(コンサート)2夜連続ストラビンスキー②
2夜連続、ストラビンスキーのコンサート。2日目。
1日目についてはこちら。↓
コンサート情報
The Rite of Spring
2022年2月18日(金)
ロイヤル・フェスティバル・ホール(ロンドン、サウスバンクセンター)
指揮者:イヴァン・フィッシャー
コンサート前のトークショー
コンサート前に、トークが行われました。
サウスバンクセンターの音楽・パフォーミングアーツ部門ディレクターの、ギリアン・ムーア女史と、オックスフォード大学教授でストラビンスキー研究のジョナサン・クロス氏による対談。
・・・の予定でした。コンサート当日は嵐で公共交通機関が乱れまくり。バース在住のジョナサンは会場にたどり着けず、ギリアンさんひとりのレクチャーから始まりました。
途中でふらりと指揮者のイヴァン・フィッシャーが登場。ひょうひょうとしてます。
そして、ギリアンと並んで腰掛けでトーク。
ストラビンスキーの音楽
ストラビンスキーの「春の祭典」(The Rite of Spring)は、怒り狂った神に生贄を捧げる儀式を描いたバレエ音楽です。うら若い踊り子が死ぬまで踊り続けるという生贄。
インテリでバリバリのキャリアウーマン、ギリアン女史は、「フェミニストの私としては、男たちに囲まれて女性の踊り子が生贄として死ぬまで踊り続けるっていうのはなんとも許せないわ」という。
それに対して、イヴァンは「そう? 僕は好きだけどねー」と笑う。「楽しいじゃない」って。あまりにもひょうひょうと言うので、ギリアン女史、顔がちょっとひきつらせて一瞬固まる。この二人の対比が面白い。
嵐の日に行われたこのコンサート。トークの最中も、外の電飾がすごい勢いで揺れている。ストラビンスキーの春の祭典にふさわしい、荒れ狂い方。そんな様子を見ながら「『春の祭典』の演奏が終わったら、(生贄の儀式が終わって)嵐もおさまるよ。」とまたまたひょうひょうと笑う。
ストラビンスキーの音楽性がとても多岐にわたっていること、ストラビンスキーはなんでも挑戦したがる人だったことにも話が及ぶ。今回のコンサートの前半部分でも、ジャズ的な要素を取り入れた曲も演奏する。バラエティに富む作曲をしているけれど、どれもストラビンスキーの個性が表れている。
オープンで好奇心旺盛な彼は、春の祭典のような古典的な儀式をテーマにする一方、キリスト教要素のアヴェ・マリアも作曲している。有名なシューベルトのアヴェ・マリアとは雰囲気が違う。
この「春の祭典」と「アヴェマリア」の対比が面白くて、その対比を表現するために、以前「春の祭典」の間に「アヴェマリア」を入れて演奏したら、クレームがきたと。「でも、真ん中に入れなきゃいいんだよねえ。前とか後ろとか。」といたずらっぽく笑う。
「ききたい」と声があがる。
「今日やろうか。」と冗談っぽく言うイヴァン。
「いいよ、ここでみんなで決めても。」って。
ゆるりとした冗談が好感持てる。
演奏
コンサートで「春の祭典」は本当に素晴らしかった。嵐で公共交通機関の多くが運休、他のコンサートホールも軒並みキャンセルだった日に、観客はちゃんと来て満席。
この曲は、1913年発表。あまりにも前衛的で、独特なリズムで、不協和音も多く、最初の公演のときには気持ち悪くなる人が続出。曲の途中で客が文句を言いながら退場するという混乱を招いた曲。そのときの音楽批評も散々で非難の嵐。
第一次大戦前に、この曲が受け入れられなかったのも不思議じゃない。今だって、観客は若い人が多い。(モーツアルトは観客の年齢層が高かったなあーーー。笑)心臓の弱い人が生で聞いたらショックで心臓発作起こしかねないと思う。
私は心臓発作起こさないけど、衝撃的に興奮する演奏だったから、心臓には刺激が強かったと思う。
これはやっぱり生で聴かないと!
といいながらも、動画を載せておきます。バレエとともにオーケストラをお楽しみくださいませ。
で、「春の祭典」が終わる。総立ちのスタンディングオベーションに応えるために、出てきたイヴァン。何度目かで、アンコール。
オーケストラが全員楽器を置いて、起立する。全員、手には白い紙を広げている。
オーケストラが、突如合唱団に。オーケストラの配置のままとは思えないまとまりのある合唱が、ホールに響き渡る。
ストラビンスキーのアヴェ・マリア・・・・・・。
美しかった・・・。
「春の祭典」と「アヴェ・マリア」の対比。両極端な美しさ。
感動で涙ボロボロでした。
アