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<読書>ばにらさま
・ばにらさま 著者:山本文緒
表題作『ばにらさま』を含む短編集です。
どの作品にも、もやもやしたものや、ドロドロしたものを抱えている人たちが登場して、人間関係に葛藤する姿が描かれています。
お菓子のように、甘く、口あたりの良い、心地よい生活をしたいものですが、現実は厳しい。
面倒なこと、辛い事とも関わって、折り合いをつけて生きていかなくてはなりません。
そういう部分がこの作品には描かれています。
印象的だったのは、表題作『ばにらさま』に登場する派遣OL。
白くふわふわした感じの女の子ですが、ネットに書き込んだ日記の中身は、真っ黒です。
地方出身の一人暮らしの女の子が、華やかな生活をすることは厳しいのでしょうが、腹の中は真っ黒で、心は病みつつあります。
華やかな都会を歩く、ふわふわした可愛らしい女の子の裏の顔。なんだか恐ろしいです。
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『ばにらさま』に収録された作品は、読ませるストーリー展開で、仕掛けにも感心させられました。
でも、それだけでなくて、読んだ後に、少々重いものが心に残りました。
今の時代を生きていく厳しさや、日常生活を営みながらも感じる心の闇の部分が表現されているからだと思います。
重い部分もある、少々考えさせられる読後感ですが、私はこの作品に魅かれました。
なぜなら、甘いお菓子だけを食べて、ふわふわと生きられる世界など存在しないと思うから。
厳しい現実からも逃避せず、色々な事とも折り合いをつけていくことが、生きていく、生活していくということだと思うからです。
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山本文緒さんの訃報を知って、とても残念に思っています。
まだ若い。
昨年読んだ、『自転しながら公転する』
久しぶりの新作でしたが、著者の作家としての力みたいなものを、改めて感じた作品です。
もっと長く生きて、少しづつでもいいから、書き続けて欲しかったです。
著者の新作が読めないのかと思うと、寂しいです。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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