【Web制作編】カスタマーサクセスの現場で特に重視していた3つのポイント
今日は真面目に仕事の話をしたいと思います。私は5年半ほど前から一昨年まで、カスタマーサクセスとして組織づくりから現場までを担ってきました。プレイングマネージャーってやつです。
5年半前というと、日本ではまだカスタマーサクセスという言葉自体が浸透していなかった上に、世に出ているノウハウも限られていたので、自分で試行錯誤しながら作り上げてきました。
そのためどうしても粗いところもあったのですが、割と現場での進め方に関しては上手くいっていたのかな?と感じていたので、ハイタッチの現場、とくの初回訪問で気をつけていたポイントについてアウトプットしたいと思います。
扱っている商材と今回noteの主題
私はMtame株式会社というデジタルマーケティング支援の会社で働いています。主なサービスがWeb制作(自社CMS:BlueMonkey)とMAツール(自社ツール:BowNow)、そして広告の運用です。
その中でも、私がメインでカスタマーサクセスを行なっていたのがWeb制作の方でして、弊社でWebサイトを構築したお客様が成果を出せるように、運用のフォローを行なっていました。
基本的にはデジタルマーケティングのゴールに向けた活用の提案、ノウハウ提供、CMSを使った運用のアドバイスをハイタッチで行なってきました。
それ以外にも一部ロータッチやテックタッチの動きもしていたのですが、今回のnoteではハイタッチの現場の中でどんな話をし、どうアップセルやクロスセルに繋げていったかにフォーカスしたいと思います。
CMS(Web制作)という商材の特性
まず大前提として、CMS(Web制作)という商材の特性をお話しします。弊社は自社でCMSを開発・提供しており、保守費用をいただきながらセキュリティやバージョンアップまでを行なっています。
その保守費用の中に操作面の技術サポートやカスタマーサクセス等の支援が含まれており、わかりやすく言えば無料で運用後のフォローも行なっています。(2020年3月時点)
現状、Web制作に関してはコーポレートサイトやサービスサイトの実績が多く、業界としてはBtoBの製造業などの割合が多いです。
Webサイトの特性として、一度制作したらそう簡単にはリニューアルはしないので、比較的チャーンレートは低く抑えられています。なので、チャーンが出ない前提で、いかにアップセルやクロスセルを生むかがカスタマーサクセスの1つの指標になります。
ただ、当然一番大事にしているのはカスタマーのサクセスなので、「サービスの特性上うまくいっていたら追加投資が生まれるはずなので、追加がもらえないのは提案や運用のフォローがよくないからだ」という思想が根底にあります。決して自社の売上ばかりを考えたりはしません。
これは卵が先かニワトリが先かの話になることもあるのですが、少なくともCMSを入れてWebの運用に前向きであればMAツールや広告を使ってより成果を生むための活動が必要になる場合が多いだろう、といった理屈です。
その上で、今日は初回訪問の現場における3つの大事なポイントをお話しします。
順に説明していきます。
自社のスタンスの説明を念入りに行う
まずカスタマーサクセスとしての初回の打ち合わせですが、基本的にはWebサイト構築後、営業あるいはディレクターがCMSの操作講習を行い、その後、初回のキックオフを行います(弊社では初回フォローと呼んでいました)。
もちろん営業段階でもWebサイトの目的や目標はある程度決まっていて、それに沿ってディレクターがWebサイトの構築を行なっているのですが、改めて今後の運用についての説明をします。
その際に、カスタマーサクセスとしてのスタンスは念入りに説明します。そもそもWebサイトは構築がゴールではなくその後の成果を生むことが目的なので、なぜ我々が訪問までしてサポートをするのか、作って終わりではなく継続的な支援を行うのかを説明をします。
特に最近ではDXへの関心も高まってきているのですが、CMSの活用も営業活用のデジタル化には大いに役立ちます。むしろ弊社としては本質的な価値を提供したいと考えているため、実現したいのはそういった組織改革の部分からです。その部分を初回で念入りにすり合わせます。
ある意味ここが自己紹介にもなるので、その上で自分はどんな人間で、これまで何をしてきたのかも一緒に説明して、お客様に安心感を抱いてもらうよう努めます。
ツールを使ってもらう前に自分自身を信頼してもらい、それから適切な行動を取っていただけるように支援を行っていきます。
目標設定で全てが決まる(といっても過言ではない)
