藁納豆の真実
冷蔵庫に納豆がいないと、不安になる。
1週間の初めに、たっぷりストックすると、なんとか乗り切れそうだな、と僕の貴重なタンパク源として重宝している。
Dancyuの納豆特集が、納豆をやめられなくなった僕の日常生活を彩るように発刊された。
納豆の奥深さを読むと、お隣水戸納豆大国に赴いてみたくなった。
直営店を回ったり、納豆小旅行をしていると”藁納豆”なる古典的納豆を手にすることができた。
一本300円の高級品。
これはご馳走だ。
ステーキを食べるそんな感覚で夕食にいただいたその日。
慎重に藁を開いたとき、覗き穴から見える出来立ての納豆が姿を現した。
こんなにたっぷり70gと、通常のパック納豆の約2倍の含有量だ。
慎重にお椀に全量を取り出し、アクセルを10キロ踏むようにそれは慎重に掻き回し始める。
グッと鼻腔をくすぐるのは桶から香るような藁の香り。家屋奥に隠れたような、そんな秘密の懐かしい香りだった。
納豆は200回。これは僕が決めたルール。
正確には30回そのまま掻き回し、タレを入れて170回ネバネバを超えるまで混ぜ続ける。
どろっと豆と粘りが一体になるくらいまで、回し続け、その粘りをごそっといただくのが格別に美味しい。
藁納豆を混ぜ始め150回くらいの頃、パックの納豆では到達できないほどの粘り気に至った。
ただそれでもそぼろのように納豆一粒一粒はポロポロと個性を無くさないのだから、不思議に面白い。
口に含んだ瞬間、瞬く間に藁の中へ。
目が覚めるほどの藁の香りが鼻腔を突き上げ、その力強さによろめく。
藁の香ばしさと納豆の粘り気、ボロボロと納豆は間違いなく存在する。熟成された藁納豆の事実がこれなのか、と。
決して潰れることのない噛みごたえも香りも香ばしい、格別の納豆だ。
その後地元のスーパーのどこを見ても、藁納豆を見ることはなかった。僕の憧れの藁納豆とはそれっきり。
また出会えるその時を、待ち続けながら、もっと身近に食べれたらなぁと、切にながっているのだった。
美味しいひとときに、ごちそうさまでした。
では、また次回。