【私の仕事】 忘備録(19)「他社」とはどこの会社?
【私の仕事】 忘備録(18)中国人の臨機応変 からのつづきです。
◆この記事の内容:
中国企業のコピー品制作のはやさに驚いたことを書いています。
OEM
サラリーマン時代に長年輸入部署で働いていた。ルーティン業務としてある機械製品(当時1個200米ドル)を部品材料としてアメリカの片田舎の州にある小さな会社から毎年に3000個と直輸入していた。
日本でも車両に詳しい人はよく見かけるものなので、製品名を仮に「Zホルダー」とする。わざわざアメリカから輸入していた理由は、世界で唯一の製品で、OEMもしない方針だったため。
「Zホルダー」
「Zホルダー」は、パテント(特許)も持っていた。電気も使わないエコシステム。小さい製品で使いたいときに約2秒で取外しすることが可能、収納するときも約2秒。とても簡単な構造。
機械製品のため鉄と鉄とが擦れる部分があるが、10万回の耐久試験で少し摩耗したが性能にはまったく問題なかった。構造はシンプルで誰でも気付きそうなアイデアだが、開発したとき、まず特許を申請したのだろう。
仕事はスピードが大事。その片田舎のアメリカの小さな会社は「Zホルダー」の特許を30年以上、保有している。日本だけでなく世界中に輸出しているので、その会社にしてみれば「Zホルダー」は、はドル箱だ。やはり、特許を持っている会社は安定した売り上げが期待できる。
『OEM』とは、(オーイーエム、英: original equipment manufacturer)は、他社ブランドの製品を製造すること、またはその企業のこと。
このとき自分がやったのはOEMではない。世の中の商業道徳に反したコピー品の製造委託だ。
他社=中国系企業
自分が「Zホルダー」を日本に直輸入する担当になって数年経過したころ、世の中全体が不景気、努力しても売り上げは伸びない。そうなれば、会社は経費節減、コスト低減に集中する。
当然だ。社内で「製造原価低減会議」の回数も増えてきた。その会議に出席したとき、上司から「Zホルダー同じ製品を他社で作れないだろうか?」とさらっと言われた。
この頃はもう30歳。日本企業特有の雰囲気に完璧に毒されていた。「~だろうか?」の疑問形は、尋ねているのではない。
「命令」しているのだ。返事は「はい!」しかありえない。上司が発言する発言や指示が言葉不足でも、自動的に相手の心情を推し量って行動する習慣がついている。いわゆる「忖度」だ。
さて、「他社」と言っても、直接取引はしない。何かあったときに、バレないように間にこちらの意向をくみとる商社を数社入れる。
その「他社」は日本国内の企業はダメ。やはり、中国にある中国人だけの企業。取引先の中でこんなことを依頼できるのは、あの1つの会社「F」だ。そう、上司の言う「他社で作れないだろうか?」は、「早急にF社でコピーさせろ。」なのだ。
コピー品
さっそく、メールでは証拠が残るので電話で話をし、早急にF社に来日してもらうことを依頼。もし、日本の企業にコピー品を作って欲しいことを依頼すると、現品と仕様書、図面、場合によっては金型の図面も最低限必要になる。
しかし、その中国人のF社には、そんなものを要求しない。こちらからは現物を渡すだけ。2週間後には、ほぼ同等品サンプルを持参して来日してくれる。あっという間だ。
もちろん、作りは荒い。でも見た目は同じ。疑問なのは、どうやって金型を作らずにこのサンプルを作ったかだ、今では3Dプリンターが珍しくないが、これについてはさすがに、F社は教えてくれない。
コピー品のサンプルを見て、作り方が綺麗ではないので、僕が難色を示すと、F社は実はもう1つサンプル勝手に作ったという。そんなことは依頼していないが、勝手に作ってしまっている。本件は機密に行動してくれと依頼したが全然伝わっていないようだ。
ただ、1つ目のサンプルより、見栄えがいい。こっちの方が売れそうだ。後は、自社の品質部の審査が通れば、原価低減に成功する。こんな早いスピードで対応できるのは中国人のF社だけだ。
販売開始
数週間後、社内の各部署の合同会議でその製品を販売することに決定した。
米国の会社に対しては、「Zホルダー」の年間発注量が急に減るとバレてしまうかもしれない。1年ごとに少しずつ発注を減らしていくしかない。契約書で最低発注量を定めているので、それを下回るときまでに製品の一部を変更してパテントをとる。または、契約内容修正の交渉をする。
但し、今までに相当な数を販売しているので、正規のアメリカの会社と完全に契約を破棄してしまえば、使用しているユーザーからクレームがあった場合、対応できず自社の信用を失ってしまう。こちらの都合の良いように非常に微妙な動きをしなければならない。
相手は小さな会社でもアメリカの会社、おそらく、いずれ訴訟されるだろうと予測していたら、その通りになった。この対応や処理には時間や費用が相当かかった。何のための原価低減だったのか。今では思い出となっているが。。。
知的財産権
既にあるものをまねて新しいものをつくる場合や、まったく新しいものを作る場合でも、業種をとわず、著作権、意匠権、知財について知っておく必要があります。
👇 知財のひな形です。
知的財産権(ちてきざいさんけん、英語:intellectual property rights)とは、著作物(著作権)や工業所有権などといった無体物[注釈 1]について、その著作者などが、それに対する複製など多くの行為に関して(無体物であるにもかかわらず、あたかも有体物として財産としている、あるいは所有しているが如く)専有することができるという権利。
【私の仕事】 忘備録(20)防衛省担当営業マン へつづく。。。
*このnoteで書いてある記事はすべて実話です。「忘備録」として自分のために書いています。
◆ご注意:一部の記事はnoteのシステムによって18歳以上向けに分類されていますが、すべて18歳以上向けです。
よい子の皆さまは読まないでくださいね。