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『「介護時間」の光景』(174)「雨」「カサ」。9.21.

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで書き続けることができています。

(この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2003年9月21日」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、繰り返しを避けられるかと思います)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


「介護時間」の光景


 この『「介護時間」の光景』シリーズは、私自身が、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的で、しかも断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないかとも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2003年9月21日」のことです。終盤に、今日、「2023年9月21日」のことを書いています。

(※ この『「介護時間」の光景』シリーズでは、特に前半部分の過去の文章は、その時のメモと、その時の気持ちが書かれています。希望も出口も見えない状況で書いているので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば幸いです)

2003年の頃

 1999年から介護が始まり、2000年に、母は転院したのですが、私は、ただ病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に在宅で、義母の介護を続けていました。

 ただ、それ以前の病院といろいろあったせいで、うつむき加減で、なかなか、医療関係者を信じることができませんでした。それでも、3年がたつ頃には、この病院が、母を大事にしてくれているように感じ、少しずつ信頼が蓄積し、その上で、減額措置なども教えてもらい、かなり病院を信じるようになっていました。

 それでも、同じことの繰り返しの毎日のためか、周囲の違和感や小さな変化にかなり敏感だったような気がします。

 2003年の頃には、母親の症状も安定し、病院への信頼も増し、少し余裕が出てきた頃でした。これまで全く考えられなかった自分の未来のことも、ほんの少しだけ頭をよぎることがありました。

 それでも毎日のように、メモをとっていました。

2003年9月21日

『今日は、外出の日。

 病院からタクシーで30分ほどの美術館に行く。

 母は、もしかしたら若い頃は、私などよりも美術が好きで、よく行っていたらしく、だから、今日も作品の解説をするギャラリートーク、というイベント(?)に合わせて、到着するようにした。

 母は、とても熱心に聞いていて、だけど、あれだけ集中していると、その分、疲れて、それで倒れないだろうか、とちょっと心配になる。

 それから、また移動をし、駅ビルの回転寿司で、寿司を食べた。よく食べてくれて、ホッとした。

 そのあと、病院へ戻ったら、午後8時くらい。

 ちょうど、いつもの寝る時間くらいだけど、外出をして、疲れたと思う。

 とにかく、今日は、楽しんでくれて、よかった。

 でも、こういう楽しい時があると、また良くないことが起こるんじゃないか、と不安になる』。

 線路の向こう側の、鉄道の敷地の中に小屋みたいな建物がある。

 雨が降って、雨が屋根からたれてきて、その前に水たまりが出来ていて、それで直線的に水がはねているのがホームから見える。
 そのはね方が、テレビなどで見るような、マシンガンの着弾のあと、みたいな動きに思える時もある。

 そして、水たまりがいつもの雨の時よりも大きいので、今日はけっこう降っているんだ、と改めて気がつく。

カサ

 ホームの先に階段があり、ほぼ線路の高さまで降りていて、そこからさらに先に駅員の事務所のような建物がある。

 その建物の前の柵に、たぶん駅員が使うビニール傘なのだろうけど、10本くらい、ダーッと並んでひっかけてある。

 ほとんどが透明で、時々、いくつか薄い色がついているのがあった。ぶら下がっている細いナス、に見えた。

                         (2003年9月21日)


 この生活は、まるで終わらないように続いたのだけど、その翌年、2004年に、母親の肝臓にガンが見つかった。
 手術をして、いったん落ち着いたものの、2005年には再発し、2007年には、母は病院で亡くなった。
 義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、2010年に大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。

 2018年12月には、義母が103歳で亡くなり、19年間の介護生活も突然終わった。2019年には、公認心理師の資格も取得した。 
 昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。

2023年9月21日

 天候は、不安定だった。

 雨が降りそうで、小雨になって、少し晴れ間が見えたと思ったので、洗濯を始めて、干したら、また降ってきた。

 今日は、出かける用事があったので、昼過ぎに出かける。

 小雨が降っているかどうかくらいだったので、折りたたみカサを持っていたのだけど、ささないまま駅に着いて、電車に乗った。

中止

 いつものように電車の中で時間が経って、そして、駅に着く。

 それから、ホームで気持ちを整えてから、現地に向かう。

 ところが、今日は都合により、その用事は中止になった。

 謝ってもくれたし、家に電話もしてくれたようだけど、自分が携帯もスマホも持っていないので、直接、伝えるしかなくて、なんだか申し訳なかった。

 それに、どちらにしても、中止が決まった時刻は、電車に乗って、かなり移動していた頃だった。

 こういうことも、よくあるので、でも、なんだか緊張感は少し落ちて、それで、帰ってきた。

 帰りの電車に乗る前に、この前買おうと思っていたチョコパンを買った。

除菌アルコール

 帰りに、いつもの駅で乗り換えた。

 行きは気がつかなかったのだけど、帰りは、改札そばにある除菌アルコールポンプが、その机ごと見当たらなかった。もしかしたら、もう消毒は必要ないという判断なのかもしれない。

 まだ、感染拡大は続いているし、ワクチン接種も始まったばかりなのに、もうコロナは終わった、と思いたいし、思えるような、若くて健康で、周囲に持病を持つ人や、高齢者がいない人の方が、多数派になってしまったのだろうか。重症化リスクを持つ人への想像はされなくて当たり前になっているのだろうか。

リモート

 夕方になった。雨は上がって、ほんの少し夕焼けになっているようだ。

 今日の夜は、ズームによるミーティングがある。

 コロナ禍によって、こうしたリモートの作業は増えたのだけど、その習慣は、個人的には、できたら、これからも残っていき、選択できる方がいいと、思っている。




(他にも介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)




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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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