと思いました。
海外のインクルーシブ教育はどうなっている?
インクルーシブ教育~多様な子どもたちが共に学ぶ~後編
12月9日(月)Eテレ 午後8時~ より
北欧の国は、福祉国家と言われているほど、社会保障が充実していて暮らしやすいと言われています。
その中でデンマークの学校では、教室は机がなく、1クラス20人ぐらいでその中には障害のある子どももいます。
スウェーデンでは40年以上前に、1クラス30~40人の考え方がなくなって、授業内容に合わせて一緒に授業を受ける子供の数が10人になることもあり、北欧では、一人ひとりの理解度に合わせて、指導する子どもの数を調整しています。
さらに、日本とは全く違うことがあります。
それは先生がいっぱいいることです。
ノルウェーでは、先生が4人でチームを組んで教えたり、学校の外部から専門性のある指導者が来て1人の子どもに5人ぐらいの指導者がかかわったりして、学校では学ぶ環境を整えるための様々なスペシャリストがいます。
たとえば、看護師が学校に常駐していて、障害のある子どもをケアしたり、言語障害のある子には、言語聴覚士がついて授業のサポートをしたりしています。
このように様々な専門性のある指導者がいることで、一人ひとりの異なるニーズに幅広く対応できています。
日本だと学年ごとにカリキュラムが決められていることが多いですが、スウェーデンでは、子ども一人ひとりの学習の進め方がそれぞれに考えられて決められています。
北欧の国々は障害があっても無くてもみんなで社会を作っていく大人になってほしいと期待しているからです。
イタリアでは、1992年に小学校から大学まで、すべての障害のある子が通常の学級で教育を受けることが保障されています。今では特別支援学校はすべてなくなり、99%がインクルーシブ教育を受けています。
イタリアの学校は、クラス替え、教員の移動、高校の入学試験がない。入学から卒業までクラス替えはなく、同じ先生が指導します。長期間にわたり一人ひとりの成長を見守ることで、子どもの個性を尊重する教育です。
また、日本のような高校の入学試験はなく、障害などがあっても希望する学校を選べるような配慮がされています。
日本でも実践できるのか?
海外のものをそのまま取り入れたらよいかというと、それが日本にとっての正解とは言えないと思います。それは日本なりにどうしたらいいかを考える事が大切だからです。
それを考えるのは、先生だけではなく、子どもたちや社会にいるありとあらゆる人が、インクルーシブ教育をどうしていけばいいのか話し合うことが大切です。
人々の中に、健常児と障害者は離して教育するものという思い込みがあることや、障害に対応する設備やサポートする人材が不十分であることなどが日本でインクルーシブ教育が進まない理由にもなっていると思います。
現状では、担任がすべてを引き受けている場合もあります。専門的な指導や支援を行うことができる教員の加配といった教育環境を整えていくことが、インクルーシブ教育を実現していくうえで非常に大切なことだと思います。
日本の学校はひとりの先生の役割が多すぎると思います。
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【今週のけい先生】*担当:夫(父)
今週のけい先生は、身体の総点検(1年ぶり)で、両ひざ関節・乳がん検診で異常なしという結果を受けて、今の生活スタイルを維持できることを喜んでいました。
私(夫)も腰の検査を久しぶりにしましたら、ドクターに4年前と変わっていないと言われて、安心して高校の部活指導を継続しています。夫婦ともども安心して新しい年を迎えることができることに感謝しています。
【編集担当より】
手帳を開いて今年があと何日か数えると、残り18日だそうです。2024年との付き合いもあと少しですので、思い出に残る年末年始となるとよいですね。
皆さんにとって、2024年はどういった1年だったでしょうか。新しい出会いや別れ、転職、転居、未来に向けて活動を始めるなど。
今年の年末年始は、土日がうまく絡んで長期休暇の方も多いと思います。また旅行や実家に帰るなどで、いつもよりゆっくりする時間も多かもしれません。2025年をどのような1年にしていきたいかを想像するのもいいことかと思います。
その為にも、2024年を最後まで走り切りましょう。大掃除をしっかりやると1年の節目感が出ていいかもしれません。個人的には、いつも来年の手帳を買うとスイッチが入ります。
年末のイベントや飲み会、出会いなど、ぜひ楽しみましょう。