地方のまちづくりとベンチャー経営に共通するマネジメント4つのプロセス+α
いわゆる”マネジメント”という仕事をするようになって30年近く。対象がベンチャー企業経営であれ、地方のまちづくりでも共通する4つのプロセスを整理してみました。
1.聞き出す(観察と傾聴)
まず最初にやるべきは、マネジメント対象者の観察と傾聴。
などなど。ひたすら聞き出すことから。
日頃の様子を観察するのも効果的。
一人で仕事をしている様子や、周囲の人と話している感じを遠巻きに観察。
現地に居住してまちづくりをする利点は、
町民の観察と傾聴に時間をかけられるところ。
対象者の日常を知っておくことが、自分が提案することの根拠になります。
①ポジティブ
観察・傾聴する際に、ポジティブな側面では、
対象者のやりたいことや強みを掘り下げていきます。
言動だけでなく、
とかも観察。
やりたいことについては、対象者が考えたことない視点や時制を加えた質問をできると理想的。
②ネガティブ
ネガティブな側面は具体的に細かく聞き出すのがポイント。
不満は
「役場がなってない」
とか
「この町はだめだよ」
とか
主語が大きくなりがち。感情的な言葉も増えるため、細かに刻みたい。
会社の社員の場合は、衛生要因として、不満の主語と要素を整理。
不満の対象がヒトかコトかを整理しておくと後々の参考材料に。
2.ビジョンと目標を明確にする
観察と傾聴をしながら、「どうなったらハッピー?」を言語化。
いきなりビジョンや目標をつくると抽象的な美辞麗句になりがち。
現実、現場に即し、対象者が自分ごとで考えられる概念レベルを。
①定性的
「to be(状態)」と「to do(行動)」で整理。
主語は”We”と”I”の両方で考えたい。
”They”は避けたい。人ごとになっていくので。
②定量的
定量的に落とし込むことは怠りがち。
すべてのことを定量化できるわけではないので難しいところですが、数字は対象者に共有しやすく、振り返りもしやすいのでおすすめ。
売上や利益という直接的な数字に限らず、
「何人」
「何回」
「何個」
など、数字として残していくことを目指します。
3.わかりやすく伝えて共有する
ぼくが4つのプロセスで一番力を入れてきたのが「共有」です。
ベンチャー経営もまちづくりも、複数の人たちが関わります。
当事者のニーズに即した目標を決めても、組織内で共有されなければコトは起きないし変わりません。
そもそも、伝えるべき内容が
・端折られてたり
・解釈間違えられたり
・やたら長くて意味不明
にならないように、内容をわかりやすくまとめて伝えることが大事。
①話し言葉
「伝える」より「伝わる」
対面や電話の場合、話し言葉で伝えられるため、行間やニュアンスを含め情報量を多くできます。なにより相手の反応を得られるので伝わる精度は高めやすいです。
カジュアルな表現、ジェスチャーなど体感覚での共有も可能。
②書き言葉
メールやSlackに代表されるいまどきの標準。
誰が見ても誤解なく理解できる、簡潔で平易な表現が求められます。
相手の反応は得られないため、いろんな解釈を想定した慎重な言葉選びを。
ぼくがベンチャー企業の経営をしているときは、毎週全社員向けにメールを送っていました。ビジョンや方針に関わる内容が中心のため、どうやって語りかけるように書くか、機能的な表現と情緒的な表現のバランスがむずかしかったです。
目的はビジョンや目標の理解や共感なので、身近な人のフィードバックを得ながら、地道に語彙と表現を選び続けて微調整し続けるのが現実策。
4.伴走しながら品質を整える
最後は、ヒト・モノ・カネ・情報の管理です。
目標・計画通りいってるかの進捗と品質をチェックするのが教科書的なマネジメントです。
ぼくが特に気にしている点は2つ。
①伴走
小規模ベンチャーや小さな町の場合、下からの報告を受けて、チェックという”上からスタンス”だけではうまくいかないことが多いもの。
いったん対象者に預けて任せるのですが、相手に不足する部分は、プレイヤーとして一緒にやるのも必要。
相手が”丸投げされた”印象を持つか持たないかのせめぎ合い。
関わりすぎると、”任されてない”不信感につながるので、バランスをとりながらの伴走がぼく的にはベストスタンス。
②整える
報告を受けて修正したり、承認だけではなく、整えるスタンスが理想。
文章だったら語尾を少しアレンジして読みやすく、
資料だったら言い回しやレイアウトで見た目よく。
「報告・提案したらよりよくなった」と思われたらベスト。
5.熱量
以上4つのプロセスを遂行するだけでは不十分。
すべてのプロセスに必要なのがマネジメントの熱量です。
マネジメントしたことある人は、共感してもらえるかもですが、
マネジメントの本質は「人にやってもらうこと」
つまり自分ごとではなくなるため、他人任せ、他人ごとになりがち。
かつ、なるべく口を出さず任せたほうが相手のモチベーションもあがるので、結果的に客観的で冷静なスタンスになりがち。
でも、経営もまちづくりも、正解がなくハードルの高い課題が多く、プロセスどおり淡々とやるのを遠巻きに見ているだけでは課題解決につながる成果はでにくいもの。
マネジメントする側が熱量をもって接していかないと、
+αの価値や、
”もうひとひねり”の知恵、
”もうひとがんばり”の原動力
を組織で生み出せません。
マネジメントする側、される側が、熱量高く取り組むことが成果につながると信じて、日々マネジメントを実践していきます。