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ヴェネチア2024③

父と二人で、ヴェネチア1週間の旅に出た、続き。

ホテルで軽い朝食をとり、午前中はヴェネチアの街を見る、という日程で動いた。

「街の歴史を知るには教会を見るといい」と、聞いたことがあったので、海外に行くと必ず教会に入る。
ホテルの近くで歩いて行ける教会を探す。

…☆…

【サン・サルヴァドール教会】
にぎやかなお土産屋さんが並ぶメルチェリエ通りに面した入り口から入ると、厳かな空気が流れていた。

主祭壇に飾られている
ティツィアーノ作『キリストの変容』

太陽の光で主祭壇が輝く。
神々しいものを見ると手を合わせたくなる。
私はクリスチャンではないので、日本式に手を合わせ、
「ここに来られたことに感謝します」
と、心の中でつぶやいた。

…☆…

ここから2つの教会は、ようこさんに連れて行ってもらった教会だ。
(ようこさんとの出逢いの記事↓)


…☆…

【サンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ教会】

レンガを何個使っているのだろう
ここにも主祭壇の奥に
ティツィアーノ作『聖母被昇天』

1340年に建築が始められて約100年かけて完成させた。その時代にこの建築技術、装飾品も素晴らしい!
写真を撮りたいが、収めきれない大きさと圧力を感じる。そんなことよりも、この歴史あるものの中いることの感動を心と目に焼き付け、大きく息を吸い込むことにした。
人間の能力、美しさへの追求、宗教の力…
様々な思考と感情が入り混じりながら、500〜600年前の空気を大きく吸い込んだ。

…☆…

教会の裏手にあるのが〈ようこさん〉おすすめの
【サン・ロッコ大同信組合】

広い階段
壁や天井の絵画に圧倒されて2階へ行くと…
立派な大広間!
天井画はティントレット作

サン(聖)・ロッコはペストの守護聖人。ヴェネチアはペストに何度も苦しめられ、聖ロッコを信仰する組合が15世紀に作られ、その集会堂としてこの建物が出来た。

素晴らしい天井画、ティントレットが20年かけて描いた大作!これを見ると首が痛い。そんな時、大きな鏡を貸してくれる。鏡を覗き込んでいると、なんだか酔いそうだ。

この時代、病気は拝んで治すしかなかった。だからこそ、聖人を祀る教会の存在は大きかった。
宗教と芸術は共にあり、聖人を祀り民を守るために発展していったのだろう。

…☆…

疲れたので、サン・ポーロ広場で休憩。
のんびりした広場にジェラートの出店を見つけ、父はマンゴー味、私はミント味を注文する。そして、座れるベンチを探した。

3人がけのベンチに一人で本を読む青年に
「隣に座っても良いですか?」
とカタコト英語で話しかけると、二人分のスペースを開けてくれた。

静かな広場。ここもたくさんの歴史がある。
そして今、読書する金色の髪の青年の脇で、日本からやってきた私達がジェラートを食べている。とても不思議だ。

「ありがとう」声をかけ立ち上がると、
「良い旅を」優しい笑顔で答えてくれた。


…☆…

そして、どうしても見たかった建物、
とても狭い路地を入っていくと現れる。

【コンタリーニ・デル・ボーヴォロ階段】

カタツムリの相性を持つ 
外観も美しい

哲学者コンタリーニ家のために、15世紀末、宮殿に付随する外階段が造られた。

階段を下から見る
石とレンガを積み重ねている
どうやってこれを支えているのだろう
中心の柱が骨のようだ
隣接の屋根が近づいてくる頃
父と私の息が上がる
階段の一番上↑
天井の木の並びが美しい



そして、一番上に辿り着き、暑い日差しを浴びながらヴェネチアの街を見渡した。
そこから見た景色がこちら↓

右手奥にサン・マルコ寺院と鐘楼が見える

瓦が全部、同じだ!
何年経っても同じ型の瓦を作り続け、古い瓦だけを取り換える。
街の景観が一体化しているのは、こういう伝統が残っているからだ。

新旧の瓦がまだら模様を生み出している


日本だったら…
屋根瓦が古くなる→使っていた瓦はもう製造していない→新しい屋根に全て張り替える→隣の家の屋根と全く異なる→景観がバラバラ

住み心地や技術の発展という点では、日本は先を歩いているもしれないが、景観はバラバラで古いものがどんどん無くなっていく。
地震大国だから残るものが少ないのかもしれないが、優れた伝統ある技術も無くなっていくことは、やはり悲しい事実である。

『手仕事の国・イタリア』と言われるのは、こういう身近なものづくりが残っているからだろう。

そう、この旅の目的は『ものづくり』を見ること。

次回からは、Homo Faber2024について書きます。

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『神守る水の都の広場にて 呼吸を合わせる異国の人と』