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短編:サナトリウムからの手紙・二月

 元気にしていますか。

 近頃は随分と陽が暖かくなりましたね。でも日陰はまだまだ寒くて、カーディガンと膝掛けが手放せません。

 私がサナトリウムに来てから六ヶ月がたちました。近頃は窓から、菜の花に風が流れていくのを眺める日々を過ごしています。

 近頃は右半身に力が入るようになり、左手と左足が少し動くようになりました。何とか布団をまくり上げて、自分で寝返りを打つこともできるようになりましたよ。

 この手紙も代筆ではなく、自分で書いています。字を書くのも手間取って便せんを押さえてもらうなんて、何だか子供のようで変な感じがします。

 最初にも書きましたが、こちらではもう菜の花が咲いていて、窓の外が一面、緑と黄色に染まっています。庭の紅梅はもう散ってしまいました。

 白梅はもっと早く咲き始めたのにまだ残っていますが、もうひと雨きたら全て花びらが落ちてしまいそうです。まだ咲いている間に車椅子で梅の香りを楽しみに行こうと思っています。

 子供たちは制服が似合うようになったでしょうか。先日送ったこうもり傘も役に立っていると嬉しいです。ご飯もきちんと食べられているか心配です。

 治療の方法が少し変わりました。点滴のお薬が変わって、一週間に一回から、三週間に一回に変更になりました。

 前のお薬は副作用があって、吐き気や手足の痺れ、ひび割れ、髪の毛が抜けたりしていました。今回のお薬に変わってから、それらの症状も落ち着いて、ずいぶんと楽になりました。

 お医者様の説明では、身体中に回った悪いものを早く退治するのに強い薬を使っていたのを、私の体力をみて弱い薬に変えたそうです。

 でも、免疫力が落ちるそうなので、今までよりいっそう他の病気、感染症に気をつけないといけないそうです。

 力自慢で毎日のように炊事洗濯から仕事までしていた目の回るような日を過ごしていたのに、今はピックアップをつかって少し歩くだけで疲れてしまいます。幸い、部屋からトイレまでは近いので、一人で用を足すことはできています。

 着替えやお風呂は看護師さんに手伝ってもらっています。週に二回のお風呂があるのですが、浴槽にうまく入ることができないので、シャワーで済ませています。

 あまり着替えることがないので、服は送ってくれなくて大丈夫です。お気に入りの枕、役に立っています。ありがとう。

 先生もおっしゃっていましたが、ステージⅢではなくステージⅣだったことは、もう私から全部話しました。

 転移はリンパや血液とは考えにくいそうですが、三箇所あることもあり、様子を見たいとのことでした。

 手術をせず、延命もしないと思っていた時は、子供の未来を見てあげられない自分が情けなくて泣いてしまいましたが、今は少しずつでも元気になろうと頑張っています。

 早く顔が見たいです。

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