見出し画像

「認知症✖️食」 高校生が発信する回想法

 今回のKBCのSEEDs(※)ファイナリスト最年少にして、唯一の現役高校生である、岸桃花さん(18)。認知症当事者へ、昔の思い出が蘇るような料理の宅配サービスを行うことで、「回想法(昔の経験や思い出に触れながら思い出を語る一種の心理療法)」を通して自己肯定感を上げようと取り組んでいる岸さんに、取り組みを行うきっかけと、これからについて伺いました。<取材・編集=青木(KBC16期)> 

(※)KBCの一大プロジェクトであり、国内最大級・学生団体初のオンラインビジネスコンテスト”SEEDs。6月21日(日)14時からYoutube チャンネルにて、3次審査を通過したファイナリストによるピッチが開催予定!

ナツカシ 岸さん

 そもそも、「自己肯定感」とは、”自分は大切な存在”、”かけがえのない存在”と思える心の状態です。認知症になると、記憶障害から他人に迷惑をかけている自分に嫌気がさして、自己肯定感が低くなり、ニュースやSNSに気を配らなくなったり、外のコミュニティを活用する機会が減ってしまったり、外とのコミュニケーションが減ってしまいます。そのため認知症当事者には積極的な会話や運動が推奨されています。

 現在、COVID-19の影響で、外出を控えている認知症当事者が多くいる一方で、オンラインツールの使用に慣れていなかったり、デイサービスが通常通り使えなかったりすることから、他者と関わる機会がより減り、自己肯定感が下がってしまっているという問題を「ナツカシ」が解決したいと考えています。

画像3

 具体的には昔の懐かしい食べ物を食べることにより、回想法によって数十年前の楽しかった思い出を思い出してもらい、自己肯定感をあげたいと考えています。回想法は認知症の非薬物療法として知られていて、自己肯定感を上げるという効果があります。


– 事業案に至るまでの経緯を教えてください。
 高校2年の春、私の祖父が認知症になり、何かできないかと考え認知症アプリ (Todoxカレンダーアプリ)を開発したことがあります。当時、ヒアリングや UI研究を十分に行えておらず、私のアプリはユーザー視点に立てていませんでした。2度目のアプリ作成を行うか、違う形でアクションするかを決めるため、認知症当事者と積極的に関わる機会を増やしていきました。

 例えば、20人にヒアリングしたり、100人 にアンケートをとったり。Zoomを用いたオンラインイベントも数回に渡り主催してきました。また、”食べ物”に関するオンラインイベントを数回に渡って行い、農家の方からもお話を 聞く機会がありました。COVID-19で、取引先が休業したことにより食材の在庫や売り上げの減少に困ってる彼らを間近でみて自分がアクションして解決したいと強く感じたからです。

– 現在認知症へのプロジェクトは多く出てきていますが、ナツカシのこだわりを教えてください!
 たしかに、認知症のプロジェクトは数多く出てきています。一方で、近い将来、65歳以上の5人に1人が認知症になると言われているにもかかわらず、認知症に対する知識や当事者性を持っていない人が多いと思います。私が若者という立場からこのプロジェクトを行い発信して、少しでも当事者意識や興味関心を持ってくださる方が増えればいいなと考えています。こだわりとしては、「認知症 × 食」に着目したことで、似たような認知症のサービスはほとんどなく、ナツカシが日々の単調とした時間を明るく楽しいものにできるのではないかと考えています。認知症に対する認識を変え、認知症になってもその人らしく、穏やかに暮らし続けられる社会の構築を目指していきたいため、その第一歩としてこのプロジェクトをやりたいです。

– プロジェクトを進める上での強みはありますか?
 「行動力」だと思います。高校2年生で、留学から帰国してから、インターン・大会・学生団体と幅広く活動してきました。また、自分が行動する中で「認知症の人の問題を解決する」という軸を元に行動していました。だからこそこのビジコン初参加でも、そこにかける想いは強いと思っています。

– 確かに、高校生とは思えない行動力ですよね。逆に大変だったことはありますか
 大変だったこととしては、COVID-19の影響で出向いてヒアリングを行うのが難しく、団体の方や老人ホームの方に協力していただき、zoomを使ってヒアリングを行ったことです。また、ビジコン自体に挑戦するのが初めてで、ビジネスモデルを作ったことが今までなかったため、ビジネス視点で考えるのには時間がかかりました。

– ここまで認知症患者ではなく、認知症”当事者”という言葉を使っていますが、これはなぜですか?
 以前、私も話すときに”認知症患者”という言葉で、認知症の方々を表現していました。ただ、老人ホーム等で関わるうちにその呼称に違和感を覚え、調べたり、介護者に聞いてみたりしたところ”認知症当事者”や”認知症の人”という表現が適切で、”認知症患者”という表現は好ましくないということがわかりました。認知症は病気というより「症状」に近く、コミュニケーションをとる際に”患者”と呼ばれたら不快感を覚えるかもしれないと気づいたころから”認知症当事者”という言葉を使うようにしています。

– 最後に、最終ピッチに向けて、意気込みをお願いします!

 自分の最大限の力を出せるようにしっかり準備して挑みたいと思います!頑張ります!

 眼鏡の奥の丸いくるりとした目が特徴の岸さん。高校3年生ながら、落ち着いた話し方で、堂々とした雰囲気が伝わってくる。メンタリングにおいてビジネス分野での経験の浅さを「これからの努力次第で強みに変えたい」と話していて、これからに目が離せない、そんな彼女の最初のピッチになりそうだと感じた。  <取材・編集=青木(KBC16期)>

画像1

〈SEEDs ファイナルピッチ情報〉
6月21日 (日) 14:00-17:00 開催!
配信はYouTubeにて。チャンネルはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?