日本のビリーホリデイと呼ばれた人がいた。
私の大好きなミニシアターに行ってきました。
今回はビリーホリデイを題材にした映画「Billie ビリー」です。
不世出のジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイ。
⼈種差別と闘い、酒と薬に溺れ、⾝も⼼もボロボロになりながらもステージに⽴ち続けた彼⼥の⼈⽣はいまだ謎が多いとされています。
そんなビリーの⽣き様に共感したジャーナリスト、リンダ・リプナック・キュールが 1960 年代から 10 年間かけて関係者にインタビューを重ねた膨⼤な録⾳テープがこの度発⾒されました。
その貴重な証⾔をもとに構成されたのが、このドキュメンタリー映画なんですが。これはネタバレとなってしまいますが、ビリー・ホリデイに魅せられて彼女の真実を追っていたジャーナリスト・リンダは38歳で自殺したという一報のもと、その仕事が宙に舞ってしまいます。
映画ではこれは他殺でしょうと結論付けられていますが。ジャーナリストが闇に葬られなければならないほどの闇がビリー・ホリデイにはあったのかもしれません。
浅川マキというシンガー
ルイ・アームストロングが楽器を奏でるように。トランペットのように歌いたいとビリー・ホリデイが言ったシーンが心に残っていますが、彼女だけしか表現できない表現をする、そんな不世出のシンガーだと思います。
歌に何か魂のようなものを込め聴衆の一人一人に訴えるように歌うその姿を見た時、また日本のビリー・ホリデイと呼ばれた人、浅川マキという人を思い出しました。
詳しくは以前に書いた私に音楽の仕事を教えてくれた人の記事に書いているので読んでみてください。
私と浅川マキさんとの関係性について書いた記事です ↓
改めて歌っている映像のビリー・ホリデイを見ているとこの浅川マキさんが日本のビリー・ホリデイと言われたことを思い出しました。
奇妙な果実という曲
ビリー・ホリデイの曲でこの曲を避けて通れない。
そんな1曲がある。
それはStrange Fruitという曲です。
日本語訳の「奇妙な果実」とは、リンチにあって虐殺され、木に吊りさげられた黒人の死体のことで、歌詞は「南部の木には、変わった実がなる・・」と歌い出し、木に吊るされた黒人の死体が腐敗し崩れていく情景を描写してます。
「奇妙な果実」は、ニューヨーク市ブロンクス地区のユダヤ人教師エイベル・ミーアポルによって作詞・作曲された。
1930年8月、彼は新聞で二人の黒人が吊るされて死んでいる場面の写真を見て衝撃を受け、これを題材として一編の詩「苦い果実(Bitter Fruit)」を書き、「ルイス・アレン」のペンネームで共産党系の機関紙などに発表した。ミーアポルはアメリカ共産党党員であり、フランク・シナトラのヒット曲を生みだすなど作詞・作曲家ルイス・アレンとして活躍する一方で、ソ連のスパイで死刑になったローゼンバーグ夫妻の遺児を養子として引き取るなど、社会活動も行った。
のちに自身も作曲や共産党や教職者組合の集会で彼の妻が唄うようになったことで徐々に知られるようになった。
(Wikipediaより引用)
こんな背景の曲をビリー・ホリデイがクラブのステージで歌うことになり、あまりに衝撃的な曲なので最初はオーディエンスも全く反応がなかったらしいです。
しかし、徐々にこの曲への反応が出てきていつぞや彼女のスタンダードナンバーとなっていくそうです。
奇妙な果実の世界も黒人として差別や過酷な幼少期を経てシンガーとして立つビリー・ホリデイが歌うとより真実味や凄みが出てきたのは想像にかたくないわけです。
音楽映画に何を見るのか
映画ビリーもやはり同様に一人のシンガーの人生を描いた音楽映画でありましたが、やはりドラッグと多くの恋、栄光と挫折。
時には、この「Billie ビリー」のように人種差別との戦いなども描かれる。
多くの点で共通点の多い音楽映画でありますがやはり私はこの音楽映画に魅せられてしまうんです。
栄光に至りその後破滅に向かっていく激しさ。
一流に上り詰める天才の瞬間的な熱量とその有り余るパワーを瞬間的に爆発させる人のもつエネルギーのようなもの。
自分には真似することの出来ないそのパワーの放出を見ているのかもしれません。
そしてその音楽映画を観た後、その主役たちが奏でた音楽を出来る限りに準備された環境で聴きたい。そう思っています。
ビリー・ホリデイの曲はこちらからも試聴可能です。 ↓