ベルフェイスの人事評価制度について
※2021 / 6 / 25 時点
ベルフェイス社の人事評価制度は現在リニューアル中のため、一部ブログ内容と異なる点があることご留意ください。
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Technologyやマーケティング手法は日進月歩。
最近は「労務」も「経理」も、果ては「モチベーション管理」さえクラウド化されて久しいが、『セールス』ほど旧態依然とした職種も珍しい。トップセールスのノウハウはベールに包まれ勘と根性が幅を利かせて数十年。
「セールスとTechnology」 は正に「水と油」 だった。
その中にあってベルフェイスは、営業に特化したインサイドセールスシステムを開発し、海外ではとっくに普及したこのスタイルを日本に拡めてきた。
このグラフを見て欲しい。
ベルフェイスが創業した2015年頃、「インサイドセールス」の検索はほぼ "ゼロ"。それがたった数年で [ウェブ会議] や [テレビ会議] などのビッグワードをぶっちぎっている。ECやBtoC向けのサイトに比べると微々たる数だが、いち営業手法の検索数としてはそれなりだろう。
導入企業が十数社のときからカスタマーサクセスに本気で取組み、高頻度でイベントを開催し、書籍を出し、大量のインサイドセールス事例記事を作り、資金の大半を広告に投じて市場を啓蒙してきた。
ベルフェイスは
「時流に乗った」のではない。
「時流を創った」のだ。
4周年の節目に有料導入企業数が1000社を突破したが、まだほんの序章。国内のインサイドセールス市場だけでも30倍になるはずなので、地道に頑張っていくつもりだ。
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さておきセールス以外にも、働く人にとって非常に重要なことであるにも関わらず全くイノベーションが起こっていない領域がある。
それが「人事 (報酬) 制度」だ。
これほど不透明で、企業毎にバラバラで、労使の認識がズレている領域もない。そもそも評価制度が無い企業は論外として、大手企業でも大体こんな感じだろう。
《一般的な人事制度》
■ 業務レベルに応じた「等級」がある
・level 1=「指示があれば行動できる」
・level 2=「指示がなくても主体的に行動できる」のような
■ 等級に応じて役職が上がっていく
■「一般職」と「専門職」に分かれている
そしてお決まりの【給与テーブル】によって年収が決まる流れだ。
21歳で創業して12年経つが、この "常識的な" 人事制度に長年 “違和感” があった。
何かが抜けている、、
何かが根本的にズレている、、、
ベルフェイスも近々社員が100人を超える頃合いで、等級と給与テーブルの人事制度で優秀な人材を採用できるのか?引き留められるのか?世界で戦える組織になれるのか?というモヤモヤがずっとあった。
そんなとき、知人から NETFLIXの最強人事戦略 という本を紹介してもらい、雷が落ちた(大袈裟)。長年のモヤモヤが一気に晴れていく感じがした。
そう、従来の人事制度が完全に見落としているのは、人材の「市場価値」だったのだ。市場価値とはつまり、『需要と供給』だ。
考えれば当たり前だが、人材の価値は市場によって変わる。
◆市場にエンジニアが足りなければ、エンジニアの需要 (報酬) は上がる。逆も然り。※例えばインドは毎年150万人の工学(エンジニアリング)専攻学生が卒業しているが、就職できるのは50万人程度と供給過多になっていて報酬が減少傾向にある
◆市場にインサイドセールス人材が足りなければ、インサイドセールスの需要 (報酬) は上がる。逆も然り。
◆事務職の希望者は「供給過多」だから、報酬は「低い」。
その人材の価値 (報酬) は、需要と供給(市場原理)によって決まる。
繰り返すが、至極当たり前の話だ。
・・・なのに、
人事制度におていてはソレ(市場価値)は一切加味されていない。
いや、語弊がある。反映されているのだ。
「採用のときだけ」は。
採用時は前職の給与を基準にしつつ、他社と比較しながら給与が決まる。
