「介護時間」の光景⑱ 「赤」 7.24.
個人的なことですが、家族介護者として、仕事もやめ、ただ介護に専念していた時期がありました。
その時期は、今よりも、周囲の小さな違和感に対して、敏感だったようにも思います。
かなり前の話になり、申し訳ないのですが、今から19年前、母親の入院する病院へ「通い介護」をしていました。
やたらと、疲れていたような印象がありました。
赤
病院の外へ出ると、空には三日月があった。
その周りは雲で囲まれていて、雲の一部分が不自然なくらい赤くなっている。
少し雨が降っている。量が少ないせいか、気温のせいか、なんだか生温い感じがする。
(2001年7月24日)
この「赤」を書く前に、母親の病室に行っていて、その話も書いていました。
書くことで、少しでもストレスを和らげようとしていたのかもしれません。
「午後4時10分頃に着く。
『今日は、17日?16日?』
母は何度か聞いてくる」。
「弟が夏休みで、遠くから、何日か前に来て、花とバナナがあった。
仕事で忙しい話をしていった、と母に聞いた」
「母親は、トイレは30分で2回も行く。
同じ階のご高齢者が、他の病院へ移ったことを、母に教えてもらった。
以前、他の病院のスタッフが、亡くなる時は、同じグループ内の、この病院、という話が聞こえてきたことがあったが、そこに入院したようだった。
そういえば、その人は、最近元気なかった。
亡くなってしまうのか、と思う」。
「弟が来た日のカレンダーに○がついている。
最初に15日に○があったのに、そこに×をつけて、今度は22日に○がついている。
3日前に、近くの系列の病院の敷地内での、お祭りに、母親と一緒に行ったことは覚えていた。
ここの病院に来て、ちょうど1年がたつくらいだけど、初めての外出だったかもしれない」。
「仕事もやめて、それでも、母のことなどで細かいことで、やることがあって、やらなきゃと思いながら、なんとなく過ごしている自分がいる。
このまま、終わってしまう感じは、まだ、いつもある。
そんなことをしているうちに時間はたって、だけど、なんとなくいつも胃が痛い。 午後7時頃には、病室を出る」。
「夜中に家で、眠れないからラジオを聴く。
ラジオドラマを聴いていたら、ある作家が
『明るくボケよう』っていう本を書くつもりです。
それに応えて
『目的持って、頭を使うとボケにくいそうです』
という会話。
結局、こういう常識が、さらに追い込むんだ、と思って、気持ちを落ち着かせるつもりが、かえって、イラついて眠れなくなった」。
それから、ちょうど19年がたちました。
2020年7月24日。
ずっと雨がちで、それでも今日は少しだけ晴れ間が見えた時に、本当に久しぶりにセミの声が聞こえてきました。
反射的に、夏を思いました。
昨日(7月23日)は、東京都の新たな感染者数が、366人と、過去最多になってしまいました。
今日(7月24日)は、コロナ禍がなければ、東京オリンピックの開会式の日でした。
そのために、今年だけ、「スポーツの日」として休みになっていて、だけど、オリンピックはないので、ただ祝日になっている、という、考えたら不思議な日です。
午後2時半頃、買い物に出かけたら、コンビニの駐車場に、(たぶん)銀色のポルシェが止まっていました。そこから、降りてきたのは、明るいカジュアルな服を着て、ゴルフバッグを持った中年男性でした。
もう少し年上そうな運転手と、どちらからともなく、
「また、やりましょう」
と声をかけあっているのも、聞こえてきます。
独特のエンジン音を響かせて、「品川」ナンバーのポルシェは走り去って行きました。
本来であれば、そういう「光景」が似合う季節なのを、思い出しました。
商店街には、今もオリンピックのフラッグが掲げられています。
電車に乗ると、東京2020の競技に関してのCMのような映像はまだ流れています。
すでに延期、もしくは中止もありえるのに、いつまで、それが続くのか不思議です。
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