Kei

主に短編の台本、朗読用小説を投稿しています。 常識的な範囲でご利用ください。 一応利用…

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主に短編の台本、朗読用小説を投稿しています。 常識的な範囲でご利用ください。 一応利用について以下に書いておきます。 使用方法:作者名/URLを表示 商用利用は不可です。投げ銭はご自由に。 Twitterへのリプライなどで上演を知らせていただけると喜びます。

最近の記事

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短編小説(朗読):知らせ虫

それに気づいたのは最近のことだった。 小さな、本当に小さな点だった。 それがあちこちにある。 いや、いるのだ。 それはいつの間にか、いる場所を変えている。 よくよく見ると、どうやら小さな虫のようだった。 最初は嫌悪感があった。 何しろ身の回りに小さな虫ちらほらいるのだ。 しかし、人間慣れてしまうものだ。 特に害があるわけでもなく、ただそこにいるだけ。 それにこの虫は私以外の誰にも見えていないらしい。 追い払っても、気がつくと同じ場所にいる。 ある朝、いつものようにバスに乗っ

    • 台本/0:0:3/京都の魔 辻

      法師:また、あわわの辻近くで行方不明者、か。 飛鷹:どうした、新聞と……人探しのチラシ? 法師:次にどこで何を再現するかわかったで。後手に回るのは気に食わんけど、順番はまだはっきりしとらんからどうしようもないわ。 飛鷹:例の平安京の案件か。で、どんなものが再現されるんだ? 法師:百鬼夜行は知っとるな。 飛鷹:治安が悪いところもそういうが……今回は妖怪が列をなして徘徊することだろうな。見たことがあるのか? 法師:本物の百鬼夜行に出会ってるんやったらその時点でお終いや

      • 短編/ 失せ鏡

        指輪を無くした。振られた。散々な日だった。 「失せ鏡様、失せ鏡様、失せものを探してください」 お呪いを唱える深夜二時。水に鏡を沈めて覗くと、失せものが映る。そんな都市伝説を試してみようという気になったのは、そんな理由だった。何か失くしたものが見つからないかと思ったのだ。 自然光の電球の明かりの下、白いプラスチックの風呂桶に水を入れ、古いコンパクトを開いたまま夏の生ぬるい水に沈める。 水の中に入れたコンパクトの鏡をそっと覗くと……そこにはしょぼくれた顔をした自分が映って

        • 台本/0:0:3/京都の魔 鬼

          京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。今は石材屋となっているが、鬼の伝説ゆかりの地、宴の松原(えんのまつばら)跡で、伝説を模した儀式跡にあらわれた鬼退治をすることになった。 飛鷹:しっかし妖怪退治の依頼ねえ。 法師:妖怪やあらへん。化け物や。妖怪いうんは明治以降やで。あとちょっと勉強が必要やな。 飛鷹:化け物の勉強とはまた嫌な話だな。 法師:簡単に覚えとったらええわ。お化けは出てくる場所が決まっとる。相手を選ばん。宵と暁に出ることが

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        短編小説(朗読):知らせ虫

          台本/0:0:3/京都の魔 清

          京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。今日は事務所の持ち主である法師が東山で起きた事件で疲労しきっているであろう陰陽師を訪ねようとしていた。 飛鷹:今日は珍しい。出かけるんだな。どこに行くんだ。 法師:発言の順番おかしいと思わへん?人を引き篭もりみたいに言わんといてくれはる? 飛鷹:引き篭も……(咳払い)。出かけること自体珍しいじゃないか。 法師:まあええわ。ちょいとこないだの件で真如堂にな。東山で騒ぎがあったらしいやろ。そんで駆り

          台本/0:0:3/京都の魔 清

          台本/0:0:3/京都の魔 賽

          場所は京都の西院。平安京の西の果てではあるが、現代は大通りが交差している。今日も今日とて生活用品の買い出し中に、一日で起こった凶行と巡り合わせで異界を垣間見る。 無:ねえ。 A:……誰? A:(M)声をかけられたことに慌てはしなかった。なぜか、自分にしか見えない、聞こえない、例えるなら死神のように思えたからだ。 無:君、そのままだと死ぬよ。 A:……そのつもり。 無:死んだ後も辛い思いをするよ。 A:今よりも? 無:さあ、今の君がどれくらい辛いか知らないからわからないけど、

          台本/0:0:3/京都の魔 賽

          台本/1:1:0/時の川べり

          川で遊んでいると見知らぬ少女が眺めていた。無理やり遊びに誘ったが、その帰りに少女はキーホルダーをなくしてしまう。キーホルダーを見つけた少年は返そうと考えるが少女はなかなか現れず……。 だい:おい、針に餌付けてやるからこっちよこせ。ほら、落とすなよ。 しほ:そんなこといったって、ちょっと、どっちに向ければいいの? だい:(M)勉学より野山を駆け回っていたことが多かった。 だい:こんくらいとっとけば夜ごはんの天ぷらになるべ。サツマイモのツル洗うぞ。 しほ:サツマイモのツルなんて

          台本/1:1:0/時の川べり

          台本/0:0:4京都の魔 縁

          京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。明らかに普通ではなく顔色の悪い通行人を連れ込んだことから事件にかかわってしまう。 法師以外は特に方言である必要はない。 鳥居:そんな!横暴な!ここは先祖代々受け継いできた土地なんだ。立ち退き料をいくら上げるといわれてもそんな簡単に手放せるものじゃない。大体、近所の土地だって売りに出されいていたわけじゃないだろう!……そんな強気でいられるのも今のうちだけ……?警察ももう呼んだんだ!契約書にサインし

