『「介護時間」の光景』(78)「広告」。10.12.
今回も前半は、申し訳ないのですが、昔の話になります。
16年前の2005年10月12日のことです。
私が、ただ介護をしていた頃でした。
(後半に、今日のこと、2021年10月12日を書いています)。
自己紹介
初めて見つけていただいた方は、ありがとうございます。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
もう20年ほど前のことですが、仕事をやめざるを得なくなり、介護に専念している時間の中で、介護者に「個別で心理的な支援」が必要だと思うようになり、自分でも微力ながら関わろうとして、勉強し、学校に入り、臨床心理士の資格をとり、その後、公認心理師の資格も取得しました。
そして、今では、周囲の方々の尽力もあり、家族介護者の心理的支援のための「介護相談」を続けることができています。
2005年の頃
2005年当時は、片道2時間かけて、母の入院する病院へ通っていました。帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護をする毎日が続いていました。
それは、2000年から続く「通い介護」の日々でもありました。
母親の症状が落ち着いてきたと思えてきた2004年には、母の肝臓にガンが見つかり、手術をしていったん落ち着いていたのですが、2005年には、再発してしまいました。
年齢からいっても、また手術するのも難しく、あとは、なるべく楽しい時間を作れれば、と思っていましたが、何か、焦りが、やたらとあったような気がします。
そんな頃の記録です。
2005年10月12日
「誕生日カードを、作る。
なんとか、うまくいく。
毎月、ボランティをしている。
それから、母の病室へ行く。
今日は、病棟でのお茶会があって、母はいない。
少したったら、母は戻ってくる。
少し涼しくなってきたので、秋向きに、少し暖かそうなスリッパをこの前持ってきたのだけど、それがあたたかかくて、ありがたい、と母は言ってくれて、よかった。
足の爪を切る。
端っこが食い込みがちなので、早めに切ったほうがいい。
夕食は35分。
ほぼ完食。
高野豆腐は、ここ何年かで、母は、急に嫌いになったみたいで、残していた。
廊下で、食事担当のスタッフの方に会って、少ししゃべって、いつも、おいしい料理を作ってくれていることに、お礼を伝える。
午後7時に病院を出る。
少し肌寒い」。
広告
行きと帰りの電車。車両の中の中吊り広告のレイアウトが同じように思え、そして、同じ広告の見出しが気になるというか、気持ちの中に飛び込んできた。
「年齢からくる衰えを克服」。
なにか、奇跡的なもの。万能なもの。直線的な希望のようなもの。
そうした事につながるような、なにか「お告げ」に近い響きを感じた。
「どうしても90を切りたかった」
という言葉が続いているので、ゴルフ関係の広告なのは間違いなかったけれど、やっぱり広告は欲望という事をよく研究しているのかも、と改めて思った。
(2005年10月12日)
その後、母は症状は悪化し、2007年の5月に亡くなった。同じ頃、妻の母親の状態も悪くなってきて、妻と二人で在宅介護を続けた。その合間に、心理学の勉強をし、2010年に大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取り、介護者相談も始めることもできた。2018年の年末に義母が急に亡くなり、19年間の介護生活が終わった。2019年には公認心理士の資格も取得できたが、「介護のための昼夜逆転の体質」を直すのに、思ったより時間がかかっていたら、コロナ禍になっていた。
2021年10月12日
昨日は、ご近所の方が、引き続き、家関係の修理をしてくれた。
机の補強
外に置いてある机が、ガタガタしていたので、それを直すために、材料と道具を持って、来てくれた。この前、台所の修理をしてもらったばかりだったから、体調を考えても、もう少し後かと思っていたので、意外だったが、なにしろ手早く、確実に作業を進めてくれた。
その机は、妻の父親が、娘の勉強机として作ってくれたもので、ご近所の方にとっては、よくできているもので、だから、何十年経っても、まだ大丈夫らしい。それを聞いて、なんだか嬉しかった。妻に聞いたら、机に向かうと眠くなっちゃったから、使ったことはあまり覚えていない、という話になった。
何時間かかけて、補強してくれた机は、「別人」のように丈夫さが復活したが、まるで古民家をリノベーションしたようで、さらには、妻の父親と、ご近所の方との、時間を超えたコラボのようにも思えて、それも、なんだかうれしかった。
小雨
今日は、急に気温も下がり、空も濃いめの灰色になっている。
いつ雨になるか分からないが、ラジオの天気予報でも、関東南部は、雨が降ったり止んだり、という、絵に描いたような不安定な天候らしい。
午後になり、天気予報を見たら、夜中までは曇り、ということを知り、妻と一緒に、洗濯物を出していたら、ガラス越しには見えないほど、細かい雨が降っていて、だから、再び、家のなかに入れた。
干せたら、洗濯を始めようと思っていたのに、と残念だったけど、それは勝手な都合だった。
花と葉っぱ
ポストを見たら、ビニールの中に小さい手紙が入っていた。
それは、ご近所の人からの、お礼状のようなものだった。
妻が、今日の朝、庭に咲いていたシュウメイギクをつんで、その人に届けたので、それに対する返事で、気がつかないうちに、ポストに入れてくれていたらしい。
それは、「植物通信」だった。筆による植物の絵と、筆文字は、とても達筆でありながら「圧力」のない柔らかい気配で、妻に来た手紙だけど、なんだかうれしかった。
ポストから手紙をとる時に、庭に柿の葉っぱが落ちていた。
それも、きれいに紅葉したもので、展示されているようにあったので、もしかしたら、妻が置いたのかな、と思って聞いたら、「わたしじゃないよ。でも、見て、っていう感じに、ちょうど落ちてるよね」と答えてくれた。
上を見たら、柿の実が、緑から赤の途中の色合いのものが、かなり大きく、たくさん実りつつあった。
気温も低くなってきて、今の雨は「秋雨前線」によるものだから、気がついたら、また一歩、季節が進んでいるようだった。
その後、雨がやんだ。
空は濃いめの灰色のままで、だけど、少しでも乾くかもしれないから、また洗濯物を外へ出した。
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