「競合がマーケターを年収700万円で募集してるから、ウチは750万円〜で募集しよう」「バッティング先が年収600万円で提示してるらしいから、ウチは700万円にしよう」
このような会話は「市場原理」が働いている証拠だ。
しかし不思議なことに採用した "以降" の人事制度においては、「市場原理」が全く反映されない。
人生の目的が年金だった昭和は終わった。楽しかった平成も終わった。今は令和だ。これほど雇用が流動化した現代において、社員はその会社で働き続ける義務も責任もない。いつでも「転職」という選択肢がある。
採用難だ何だと言いながらも、いつまで経っても「選べる立場」だと勘違いが抜けない企業側の視点で制度を作ってきたから、そんな当たり前を見落としてきたのだろう。
「優秀な人材にベルフェイスで長く働いてもらう為に、人事制度に ”市場評価" を反映させ、業界最高水準の報酬を支払う」
私は決意し、人事と共にさっそく制度の設計に着手した。
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肝となる市場評価の算出は、各業界に精通した「転職エージェント」に協力してもらうことで比較的簡単に実現した。
Step①
年に一度、社員はキャリアシート(職務経歴書)を更新する。
※ベルフェイス在籍期間の実績も反映
Step②
キャリアシートを転職エージェント3社に提出し「その人材が転職した際に、同業界・同職種でもらえる報酬レンジ」を見積もってもらい、上限額を平均する ※見積りの精度を上げるために、職種ごとに精通したパートナーを選定
うーむ、シンプル。
転職エージェント3社が見積もる報酬レンジの上限額を平均することで、間違いなく人材の「業界最高水準の報酬」を算出することができた。
しかも社員は、キャリアシート(職務経歴書) の作成にあたりプロのキャリアコンサルタント (外部) から作成アドバイスをもらえるという特典付き。
加えて転職エージェントからのレポートには、
✅ 報酬算定の根拠(キャリアの加点・減点ポイント)
が書いてあり、更には
✅今後どのようにキャリア・実績を積んでいけば市場価値が上がるのか?
という詳細なアドバイスまで書いてもらう。
至れり尽くせりではないか。
つまり、ベルフェイスで働く社員は、”転職活動をしなくても毎年自分の市場価値を知ることができ、専門家のアドバイスを元に中長期的にキャリアを考えられる” ようになったのだ。
※ちなみに「新卒」は一定のキャリアを積むまで市場評価 ”対象外”
長年の違和感に終止符が打たれた瞬間だった。
ちなみに転職エージェントも、この手間のかかる見積もり作業を無料でやってくれるわけではない。1レポート数万円✕3社分、それが社員の人数分だ。ベルフェイスとしては、一回の人事評価で ”数百万円" の費用がかかる。ベンチャーである我々にとっては決して軽い金額ではない。
しかし、優秀な人材が正当に評価され、一日でも長くベルフェイスに留まってくれるようになるなら、これは価値ある投資だと思った。
-------ここで疑問が浮かんだ-------
✅ 業界最高水準の報酬を支払っても、その人材が "ベルフェイスで成果を上げられるとは限らない" ことだ。
膨大な資金力を武器にGoogleやFacebookとの人材獲得競争に勝てば後のことは何とでもなるぜ、というアメリカベンチャー(Netflix)の発想が万能ではないと感じた。そして、逆に
✅ 優秀な人材には、業界最高水準 ”以上" の報酬を支払いたい
とも思った。
我々は仕入れや設備を持たないIT企業。投資するのは「人」しかない。しかもMRR(月額ストック収益)を積み上げるSaaSビジネスをやっている。会社に貢献してくれる人材への報酬をケチる必要などないのだ。
では、ベルフェイスにとって「優秀な人材」=「ハイパフォーマー」とはどのような定義か? これは元々明確だった。
「論理的思考力」「実行力」「人間関係構築力」という3つの資質を備えており、
ベルフェイスが大事にする価値観=6Valuesを体現しようと努力し、
”その結果として”
与えられたミッション (成果目標) を達成してくれる人材、だ。
