【地球星人】村田沙耶香:この世は人間を作る工場。働く道具と生殖器
前回、村田 沙耶香さんの小説「コンビニ人間」の感想を記載したところ、「地球星人」も面白いですよ!と勧められたので早速読んでみた。
同じ作家の作品を続けて読むと、前作の記憶がまだあるので、前作と比較しながら、
「この作家は社会問題や人間関係のここに興味を持っているのか」とか、「文体や文章表現でこの点は共通しているのか」などが頭に入ってきやすく、同じ作家の作品を続けて読むのも良いなと感じた。
地球星人はコンビニ人間の後に出された作品であり、すでにコンビニ人間で突きつけていた、社会における「普通」の違和感を極限まで高めてきたなという印象。
この世は人間を作る工場:働く道具と生殖器
本作でもコンビニ人間と同様、社会における「普通」の価値観に馴染めない主人公、奈月は、自分は宇宙人であり、この世を下記のように俯瞰して見ている。
ここでいう普通とは、「働いて生産性を高めること、子孫繁栄のために子供を産むこと」の2つにより焦点を当てているように思う。本作では一貫して、この2点に関する疑問を投げかけている。
自分は、この「普通」に関しては、違和感を持ったことがないのだが、それはたまたま、自分がこの2点の価値観に関して違和感を持たないような遺伝子として生まれただけであって、もしそうでなかったとしたら、同じような価値観を持っていたかもしれない。なぜ、ここまでこの「普通」に関して、一貫して鋭く問いかけているのだろうと、村田さんに興味を持って、インタビュー記事を漁ったところ、いくつか発見した。
両親の影響は大きく、子供への期待や両親が思う当たり前の価値観の刷り込みを、村田さんは子供ながらに認識していて、それに対する自分の違和感を小説に投影しているのだろう。
確かに、いまでも、結婚と出産を望む周囲の声は多いと思うが、それ以外の娯楽もテクノロジーの進化とともにどんどん増え、出生率も右肩下がりで先進国全般では下がっている昨今、40年後にこの本を初めて手に取った人が読んだ時の読後感も興味深い。
韓国はすでに出生率が0.7台と1を割っており、日本も20-30年後には「結婚するんですね。なんて珍しい」と周囲からの目が逆転している可能性は大いにある。結婚すること自体が制約で自由が失われることであり、こんなに1人でも楽しめる娯楽があるにも関わらず、わざわざ自ら不自由な制、、、
続きは、こちらで記載しています。
この記事が参加している募集
よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!