日常は過剰に刺激的で痛い〜ケの日のケケケ
だいぶ日が空いてしまった。
今回もドラマ「ケの日のケケケ」を視聴して、感覚過敏のことを知ってもらいたくてこの記事を書く。
少しネタバレをしているので、未視聴でこれから見ようと思っている方は注意して読んでもらいたい。
感覚過敏を持つ主人公・あまねにとっては、なんでもない普通の日をご機嫌に過ごすということがものすごく難しい。
家を一歩出れば、風が木々をゆする音、車のエンジン音、道行く人たちのおしゃべりな声や足音、室外機のファンが回る音…
あるいは、日光と反射するガラスや鏡、横断歩道や標識のコントラスト、道行く人のカラフルな服、さらにカラフルすぎる広告やポスター、チカチカするネオン…
世の中は、過剰に騒々しくて、過剰に眩して、過剰に刺激的で、痛い。
そんな世界に生きていて、常に自分のご機嫌をとりながら過ごすのは並大抵のことではない。
感覚過敏が無いとされている人であっても、例えばパチンコ屋の店内や渋谷スクランブル交差点で1日中過ごさなければならなかったら…と想像してみたら少しわかるかもしれない。
我が家の子どもたちは2人とも様々な感覚過敏がある。
イヤーマフとサングラスはもちろん必需品だ。
だが、一口に感覚過敏と言っても、人によって感じ方は様々だ。
我が家の子どもたちの聴覚の例で言えば、
息子は、人混みが苦手。いわゆるザワザワした感じがとてもダメ。
複数の話し声やたくさんの人の表情や動きが一度に飛び込んできて情報過多になってしまうようだ。
なので、運動会はもちろん、常に数十人か狭いスペースにいる交流級の教室も彼にとっては非常に疲れる場所だ。
娘は、突然の大きな低音が苦手。
バイクのエンジン音、犬の吠える声、道路工事の音、和太鼓の音、特急電車の通過音…
なので、一緒に歩くと散歩中の犬を見つけると逃げる。吠えられたらと思うと怖いからだ。
聴覚過敏がいちばんよく聞くしわかりやすいが、聴覚以外も過敏はある。
あまねは味覚過敏(口内過敏)で食べられるものが限られており、毎日まったく同じ朝食を食べているということだった。
お米が苦手だということで、日本ではそれはかなり辛かろう。
我が家では息子が特にひどくて、食べられるものが極端に少ない。
味もあるが、食感が苦手だということが非常に多い。
りんごジュースは飲めてもりんごそのものを食べることは出来ない。
こういう人は結構いるのではないか。
かくいう私も、あまねと同じくスクランブルエッグは大丈夫だが、目玉焼きはどうしても食べられない。
苦手な食べ物がある人はわかると思うが、苦手な食べ物の味や匂いや食感が、そうではない食べ物に比べて殊更強く刺々しく感じられるだろう。
口内過敏がある人は、ほぼ全ての食べ物でそのように味や匂いや食感が強く感じられるので、食べられるものが限られてくる。
異なる食感が同時にあるのが苦手で、とんかつとごはんを別々に食べれば大丈夫だが、カツ丼になると食べられないという人もいる。
口内過敏は息子にとってかなり大きなことで日常生活の制限の原因でもあるのだが、長くなってしまうのでまた別の機会に。
ちょっとだけ書くと、給食が食べられず、服薬ができず、外出や旅行のハードルが高くなる…などのことがある。
触覚についてもそうだ。
あまねは人に触れられるのが苦手で、ハグしたいけど出来ないと言っていた。
我が家の息子は、洋服のタグは全て切り取らないと着られない。
ウインドブレーカーなどシャカシャカするナイロンなどの素材や、ジーンズなどゴワゴワする素材もNG。
柔らかく肌触りが良い素材であることが、機能性よりデザインより何よりマストだ。
学校で使う液体糊やでんぷん糊も触れない。
スティック糊やテープ糊にしてどうにか凌いでいる。
感覚過敏のわかりづらいところは、心身の状態によって緩和したり悪化したりするところだ。
わかりづらいと書いたが、実は多くの人がそういうものなのではないか。
二日酔いの時は、テレビコマーシャルの音が響いて頭がガンガンする…なんてことはある。
逆に、自分が推しているアーティストのライブでは、どんなに爆音だろうとむしろ心地よく感じられるだろう。
ケの日のケケケで、あまねには歳の離れたきょうだいができた。
子どもの泣き声が特に苦手だというあまねには地獄のような展開だが、
ドラマの最後では、階下から聞こえる赤ちゃんの泣き声をあまねは自室から「今日も元気」と微笑んでいる。
同じ部屋ならきっと痛さを感じるほどなのだろうが、空間が分かれていてそれなりに距離があれば、大丈夫。
可愛くないわけではない、むしろ愛おしくてたまらない存在だからだ。
そうやってどうにか折り合いをつけて、騙し騙しやっていくしかない。
特効薬や魔法の杖はないのが現実だからだ。
諸外国には、照明の明るさを落とし、音楽やアナウンスを流さないQuiet Hourを導入しているスーパーもあるという。
アメリカのウォルマートでは、昨年11月より全店で毎日センサリーフレンドリーな時間帯を設けることを始めたそうだ。
このような取り組みがぜひ日本でも広がり、そして当たり前になる日が来ることを切に願う。