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我が家の本棚より
自宅の本棚の整理をしていたら、懐かしい本が出てきました。
娘に教えられて行った鎌倉の立ち飲み屋さんヒグラシ文庫で衝動的に買った本です。
本が買える飲み屋さん。
なんとも不可思議な空間でした。
『大正時代の身の上相談』
【カタログハウス編】
ちくま文庫
この本は、大正三年(1914年)から十一年(1922年)の間に、
読売新聞紙上において、「身の上相談」として掲載された中から抜粋し、新字新かなに直して収録したもので、内容の潤色はしていません、という旨の断り書きがあります。
目次を読んだだけでも、じゅうぶん惹きつけられます。
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今日は、相談文も回答文も比較的簡潔で、しかもこの時代らしい悩みをひとつご紹介したいと思います。
私は十六歳になる少女ですが、両親はなく、兄はいつも私に「芸者になれ」と言っております。今、ならなければ一生兄に捨てられますので、思案の結果、芸者になることを決めました。
しかし私は声が悪いので、たいへん困っています。どうか、声のよくなる薬を詳しくお知らせください。
(伯耆吟子)
▼お答え
声の悪い心配をするよりも、芸者になることについてもっと心配することが必要です。
あなたに芸者になることを強いるお兄さんは善い心ではありません。それゆえ、兄さんに捨てられても、芸者になることを思いとどまって、奉公でもしたらどうでしょう。
このあとに、この本を編集した方の、ちょっとしたコメントのようなものが続きますが、それは割愛します。
16歳の少女の世間知らずでピントの外れた質問に、至極真っ当に、良心的に答えています。
しかし、ことがそう簡単に運ぶかどうかは甚だ疑問です。
相談者はヤクザな兄から逃れることができたのでしょうか。
どこから読んでも面白いこの本。
クスッと笑えたり、容姿の悩み、結婚の悩み…時代は変わっても人間の悩みってそんなに変わらないものだな、としみじみ感じたり。
最後まで読み通していなかったので、
これからまた、暇つぶしに読んでみたいと思います。