経営破綻すると、会社はどうなるのか
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの産業の経営が困難な状況に陥っている。人や貨物を遠隔地に輸送する航空業界もそのひとつだ。
先日はオーストラリアの航空会社「ヴァージン・オーストラリア・ホールディングス」が経営破綻した、と報道された。
また国内だと、過去に日本航空が1度経営破綻している、という話は聞いたことがあるだろう。
ただ、そこで思ったのが「経営破綻すると、どうなるのか?」ということだった。これまで経営破綻したニュースを見ても、その事実を知るだけで、実態は分からないまま過ごしてきた。今回は「経営破綻とは何か」をテーマに色々調べてみた。
「破綻」と「破産」の違い
まず最初に「破綻」と似た意味を持つ「破産」との違いについて調べてみた。広辞苑で調べたところ、それぞれの意味はこうだ。
破綻:物事が成立しないこと。従来の関係を保てなくなること。
破産:家産を破り失うこと。
上記から「破綻>破産」という関係が成り立つ。つまり「破産したから破綻した」とは言えるが、「破綻したから破産した」とは言えない。
「破綻」に書いてある「関係」とは、例えば銀行だ。銀行から融資してもらったお金を計画通りに返済できる見込みがなくなったときに、会社は破綻する。
また「破産」には「負債と資産を清算する手続き」という意味もある。「負債」とは他社から借りているもの、「資産」とは自分たちが保有しているもの。これらをチャラにすることが「破産」だ。
破産するために資産とは、例えば不動産や貯金、所有していたブランドなどその会社の名義で使用していたものが全て失くなる。当然ながら従業員も雇えなくなる。それら全ての資産を、抱えている負債と相殺しなければならない。
ここまでで、経営破綻、つまり経営が成立しなくなったら「破産」という方法がある。だが過去に破綻した日本航空はなくなっていない。なぜだろうか。
先ほど述べたように「破産したから破綻した」とは言えるが、「破綻したから破産した」とは言えない。日本航空は別の方法で破綻し、現在も経営を続けていると言える。
調べてみると「破綻」には「破産」以外に「民事再生」「会社更生」があるようだ。
民事再生
先ほどのリンクに貼り付けた記事を読むと「ヴァージン・オーストラリア・ホールディングスは任意管理手続き(日本の民事再生法に相当)の適用申請を決めた」と書かれている。
【民事再生法】
経済的に窮地にある債務者について、債権者との権利関係を調整しながら、その事業または経済生活の再生を図ることを目的とする法律。
簡単に言うと「債権者(銀行などお金を貸している人)と話し合って、経営復活の計画をし、残っている負債は徐々に返済しよう」ということだ。
この計画を「再生計画案」と呼び、リストラや所有している財産の売却などが行われる。これを裁判所に提出し、債権者が合意すれば経営を続けられる。一定の額だけ返済し、残った債務は免除される。
借金は免除!?と思ったが、当然メリットとデメリットがある。
民事再生のメリットは、破産と違い、会社を存続させられることにある。会社が消滅するわけではなく、一定数の雇用も確保できる。
一方でデメリットは信頼を勝ち得なくては、さらに経営が困難になることだ。再生計画案に基づいて経営できるのか。また破綻している以上、取引先との関係は従来のように上手くはいかないため、今後どう関係を築いていくのか。
また、費用もかかる。申し立てするための費用も負債額に応じて変わってくるし、免除された債務は所得税として払わなくてはならない。そこまで計算して、余裕がある状態のみ、民事再生を適用申請することができる。
会社更生
先ほども述べたように、日本航空の経営破綻は会社更生により経営再建してきた。現在も日本航空という会社が存続していることからも、「会社更生」は「民事再生」と同じように会社を存続させる、というメリットがある。
「民事再生」との大きな違いとして、「会社更生」は株式会社のみ対象となることだ。そして、この更生手続きの申し立ては債権者や株主も行うことができる。
また、更生手続き開始が決定された場合、経営陣は一度すべて退任され、会社の再建に向けて多くの場合、管財人(財産を管理処分する人)は弁護士が携わることが多い。
日本航空がどういう経緯で再建に至ったのか、政府のページに記載されていたので、よかったら参考にして頂きたい。
まとめ
経営破綻をした会社には、破産して会社や雇用すべてを売り払って清算する方法と、民事再生や会社更生といった「再生計画案」に基づいて会社を再建させる方法があった。
民事再生や会社更生といった再建型は、今後も経営を続ける為、破産するよりも資金が必要だ。破産する企業よりも、再建型を選択する企業はある程度大きくなくてはならない。
一方で、破産というのは経営を続行しないわけだから、そのプレッシャーから抜け出せる、というメリットがある。もしかすると、再建の見込みがない場合は、先行きが分からないままじっと我慢するよりも、素早く破産手続きに踏み込んで、次のステップに進んだ方が良いのかもしれない。
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