読書感想文「噺家が詠んだ昭和川柳 落語名人たちによる名句・迷句500」美濃部 由紀子 協力 (編集)

 川柳とは,ここまで人柄を表すのか,と驚きの一冊だ。落語家の大師匠らが集った「鹿連会」。三遊亭圓生,桂文楽,古今亭志ん生,柳家小さん,桂三木助,春風亭柳枝,林家正楽,三升家小勝,橘家圓蔵,金原亭馬生,三遊亭圓歌などなど,眩しすぎるラインナップだ。
 自然体なのに,何かしらおかしい,つい笑っちゃうのが志ん生である。「鍋」がお題になると,「玉の輿乗りそこなって手鍋さげ」。玉の輿を目指していたのにそれが叶わなかったのだから,可哀想なのに,むしろ滑稽さを感じさせる。それに対し,長男・金原亭馬生は「鍋の中話とぎれてネギを入れ」。鍋を中心に囲む人たちの絵が映画の1シーンのように浮かんでくるじゃないか。これらは,あくまで,一例だが,それぞれの落語の持ち味のように,噺家が作り出す川柳は,その噺家の色を出す。
 それは川柳が持つ,くすぐりやひねりの要素が,その人のセンスや着眼点と直結するという,その人らしさそのものなのだからだろう。
 じわじわと戦後の名人たちと川柳で戯れるための一冊である。


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