          台本/0:0:4京都の魔 縁

          台本/0:0:3/眠り流し

          地方で七月七日の朝に水浴びをすることで一年早起きができるというネンブリ流し。そんな山奥の行事に参加して楽しんでいたが、宿泊していた家で娘が目を覚まさなくなってしまう。 0:山の中、いかにもといった田舎の風景の中、川で水浴びをしている。 A:七月七日に、七夕以外にこんな行事があるなんて知りませんでしたよ。っと、偶然なんでしょうかねえ。 B:さあ、少なくとも織姫彦星とは関係ないと思いますよ、そんな浮ついた話は残ってませんから。これはね、うちの村ではネンブリ流しって言いましてね。

          台本/0:0:3/眠り流し

          台本/0:0:2/京都の魔 葬

          京都のひねもの屋の主人と一筋縄ではいかない人間の京都の歴史とちょっとした事件の会話。 書き直す可能性大。 A:京都の取材?そんなもん色んなとこあるさかい、こんな辺鄙なところにある、流行る気配もないひねもの屋に聞きに来ることあらへんやろ。それにしてもええ腕時計してはるなぁ。 B:ああ、いいでしょう、幸い私は他人に時計を見せびらかすことを趣味としていまして、もっと見せましょうか。私ロレックスとかも好きなんですがさすが手が出ない値段といいますか。 A:へえ、厚かましいのは態度だけ

          台本/0:0:2/京都の魔 葬

          台本/0:0:2/セレクトシーリングコート

          心機一転、ロンドンにやってきて人生の選択をしにやってきた『私』と会話している子供。そんな中、駅の向かいのホームで見かけた親子の行動を見て、子供が提案してきたことは……。 A:十月、ロンドン。おやつどきを過ぎた頃には日が暮れる。 B:三時のおやつは……どこの習慣だったかな? A:ここに私がきたのは、一人の人間として暮らすためだ。周囲の人間関係、仲が悪いわけではないが親からの将来に対する催促、どんな仕事をしていたかという履歴、肩書きと現実ばかりの会話、そんなものが全てない環境で

          台本/0:0:2/セレクトシーリングコート

          台本/1:1:0/ミカエリサマ

          ライトな雰囲気です。おんぼろ学校に赴任してきた矢絣に袴をはいた女性教師と、生徒の会話。 初めて会う人種に戸惑う少年に大人の対応をしている女性教師と思っていると、女性教師がこの地方由来の伝承を少年に尋ねたことがきっかけで徐々にそんな雰囲気はなくなってしまい……。 時代は大正あたりかもしれない。 A:ある日、島に若い教師が赴任してきた。 A:一学年しかないおんぼろ学校に赴任してきた教師の姿は、はいからな矢絣の振り袖に暗褐色の袴着を胸高々と着けていた。 A:子供達はやれ東京から来

          台本/1:1:0/ミカエリサマ

          台本/3:0:0/回天江田島

          敗戦濃厚の中、技術士官と兵科士官教官との戦争に負けた、そのあとの未来を見据えた会話。 そして、戦後の教官の息子と元技術士官の未来を見据えた会話。  戦時中の前半はAと教官の会話。 戦後の後半はBとAの会話。 A:太平洋戦争末期の一九四四年、完成したのが特殊戦艦、人間魚雷、回天だった。天をめぐり、戦局を挽回するという願いが込められた名前とは裏腹に、九三式魚雷を改造した魚雷は、人の命をくべて物量で勝る相手より多くの命を奪うという運を天に任せるような兵器だった。必殺の兵器に希望す

          台本/3:0:0/回天江田島

          短編台本/0:0:2/厄捨て山

          怖くないです。タクシーの運転手とさびれた山奥の風習について話す乗客。 0:山奥・タクシーの中 A:*姥捨《うばすて》山ってのはね、齢六十になった老人……今となっちゃ老人なんていうのもまだ早いが、とにかく『時が来た』老人を捨てにいく山のことでね。捨てられるのが父親だったり、母親だったり、捨てにいくときに孫や息子がついて行ったり。捨てにいく家族はどんな気持ちだったのかは推し量れないし、色々な場合があったそうな。 B:しかし、年寄りの意外な知恵の深さで連れ帰られるという点がかなり

          短編台本/0:0:2/厄捨て山

          短編台本/0:0:2/ペットホスピス

          A:この度は、弊社のペットホスピスをご利用いただきありがとうございます。早速で申し訳ありませんが、契約書に記載の通り、ご愛猫のお世話を誠心誠意、努めさせていただきますね。ホスピスといってもきちんと消毒管理しておりますので、いつでもお会いに来ていただいてくださって構いませんからね。 B:先に入居している猫ちゃんも大人しくて、他の猫と仲良くしています。もし、気が合わないようなら部屋をわけるなどの対応をしてストレス対策は万全にしておりますので、安心して当社にお任せください。 0:間

          短編台本/0:0:2/ペットホスピス

          短編:サナトリウムからの手紙・二月

           元気にしていますか。  近頃は随分と陽が暖かくなりましたね。でも日陰はまだまだ寒くて、カーディガンと膝掛けが手放せません。  私がサナトリウムに来てから六ヶ月がたちました。近頃は窓から、菜の花に風が流れていくのを眺める日々を過ごしています。  近頃は右半身に力が入るようになり、左手と左足が少し動くようになりました。何とか布団をまくり上げて、自分で寝返りを打つこともできるようになりましたよ。  この手紙も代筆ではなく、自分で書いています。字を書くのも手間取って便せんを

          短編:サナトリウムからの手紙・二月