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絵本の創作過程(文章担当)公開!

こんにちは。歌人の天野慶です。
よく自己紹介するときに「短歌を中心とした創作活動をしています」と言っています。

・短歌を詠む

がもちろんメインでスタート地点かつホーム、なのですが
その他に百人一首関係活動(ワークショップ・カルタ製作・入門本の執筆)と
絵本や紙芝居の文章を書いています。

9月には絵本の最新刊がでました!

ひらがなをおぼえる絵本なので「あ」〜「ん」まで。絵本では最多ページ数90ページ超です!
見本の「あ」~「お」まで。いろんな動物が登場します!

2022年6月に企画のご相談を受けて、2024年9月に発売になりました。

・絵は「いつつごうさぎ」シリーズや「モンポケ絵本」が大人気のまつおりかこさん
・「あ」~「ん」までそれぞれ3つくらいのことばが入っている文章

という企画。
子どもたちが大事なひらがなを覚えるための一冊です。
繰り返し何度も読まれるだろう本。
フレーズを一生覚えている子もいるだろう本。
さらに、五味太郎さんや安野光雅さんや、戸田デザインのものや……、
挙げたらきりがないほどの名作がすでにありました。
むむむ、新しくこのフィールドでなにができるか……。
考えながら、まずは「ことば」を集めることにしました。

Excelにずらっと入力

・自分が思いついた言葉
・小学生向けの辞書
・「幼稚園」などのひらがなを学ぶ年齢の子たちが読む雑誌
・動物図鑑
・子ども向けの図鑑
・国語辞典
・『広辞苑』
・『日本国語大辞典』(もちろん図書館にて)

などから、使えそうな言葉をピックアップ。
とにかくたくさん集めました!

擬音を入れるときりがないので、オノマトペは極力省きつつ
文字によって量が全然違いますね
一番長いのは「は」で、少ないのは「る」

ことば集めを終えて、眺めながらストーリーを考えます。
動物の名前もたくさん集まったので、それぞれのページに入れられそう。

各ページに動物が登場するとして……。
どんな物語にするか?
可愛い動物たちとひらがなの絵本、でも十分素敵だけれど、
せっかくなので、「物語」としても楽しめる一本が欲しい。

候補を整理しつつ、動物を決めます

そういえば、ちょうど同じ時期に書いていた

こちらの本もExcelに言葉を集めていましたし、
さらにその前に書いていた

こちらも、全章段
・季節
・登場人物
・キーワード
・子ども向けの本に登場している回数
をExcelでカウントして資料としていたので、物書きのわりにものすごくデータ的なものを作るタイプです。

閑話休題。

第一稿、これから何度も何度も直してゆきます

動物、生態系を考えるといろんな所に住んでいます。
サバンナにいるのもいれば南極にいるのも。
まあ、食物連鎖のことは考えないとして。
なにか、不自然ではなく、あちこちにいけて、つながりを持たせてくれる存在が欲しい……。
意味もなく画面にいるのはつまらないしなあ……。



悩んだときは、子どもたちが小さいころ好きだった絵本の棚を見返します。
そこで見つけた『変なお茶会』!

息子(大)が大好きで、何度読んだことか。
はじめにでてくるお手紙を、ちょっと抑揚をつけて読むと大笑いしていたな……。
郵便屋さん、いい味出しているから、彼の活躍をもっと見たいな、続編とかないかな……。
ん?
郵便屋さんなら、あちこちいける!
そうだ、娘も手紙モチーフが小さいころから好きで、本の最後にお手紙がついている児童書のシリーズ集めていたなあ。
さらに今好きなキャラクターも郵便屋さんしている!

というわけで、「ひらがな」以外の、メインストーリーは「郵便屋さんの動物が、あちこちにいる動物たちにお手紙を届ける」に決定!
(届けたの後の物語は……お楽しみに!)

お手紙とどける動物も、候補をいっぱい挙げました。
まつおさんの既刊をたくさんいただいていたので、じっくり眺めながら……。
検討の末、身軽で、木の上にも地上にも飛び回れるりすがいい!ということで「りすのゆうびんやさん」が誕生しました!!!

いや、もう本当に可愛いのです、りすのゆうびんやさん!!
まつおりかこさんの動物たち、表情が豊かで、ポーズもとってもキュートで。
「あ」のあらいぐまさんからみんな可愛いのですが、ずっと登場しているりすのゆうびんやさんの喜怒哀楽千変万化がすばらしいのです!
もうぜひ全ページ見てほしい~!!


楽しそうで可愛い
照らしてて可愛い お目めきらきら☆
ぴたんって張り付いてて可愛い
飛んでて可愛い
仮面つけちゃって可愛い
せーので背比べして伸びてて可愛い ん?しっぽに、乗ってる?
スキップ難しいよね!真剣な顔になっちゃうよね!で可愛い
美味しそうに食べてて可愛い
一生懸命もっと桃を持ってきてて可愛い!

ここまで決まればあとは集中して五十音駆け抜けるだけです。
絵本なので、何度も繰り返し口に出して、音だけでもわかるか、リズムが良いか確かめながら推敲します。
無意識に(?)5と7のリズムを刻んでしまうので、崩しながら……。
第一稿書くとき、金沢~福井旅行に出ていたので、ちょうどあわら温泉でお湯につかって「る、るるるるる、る、ほんとにむずかしい。あとら、もないわあ」とのぼせたりしてました。

初稿お送りして、しばらくしてまつおさんからのラフが届き始めて……。
白黒だけでも可愛い!もう大満足!
郵便屋さんモチーフもデザインにたくさん入れてくださって、それぞれのページに切手も!!!
細やかな所にまでモチーフが隠されていて、最後の盛り上がりのページも迫力があって楽しそうで……!!
ラフが見られるのも、製作過程に関わっているものの特権だなあと思います。

そんなこんなで、『にこにこいっぱいあいうえお』が完成。
絵本の文章、なんて贅沢で幸せな仕事なんだろう、としみじみと嬉しく幸せに思いました。

「絵本作ってみたいけど、絵が下手で。文章だけってどうやって作っているのですか?」
とよく人に聞かれます。
個別にお応えしてもいるのですが、せっかくの新刊の機会にまとめてみました。
あくまで天野慶個人の作り方、ですが、創作の助けになりましたら!
あなたの頭の中にしかない、素敵なまだ見ぬ絵本、楽しみにしています!


#絵本

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