◆変化が激しい環境において、社員一人一人が現場で判断を下す基準、常に意識すべきスタンス、それが「Value」
◆事業計画を達成する為に、社員一人一人に求める成果目標、それが「Mission」
市場評価をベースに「Value(価値観)」と「Mission(成果目標)」を評価に反映できれば、最高の人事制度になると思った。
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《Value評価》
創業当時から、強い会社には「らしさ(人格)」があり、その「偏り」が強固な組織を作るという信念があった。例えば国内ならリクルート、サイバーエージェント、楽天、キーエンス、光通信など、強い組織には間違いなく "らしさ" がある。それを言語化したのがValue(価値観)だ。
創業一社目でそのような組織づくりができなかった反省があったので、ベルフェイスでは早い段階からバリューを明確にして浸透に取り組んできた。
言うまでもなく、バリューや理念は作っても形骸化しては意味がない。(そういう会社は山ほどある)そうならないためにも、人事制度と紐付けることは会社のメッセージとしても重要だ。
その手法としてベルフェイスでは、6Valuesを360°サーベイでスコアリングし、S / A / B / Cの4ランク付けすることにした。
【Step1】360°サーベイのメンバー選定(上長含む6人が1人を評価)
【Step2】回答者は、6つのバリューを4段階で評価
そうすると上記の通り、全社員のバリュー体現度を [min42~max168点] の範囲でスコアリングすることができた。
その上で、最終的に4つのバリューランクに分ける。100名の会社であれば[上位25人=S] [次の25人=A] [次の25人=B] [下位25人=C] という具合だ。
ちなみに社内から なぜ「バリュースコアが "●●点以上は A" 」のような "絶対評価" にしないのか? という声が挙がったが、答えは明快。バリューの追求に終わりはなく、組織と事業ステージによって求められるレベルが常に変わるからだ。
例えば、 ”今” のベルフェイスで評価される「オーナーシップ」と、社員数も売上も倍増している ”一年後" のベルフェイスが求める「オーナーシップ」は当然違う。
優秀な仲間が増え、既存社員が努力すれば、基準は上がり続ける。それを「成長」と呼ぶ。だから、バリューだけは今後も相対評価であるべきなのだ。
もう一つ、「新卒と事業部長が同じ評価基準なのは不公平では?」という声も挙がったが、それも問題ない。なぜならば、新卒を評価するのは同じ立場の新卒(と上長)で、事業部長を評価するのは同じ立場の事業部長 (と役員) だからだ。
当然立場によって求められる水準は異なるので、バリュー評価において "新卒が事業部長より上"、ということは当たり前に起こる。つまりどの役職の人間であっても、バリューの前には平等なのだ。
※「役員である責任の重さ」は既に市場評価で報われている
《Mission評価》
Mission (成果目標) 評価はわかりやすい。
半期単位で目標を設定し、その達成度によって4ランク(A~C)に分類される。少し特徴的なのは、セールスなど数値が明確な部署はもちろん、一般的に目標設定が難しいエンジニアや経理含め "全員" に設定される点だろう。
どんな仕事でも細分化していけば数値に置き換えられるはずだし、どうしても数値化できない業務でも、「いつまでに、どんな状況になっていれば達成なのか?」ということは定性目標は設定できるはずだ。(それをA=100%とすれば、それ以上ならS、それ以下ならBと評価できるようになる)
持論だが、人事制度で不満が爆発するのは「具体的な目標が示されてないのに、評価されるタイミングになってアレが足りないコレがダメ」と言われることだろう。
つまり、何をもって「成果」とするのか、マネージャーと部下が握れていないことが根本の問題なのだ。難してくもそれを最初にしっかりすり合わせて、少なくとも毎月進捗を共有しておけば、例え管理部でもエンジニアでも一定期間のミッション「達成度」を評価できる。
