復唱、もしくはオウム返し~トイレはどこにあるのか?
先週、応対クレームを防ぐための対応について書きました。
それがこちら☟
そこで、のぼる師匠より以下のコメントを頂戴しました。
オウム返し(=復唱)というのは、その名のとおり、相手の言ったことを繰り返すことですが、簡単なようで、これができない人はかなり多くいます。
しかるにのぼる師匠は「手軽にできる」というのだから素晴らしい。会社員時代の電話応対訓練で、復唱が取り入れられていたのではないでしょうか。
オウム返しを取り入れるのはちょっと慣れてから、と考えて、最初は復唱をさせないと、ちょっと慣れた頃には自分の型が出来上がってしまっていて、もうオウム返しができなくなってしまうのです。
さて、そもそも復唱といえば、カウンセリングの神様と呼ばれたカール・ロジャーズの来談者中心療法で使われる中心的なスキルです。
使い方によっては、復唱されるだけで気づきが得られ、成長したり悩みが解決したりする強く優しいスキルですが、使い方を誤るとかえって怒られることがあるのものぼる師匠のおっしゃるとおりです。
この来談者中心療法への批判としてよく使われるジョークがあります。
こんな復唱をされれば、誰でも怒ってしまいます。
これは、復唱の使いどころを間違えているのです。
復唱を使うのは、2カ所です。今回は、正しい復唱の使いどころについて説明しましょう。
聞き間違えてはいけない大事な情報
一つは、重要な情報です。
主訴やご要望、住所・名前・連絡先・型番・口座番号などなど、業務上、これは絶対に間違えられないという情報があるでしょう。
そのようなものは必ず復唱し、自分が聞き取った内容に間違いがないかを確認してもらう必要があります。
相手の気持ちの表れ
もう一つは相手の気持ちが表れたところです。
悲しい、残念だ、腹が立った、困った、心配だ……。
一般的にはネガティブな印象のある気持ちであっても、それをネガティブに受け止めてはいけません。共感的に理解し復唱することで、相手は自分を丸ごと包み込んでもらったような気持ちになります。
まるごと包みこまれたなら、そこに怒りを向けるべき他者はいません。
言ってみれば、一人でいるよりも一人きりになれる時間と空間を提供できるのです。言葉を換えれば、ありのままの自分を受け入れるための手伝いをするのです。
なぜそんなことをしなければならないのか
この記事を読んでいるのは、おそらく仕事で電話を取らざるを得ない人たちだと思います。
やりたいのは、できないことをできないと伝えることであり、「ありのままの自分を受け入れる」だの「丸ごと包み込む」だのは自分の仕事ではないと言いたくなるかもしれません。
でも、考えてみてください。
自分の感情に振り回されている人と、落ち着いた心理状態の人、どちらの人と話したいですか?相手は敵で相手をののしらなくてはいけない自分も嫌いという人と、自分も大切だし自分を大切にしてくれる相手も大切という人、建設的な解決策を一緒に考えるなら、どちらの人がいいですか?
感情的にかき乱された状態の人と現実的な話をするのは至難の業です。
そんな至難の業に取り組もうとしている人をたくさん見てきましたが、疲弊するだけです。電話は終わったものの、双方とも納得からは程遠い状態ということもあり得ます。
遠回りなように見えるかもしれませんが、まずは相手と信頼関係を作り、自分を取り戻してもらい、その後で解決策を話したほうが結果的に労力は少なくて済むと思います。
まして、相手を怒らせてわざわざ難しい状況に自分を追い込むことのないよう、復唱の使いどころを押さえておきましょう。
それでは、また。
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世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。