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「介護時間」の光景 ⑬  「夜」 6.16.

  もう14年も前のことになってしまいますが、私は、介護をしていて、母親が入院している病院に通い、帰ってきて、義母の介護をする、ある意味で短調な生活を続けていました。仕事もやめていたので、ただ、それだけで毎日が過ぎていました。

 2000年から、そんな生活が続いていて、何年かたって、母親の症状は波があるものの、多少落ち着いてきた頃に、今度は母親が内臓の重い病気になってしまいました。他の病院にいったん移って、手術をして、一応は成功したものの、再発に怯えていたのが、14年前くらいのことでした。

 そんな不安で、不穏な気持ちが、周囲の光景に反映されていたようでした。
 病院に通って、今日は悪くなってしまうのかも、と思いながら、病室に行き、そんなに変わりがないと、ちょっと安心して、何時間か病室にいて、夜になって、家に帰っていく時のことだと思います。


      (2006年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。



 夜の空の雲の端が赤くなっている。

 夕暮れよりも、ずいぶんとたった時刻。
 その赤さ。そして、空へ広がった雲の面積も、印象が強いわけでもないけれど、微妙なポジションで、だけど、不思議に気にかかるような配置。
 そんな事は勝手な思い込みに過ぎないけれど、でも、妙に落ち着かない感じがした。

                       (2006年6月16日)



それから、14年がたちました。
 
 

 天気が良くて、温度が高い日になりそうです。
 緊急事態宣言が解除されて、明らかに空気がゆるんで、電車に乗ると、それまであった「距離」が消えてしまっていて、微妙な恐さを感じていて、でも、周囲の変わってしまった気配に、少し飲み込まれそうな日々が続いています。
 そういう不安が形になったように、ここ何日か、特に東京都内の感染者の数は増加傾向になっているようです。

 朝、妻が庭にいるはずなのに、ドアのチャイムが鳴りました。
 1階に降りて、ドアを開けたら、妻が不安そうな顔で、庭で立って、上を見ていました。

 さっき、大きな、スズメバチ が、とんできて、あっちに飛んで行った……。

 妻の見ている方を見て、少し追いかけたら、何もいなくて、また、戻って、しばらくしたら、上を、ハチが飛んで行くのが見えました。残り少なくなっていたハチ撃退用の黄色い缶の殺虫剤を持ってきて、空へむけて、まきました。

 ハチは、遠くへ去ってしまいましたが、スズメバチ は、やっぱり恐いので、なんとかしたいと思いました。

 本に書いてあった「スズメバチ ホイホイ」を作ろうと思って、買い物に行った時に、小さい焼酎を買ってきて、制作している途中で、その焼酎の量では足りずに、また小さいものを2つ買いに行きました。

 介護途中で、心臓の発作を起こし、それで私は、アルコールをやめてから20年以上がたつので、アルコール飲料の売り場のどこに小さい焼酎があるのか、最初はわかりませんでした。久しぶりにアルコールを買い、オレンジジュースとまぜて、空のペットボトルに入れて、「スズメバチ ホイホイ」をつくり、柿の木にぶら下げました。

 13年前に母を亡くし、2年前に義母が亡くなり、介護が終わり、そこから、少しずつ昼夜逆転がやわらぎ、ようやく、普通に近い「生活リズム」に戻りそうになったのが、2020年だったのですが、コロナ禍で自粛をして、外出を控えて、人類の動きは止まり気味になっていて、自分たちもそれに合わせるように暮らしています。

 だけど、スズメバチ は恐いですが、人類以外の生物には、そんなことは関係ないと、改めて思いました。

 庭には、ビヨウヤナギの黄色い花が咲いています。


                        (2020年6月16日)



(参考資料)


(他にも介護のことを、いろいろと書いています↓。クリックして、読んでいただけたら、うれしいです)。

介護離職して、10年以上介護をしながら、50歳を超えて臨床心理士になった理由①

介護に関するリクエスト①「気分転換をしようとしても、悪いことが起きるような気がします。どうしてでしょうか」

介護の大変さを、少しでもやわらげる方法① 自然とふれる

「介護相談」のボランティアをしています。次回は、2020年 6月24日(水)です。

「介護books」②介護が始まるかもしれない人へ。不安を(少しでも)減らすための4冊


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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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