熊野古道伊勢路を歩くday4#2
三瀬坂峠に差し掛かった。
熊野古道伊勢路を歩き始めて三つ目の峠だ。呆気なく超えた女鬼峠。知らぬ間に超えた定峠に続く峠道だ。
大紀町三瀬川から滝原へ抜ける峠道だが、大内山川沿いに作られた国道42号から見上げる山を見ると、結構な山道だと想像できる。
しかし、とあるホームページの踏破難易度では、初心者向け。しかも熊野峠の中では指折りの楽な峠道とあった。
難易度なんてものは人によって違うはずと心で呟き、畑横の脇道から山へ登って行った。
杉の木に囲まれた道は少し整備されており、まだまだ苦にならない。
むしろ熱った身体を冷やすにちょうど良い木陰を作ってくれていた。
口笛でも吹きながら歩き続け、入り口にあった杖なんてお荷物になるな。なんて余裕をかましていたが、道の作りが段々と変わってきた。
深く掘られた溝に大きな石がゴロゴロして足を取られるようになってきた。それに合わせて、山の傾斜もきつくなり、気が付けば冷やされた身体が熱ったところか熱くなってきた。
時折立ち止まり山頂を見上げ、また歩く。自然と息も上がって汗も流れてくる。
以前、松阪市にある堀坂山を登った時を思い出した。
当時、運動不足と分かっていながらも子供の前で良いところを見せようとハイペースで登った僕は、途中で倒れ込みそうになった。
木の下に座り呼吸を整えてなんとか山頂まで登ったが、それ以来子供と山登りに行っていない。
今回の三瀬坂峠はそれに近いものがある。あとあと考えてみたら、それほどでもなかったが。あまりハイペースにならないように、呼吸を整えられるペースで山頂を目指した。
途中、鳥の囀りを聞く余裕もできていた。
山頂には少し開けた場所があり、茶屋跡の看板もあった。
今でこそ誰もいないひっそりとしたこの空間だが、500年程前は多くの旅人の癒しの場だったのだろう。
僕も切り株に腰を掛け、コーヒーを飲んでこの空間を楽しんだ。
茶屋跡の近くには宝暦地蔵があった。
本当にこの道はいろいろな神様に守られていると改めて感じた。
休憩は終わり今度は峠を下る番だ。
うまく写真に収められないが結構な下り坂だ。足元の石も安定が悪く何度か滑り転けそうになった。やはり、杖を借りてこれば良かった。
途中、石を積み上げたものがたくさんあった。何かの呪いなのか思いなのか。よくわからないが、相応な数がある。
苔の生える岩にも足を取られそうになりながら、鹿垣跡を見つけ、昔から害獣との戦いが繰り広げられていたのだと改めて知った。
鹿垣跡を越えると三瀬坂池が左手に見える。
確か女鬼峠にも同じ様な池があった。もしかしたら峠と池はセットなのだろうか。
三瀬坂池を過ぎると、この峠道は終わりだ。
滝原側の入り口にも同じ様に杖が置いてある。迷うことなく杖を借りてください。とひろんな人に伝えたかった。
ようやく42号線へと戻ってきた。
三瀬谷駅を出て2時間弱の回り道だった。