そこまで理解していただいた上で、改めて目標設定を行います。これは短期的な目標設定だけではなく、3年後の目標設定までをざっくりとは決めてしまいます。もちろん変化に応じて修正はしていくのですが、遠い未来を意識してもらうことで長期施策と短期施策の理解がしてもらいやすいので、3年としていました。
また、目標は直近ではなく3年後から決めて、だんだんと現在に近づけて行きます。遠い未来から決めていく理由は、お客様の本音の理想値を引き出しやすいからです。
仮に直近の目標設定、例えば半年後の目標から立てようとすると、「直近は忙しいからこのくらいでいいかな・・・」と、担当者の目線を下げてしまう可能性があります。
そのため、まずは遠くの理想を描いて、そこから逆算していって、「じゃあ半年後はこのくらい必要ですね!」とこちらから提案してYesをとっていくのが重要です。お客様の目線を引き上げるのも、カスタマーサクセスの仕事です。
この時に、3年後の目標が低すぎた場合も調整が必要です。あまりに目標が低かった時には「それなら1年後でも可能かもしれません。なぜなら・・」と、あくまでお客様の口から出た目標を尊重しつつ、論理的に目標達成スパンの調整を行います。
そのため、初回訪問には入念な準備が必要です。どこまでの目標が達成可能なのかを自分自身が理解していないと提案も難しいので、事前にキーワードのニーズや競合分析は最低限行い、目標の目安の結論を出しておきます。その上で、現場でお客様とフィックスをしていくイメージです。
もちろん営業段階でもそういった話はするのですが、できればそれを上回っていくと、絶大なる信頼を得ることが可能になります(ただ属人化の原因になるのでデメリットもあるため仕組み化は大事です)。
そして、初回の打ち合わせは決裁者や責任者も同席している可能性があるので、ここで提案をやり切ることがとても重要です。後になって担当者さんに稟議やら申請してもらうのではなく、この段階で先々の提案をしておけば、担当者さんも楽なはずです。
特に役職が上がれば上がるほど数字の話が好きなことが多いので、具体的に運用フェーズでWebサイトからどのくらいの商談/売上が見込め、運用において何をすればどのくらいのリターンがあるのかをしっかりと説明すれば、話を聞いてくれるはずです。
その結果、前倒しでクロスセルが生まれることもありますし、予算の都合上来期になるかもしれませんが、悪い印象になることはないはずです。(よほど根拠もなくゴリゴリ営業しない限りは。)
何度も申し上げていますがここまでの話は営業段階でするのが前提なのですが、人は忘れる生き物なので、カスタマーサクセスの初回訪問で思い出してもらいつつ目線をあげる、というのがポイントです。
事例、事例、事例
また、目標や今後の運用のロードマップを引く際に必要なのが事例です。ここでは近しい業界の運用事例やコンテンツ案を提示します。他社がどんなことをして成果を挙げているのかは万人が気になるところなので、出来る限り具体的に提示することが重要です。
BtoBのWebサイトは業界ごとの特性はあれど、コンテンツの種類はある程度決まっています。そのため、ある程度はこちらから先に近しい事例を提示し、ヒアリングしながらコンテンツのすり合わせをしていきます。
近しい事例がないときはある程度市場から推測するしかないのですが、現状の営業活動や業界特性を聞いていけばある程度はやること見えますし、データを元に目標も決めることが可能です。
それでも100パーセントではないので、そこは運用しながら検証フェーズでデータを見ながらすり合わせをしていきます。当初立てた目標との乖離を埋めていくイメージです。
マーケティングの全体像を明確にする
もう1点、初回で大事な要素として、マーケティングの全体像の落とし込みがあります。これに関しては以下のnoteにもざっくりとは書きましたが、改めてCSの視点からお話しします。
CMSのカスタマーサクセスというと、基本的にはWebサイトの運用の話になるのですが、その運用は自社のマーケティング戦略の中で、役割を全うすることが目的です。あくまで、”自社のマーケティング戦略における”Webサイトの運用をベースに考えていく必要があります。
例えば、Webサイトのセッションやコンバージョンの話だけになってしまうと、どうしても視野が狭くなってしまったり、短期的な目標設定になりがちです。
集客の観点だけを見ても、CMSでできることは基本SEOのみになるのですが、本来であればSNSや広告の方が集客だけで言えば有効かもしれません。
案件の獲得であれば、多少軽くても獲得リード数にこだわって、ナーチャリング活動&インサイドセールスを行った方が成果が大きくなるかもしれません。そういった本質的な成果を獲得するうえで、CMSがどこでどう活躍するのかを理解してもらう必要があります。