逆の言い方をすれば、このような仕組みにしているからこそ、どの職種においても成果を "明確にせざるを得ない" とも言える。
「私はデザイナーですが、どんなミッションを設定すればいいんですか?」こういうやり取りが生まれることが重要なのだ。
これについては役員から、「じゃあ目標は低く設定した方が達成しやすいので、消極的な目標になるのでは?」という質問が挙がったが、その心配はない。なぜなら最終的に社員に設定されるミッションは、事業計画を達成する為に経営 → 事業部長 → マネージャー → プレイヤーの順に "上から割り当てられる" のであって、社員が独断で設定するわけではないからだ。
このプロセスを経て、ValueとMissionを定量化(ランク分け)することができた。最後に、それらを市場評価をどう組み合わせるのかを説明しよう。
考え方はシンプル。
市場評価で算出した「業界最高水準の報酬」をベースに、Valueランク・Missionランクに応じて下記の%で加算・減算する。
・Sランク = +10%
・Aランク = +5%
・Bランク = -5%
・Cランク = -10%
具体的にはこんな算出になる。※クリックして画像拡大
例えば報酬上限が800万円の社員のValue・Missionとも「S」ランクであれば、960万円の報酬を得られる。見て分かる通り「業界最高水準」をベースにしているので、Valueスコア・Missionスコアが高い社員は必然的に最高水準 "以上" の報酬になる。そして、全体としても報酬水準はかなり高い。
※更に言えば、ベルフェイスには全社員向けに「業績達成ボーナス」が別にある。
では逆に、MAXでどれくらい報酬が "下がる" 可能性があるのだろうか?
つまりValue・Missionランクとも「C」の場合だが、こんな感じだ。
この場合だと、平均報酬レンジが 1200~1300万円 に対して、実際の報酬は "1040万円" だ。この社員はここから努力することもできるし、場合によっては転職活動することもできる。なんと言っても手元には "最新の職務経歴書" があり、転職すれば報酬アップする可能性が高いことが証明されているのだから。
これについては賛否両論あると思うが、私はそれでいいと思う。
Missionはともかく、Valueは「価値観」だ。正解・不正解ではなく、合う・合わないの話だからだ。(もちろんこの社員が頑張る気持ちがあれば、会社として全力でバックアップする)
まとめると、ベルフェイスの社員が報酬を上げるには3つの方法がある。
◆自分の市場価値を高めること = 長期的な取組み
◆Valueを高めること = 短中期的な取組み
◆Missionを達成すること = 短期的な取組み
ベルフェイスで働く社員は、転職活動をしなくても常に自分の「市場価値」を確認し、キャリアを計画的に創っていくことができる。そしてValueを体現し、Missionを達成することで、業界最高水準 "以上" の報酬が得られる。
この制度であれば、社員は否が応でも自分のキャリア(市場価値)を意識するようになるし、評価する上長は、部下の報酬を上げるために「どうやったら市場価値が上がっていくか?」ということを真剣に向き合うようになるのだ。
ベルフェイスは社員に対して「我々は家族ではない。一人一人が成果にコミットしたプロチームだ。キャリアは会社の責任ではなく、自分の責任だ」と言い切っている。
その為に各種のキャリア支援制度があるし、「自由」と「責任」を前提に全職種リモートワーク・フレックスタイムで働ける環境も整えた。
終身雇用や年金が泡と崩れた現代において、閉ざされた社内の等級と給与テーブルだけで評価することは本当に社員のためになるのだろうか?
私はそうは思わない。
この人事制度には、「市場価値の高い人材であってほしい」「Valueを体現する人材であってほしい」「プロとしてMissionをやり遂げる人材であってほしい」という想いを込めた。
Market評価+Mission+Valueを組み合わせたベルフェイス式人事制度は、競争の激しいIT業界で今後スタンダードになるかもしれない。
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