熊野古道伊勢路を歩くday8#1
夜中に降りはじめた雨は、夜明け前に止んでいた。ただ、湿気が多く辺り一面、白いモヤで覆われていた。
1月20日。お正月と呼ぶには遅すぎるこの日、前回の続きとなるスタート地点へとバスに揺られていた。
紀北町の国道沿いには路線バスが展開していて気軽に利用することができる。
路線図と、熊野古道伊勢路のルートマップを見比べながら、計画を立てるのが楽しみにもなってきた。
発電所前の停留所で下車し、目の前に広がる海へと向かって歩く。すぐそばに始神峠さくら広場と呼ばれる公園がある。
前回、この公園で一旦終了している。
公園の東屋で靴紐を締め直してここから始まる始神峠へと歩きはじめた。
時刻は9時。まだ空気は凛と張り詰めて露出している肌にちくちく突き刺さるような感覚が残っている。
公園には峠を紹介する看板が設置されていた。
看板によると、峠まで約40分。訛った体を起こすにはちょうど良い時間だ。
ただ、今までは舗装された平らな道を歩いてから未舗装に挑むのだが、今回はいきなり未舗装の道に入る。ほんの少しだけそこには心配していた。
未舗装とはいえきっちり整備された参道は気持ちよく歩くことができる。
冬眠しているであろうクマにも十分注意しながらベルの音を響かせながら進むと、見慣れた道標が出てきた。
熊野まで82km。反対側を見ると伊勢まで84km。若干の誤差はあるもののここが伊勢路の中間地点なのだろう。
ずいぶん歩いてきたようにも思えるがまだ半分。これまでの道のりを考えるとたくさんの楽しみがあった。これから倍の楽しみがあると思うとワクワクが止まらない。
始神峠には江戸道と明治道がある。
ここでも何度か紹介して行きたかと思うが改めて簡単に紹介すると、元々古くから人が行き来していたのが江戸道で、交通の利便性を重視し荷車など通行できるように幅の広い道を後に作ったのが明治道だそうだ。
そのため、江戸道は細く険しく、明治道は広くなだらかな雰囲気と感じられる。
で、この始神峠は、江戸道を登る道となっている。
所々に自生の柑橘系の果物がなっている道を進む。いきなりの上り坂だが始まったばかり。楽しく登り始めることができた。