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〈読書〉水を縫う
・水を縫う 著者:寺地はるな
『水を縫う』の主人公の清澄は、裁縫が好きな高校生。
清澄は、母・さつ子、姉・水青、祖母・文枝と暮らしています。
清澄の母と別れた父親・全は、縫製会社を営む友人・黒田に雇われ、黒田と生活しています。
結婚することになった水青が、華やかなウエディングドレスは着たくないと言い、清澄は水青の為にウエディングドレスの制作を始めます。
短編をひとつひとつ読んでいくと、主人公やその家族たちの事情や気持ちが明らかになっていきます。
この家族は決して仲が悪いわけではない、むしろ普通過ぎる家族。
しかし、それぞれが自分に対するもやもやした想いを持っています。
男性や女性があるべき姿と自分や家族のあり方が一致しないということから、そのもやもやとした想いは発生しています。
清澄のウエディングドレス制作に巻き込まれていく、家族やその周辺の人たち。
ウエディングドレスの制作は簡単ではない様子ですが、自分のやりたいことに突き進んでいく清澄にエールを送りたくなります。
自分の好きなことに向かっていく清澄の行動は本当に気持ちが良いです。
また、それを少しずつ認めていく家族も温かい。
裁縫が好きで友達が多いとは言えない清澄。
しかし、清澄の数少ない友人の宮多やくるみは清澄の良き理解者です。
友人・全の面倒をみながら清澄や水青と関わるうちに、彼らの親戚のおじさんの様な立場になっている黒田。
黒田も、清澄やその家族の理解者です。
自分らしく生きることは、時に難しいけれど大切なことですね。
また、自分らしく生きようとする人を認め、見守れるようになりたいものです。
寺地はるなさんの本を読むのは、今回で3冊目。
以前に読んだ本は『大人は泣かないと思っていた』と『川のほとりに立つ者は』です。
寺地さんの作品では、丁寧に登場人物の心情が描かれています。
そして、『水を縫う』や『大人は泣かないと思っていた』の登場人物は、自分の周辺にもいそうな普通の人。
身近な人との関係を細やかに綴った作品は、じんわりと温かく、共感できる部分があります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
私K.Kからのごあいさつです↓↓↓