うーちゃん

うちにはいま　うーちゃんがいる

うちに来たのは１月

学校の教室ドアに　いまにもはさまれそーな

絶妙の場所で　さなぎってたらしい

４月に羽化　の場合

見つけた６年生たちは卒業してしまう

先生もかわるかも　それにドアのそばは危ない

…と　うちの子が預かってきた

小さなサナギ　虫かごのなか　すやすや眠る

よしよし…のはずが

２月末　うす緑色のその子に

羽のもようがすけて見えてきた

はやすぎる…

あったかかった日に　かんちがいしたの？

そして　…どんどん黒ずんでゆく

もう羽が見えてる　なのに　出てこない

羽のもようはそこまで来てるのに

出ないどころか黒ずんでゆく

まる２日　黒ずむサナギを見つめた

「もしも蝶になれなかったら　価値がないのだろうか？」

ふと　よぎる疑問　気持ち

もしも　ちょうになれなくても　

いまのこの子に　意味がある

そう思った　日曜の朝

絵を描きはじめた　さなぎの絵

うす緑色のサナギの絵

もしもこのまま　さなぎのままでも

この子はこの子であるだけでいい

２時間後　わたしはさなぎを描きあげた

この子はさなぎのままでもいいんだ

ふと　枕元を見ると

虫かごのなかで

少し色黒のもんしろちょうが

羽化したばかりの羽を　かわかしていた

羽化のとき　やきもきしたから

名前は「うかちゃん」

「うーちゃん」と呼びかけている

まだ　外は寒い

いま　うーちゃんは　大きな虫かごのなかで

鉢植えの花と一緒に過ごしている

少し色黒の

もんしろちょう