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頭の片隅。

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恋の話をしています。
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#恋愛

「安心は要らないんだよね」と、君は言った。

「安心は要らないんだよね」と、君は言った。

もう半年も前、五月末。当時付き合っていた恋人と別れた。聞かれるたびに話してはいるものの、半年も経つと顔やら声やら香りやら何から何まで記憶から消えていく。

そんななか、ふと、SAKANAMONの「猫の尻尾」の聴いた瞬間に思い出してしまった。初めて聴いた曲で歌詞をがっつり聴いていたわけではなく、メロディだけだったのだが、それでも思い出してしまった。

彼との別れは話すと長くなるけれど、簡単にいうと、

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春の前夜に、

春の前夜に、

これが最後だと思いながら貴方のもとへ行く。これが最後だと分かりながら、貴方と最後のお別れができるなんて なんと幸せなんだろうと頭では思ってるし、声にも出して言い聞かせてみせるのに頬がどんどん濡れて、そこに夜風が当たってつめたく感じた。

幸せだなんてそんなのどれだけ言い聞かせてみせてもだめで、やっぱり貴方との最後だと思うとそれは何よりも寂しい。悲しい。貴方に話したいと思うこと、知って欲しいと思うこ

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さよなら、またね。

よく知った街で君と何も考えることなく歩いて、ただただ愛おしくて幸せだなぁ なんて考えたことを今でも覚えている。

電話は数日に一回、それだけで満足だった。電話越しに笑う声が好きで仕方がなかった。好きというより、愛おしかった。私から自分の気持ちを明かすことはなかったし、君がそれをすることもなかった。付き合うなんてそんな話題は出してはいけないように思えた。そんな私たちは一度だけそんな話をしたことがあっ

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勝手に君が幸せになりますように。

勝手に君が幸せになりますように。

初めて会ったのは、よく晴れた日 だった気がする。たしか七月四日。まだ梅雨も明けていない木曜日。遠い昔のように思えるのは、金木犀の匂いに 秋を教えてもらえたからかもしれない。

君はよく笑う人だった。そのくせ、なんだか瞳の奥では何を考えているのかわからないような人だった。瞳の奥にある悲しみに似た何かを 隠すようにして笑う人だなと思ったのを今で覚えている。知ったように言うなって言われるかもしれないけれ

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