
「治安維持法」とは何か?-日本が「ロックダウン」ではなく「自粛」する理由-
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国は様々な措置が取り入れられている。「ロックダウン(都市封鎖)」を実施する国もあれば、日本のようにロックダウンと比べ強制力がない「自粛」を実施する国もある。同じようにロックダウンを行っても、被害度や緩和基準は国によって違う。
10日に投稿されたNewsPicksの記事では、このような違いが起こる理由の一つとして、それぞれの国がもつ社会背景の違いがある、と言っている。
日本では緊急事態宣言下においても、外出に対する罰則はなく、他国と比べて国民に対する強制力は弱い。その社会背景として「治安維持法」が挙げられるという。
今日は、この「治安維持法」とは何かについて調べた。
資本主義と社会主義
現在の日本の経済体制は、個人や企業が自由競争により利益を追求して経済活動を行い、財やサービスをつくりだして経済活動を大きくしていく、という「資本主義」である。資本主義以前は、農業を基本とする自給自足、経済活動の中心は商人や地主だった。そして18世紀後半におきた産業革命をきっかけに資本主義が確立した。
資本主義経済には3つの特徴がある。
①生産手段の私有財産化
例えば、会社で使う土地や道具(生産手段)は資本家が持っているお金で買う。その土地や道具は国の物ではなく、一国民である資本家の物(私有財産)である。
②全面的な商品経済社会
個人や企業は利益を追求し、財やサービスを作り出し、商品として売る。また、資本を持っている人は、賃金と引き換えに労働力を提供してもらっている(労働力の商品化)。
③利潤の獲得を目的とする経済活動の自由
国家は市場に介入せず、民間に任せておくと、市場がうまく機能し、需要と供給の調整で財やサービスの価格が決まり、その価格に応じて生産量や消費量が変動する。
資本主義は政府が介入せず、自由な競争によって高い財やサービスを作り出せる。しかし一方で、競争に負けた人は利潤が出ず、その結果、貧富の差や周期的な恐慌が生じてしまった。結果、大企業が多くの企業と統合し、少数大企業による寡占・独占が出現した。
そのような背景から、19世紀後半にドイツの経済学者マルクスが「社会主義」を提唱した。社会主義は資本主義とは逆に、土地や道具などの財産はすべて国や自治体のもの(社会的所有)となった。自由競争はなく、資本家と労働者という階級をなくした。分かりやすく言うと、資本家が国や自治体、その他は労働者、という位置付けになる。また、市場に国家が介入し、国家の計画や指令によって財やサービスが作られるようになった。
社会主義は国の計画によって動かされるので、労働者がどれだけ頑張って財を生み出しても、賃金が上がることはない。競争もないため、よりよい商品を作ろうとも努力しない。その結果、生産性が低下し、経済は停滞する恐れがある。
1922年に誕生したソ連は、この社会主義経済を導入したが、行き詰まって1991年に解体。その後のロシアは資本主義経済を導入されている。
ちなみに現在、日本含む多くの国で導入されている資本主義は「修正資本主義」である。政府がまったく介入しないのではなく、様々な税を導入し、所得を再分配することにより、貧富の差や恐慌を防ぐものである。
治安維持法の誕生
産業革命によって日本も民主主義を実現していくようになった(大正デモクラシー)。同時に自由主義的な思潮を持つようになり、その推進を主張する政党が世論の支持を受けて内閣を組織した。
1925年には普通選挙法が導入され、これまで納税額によって制限されていた選挙権が、25歳以上の男子全員に認められるようになった。
一方で、政府は資本主義、自由主義に対する社会主義的思想を持つ人々の勢力を恐れた。同年には日ソ基本条約によってソ連と国交を結ぶようになった。社会主義思想のソ連の影響が大きくなり、政権や国の仕組みまで変わってしまうのではないかと恐れるようになった。
そこで政府は、「私有財政制度を廃止し、天皇を中心とする国家体制を変える」といった社会主義運動を取り締まるために、治安維持法を普通選挙法導入の直前に成立させた。
しかし、これはやがて独裁政治となっていく。普通選挙法が成立し、初の普通選挙が行われた直後には、全国一斉に行われた共産主義者の弾圧により、1600人もの人が検挙された。さらに数ヶ月後には、治安維持法の罰則の最高刑を死刑にまで引き上げた。行き過ぎた政策は、太平洋戦争直前には、国家の方針に従わないという理由だけで取り締まれるようになり、もはや軍国主義のためとなってしまった。
結果、自由主義実現の一貫で作られた普通選挙に対して、治安維持法は自由な思想を弾圧し、国民の生活を圧迫させるものとなってしまった。終戦後、GHQの指令により廃止され、翌々年施行される日本国憲法には「思想の自由」が規定されるようになった。
「自粛」を実施する日本
1947年に日本国憲法が施行され、思想の自由や信教の自由、表現の自由などが規定されるようになった。戦後のこうした憲法下において、政府の私権に対する制約は慎重になっている。
緊急事態宣言が実行されても、国民の自由を尊重し、例え外出をしても罰則はない。戦前のように、政府が行き過ぎた弾圧をしていると国民に思われないようにしているのかもしれない。
結果、世界的にも日本の感染者数は少ないということは凄い。一方で緊急事態宣言の延長によって街には人々が出歩き始めた光景も見られる。また、営業しているパチンコ屋の名前を公表することにより、間接的に休業へと追い込んだ。
欧米に比べ圧倒的に感染者が少ないが、その科学的根拠は示されていないことから、急増する可能性もある。政府がどこまで国民の自由を制限するべきなのか、非常に難しい議論である。
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