ましてや弊社はMAツールも提供している会社です。もちろんクライアントの成果を最大化するためには複合サービスの提案が不可欠なので、Web運用だけではなくセールスの動きも加味して、提案を心がけています。
※ちなみに弊社のMAは無料から使えるので、よろしかったら触ってみてください。不要な機能はあえてつけていない、シンプルなものとなっています。
以上の例のように、全体像を理解した上での運用を考えなければ、Webサイト自体の戦略も極めて視野が狭いものになってしまいます。
カスタマーサクセスは幅広い視点で提案をしていく必要があるため幅広い知識が求められるのですが、そこは社内に蓄積されたナレッジと自らの勉強でカバーしています。とにかく経験と、インプットアウトプットの繰り返しなので、大変ではありますがとてもやりがいのある仕事だと感じております。
そして、Web制作会社もそこまで考えなければお客様を幸せにできないと考えているので、引き続き顧客成果にはコミットしていきます。
最低限の宿題を出す
全体像の話をした上で、目的と目標、具体的な運用内容が明確になっていれば、良い滑り出しを行うことができます。場合によってはここを決めるだけで相当な時間がかかるのですが、間違いなくそれだけの価値はある、というのが私の考えです。
実際、初回訪問の次でアップセルやクロスセルに繋がることも多くありますし、LTVにも大きく繋がります。これは弊社のというよりも、クライアント自身のWeb成果に大きく関わる印象です。
また、私が初回の訪問で徹底していたのが、お客様に手を動かしてもらうために、次のアポまでの宿題を出すことです。目標を決めておしまいではダメなので、できる限り具体的な行動(〇〇の記事を○本書く、など)を出して、1ヶ月後を目安に次の訪問を組みます。お尻が決まっていないと人は動かないので、強制的に締め切りを提示し、厳しくウォッチすることが重要です。
そして、もしその行動が難しいのであれば、弊社で代わりにやるための追加費用をいただく、という流れになります。これでアップセルやクロスセルになるのですが、ちゃんとROIを計算した上で追加投資をもらうので、あくまで話の軸はお客様のサクセスです。
いちカスタマーサクセスとしては、より短い期間で最大の成果を出して欲しいと考えています。当初は制作直後に追加費用をもらうことに気が引けるところもあったのですが、そこで遠慮していては本質的なカスタマーサクセスではないと考え、お客様のためになると思ったらどんな時でもガンガン提案しています。
また、私自身の性格上、正しいという自信がないと提案もできないので、そのスタンスを貫くには常に勉強が必要になりました。それが自身の自己成長にも繋がり、お客様と一緒に成長していくこともできました。カスタマーサクセスが向いていたのかもしれません。
上手くいかないケース
ここまで、非常にうまくいったケースについて書いてきましたが、実際には綺麗に運べないケースも当然あります。
例えばWebサイトがマーケティング上あまり役割をなさない場合(IRサイトなど)は、いくらマーケティングの全体像の話を説いても、目標設定の話をしても、基本的には響きません。(ただ、他部署の紹介や別サイトの提案には繋げることが可能だったりもします。)
その際に、弊社はABM(アカウントベースドマーケティング)の考えを元に、ある程度フォローの体制を変えています。
顧客のフォローは最適な頻度で行うことが重要です。多ければいいというものではありません。その思想の上、あくまでお客様に合わせたフォローをしてきました。
また、カスタマーサクセスにはセールススキルも必要だと思っているので、関連noteも貼っておきます。よかったら合わせてお読みください。
最後に
以上、カスタマーサクセスにおける初回の訪問について思いつくことを書いてきました。今回も思い立ってつらつらと書いてきたので、もっと細かく書くことはできたかもしれませんが、そろそろ体力切れなんでこの辺りにします。
カスタマーサクセスのミッションは、最短で顧客の成果を最大にすることです。そのためには正解はないと思うので、引き続き時代に合わせた最適な形で、お客様のサクセスを追及していこうと思います。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!Twitterもやっておりますので、もしよろしければフォローいただけると幸いです。
小木曽
~追伸~
2021年4月、弊社からついにCSツールがリリースされました!私は直接はかかわっていないのですが、弊社のCSへの想いが込められた良いツールに育っていくはずなので、ぜひお気軽にお試しください!無料から使えます!!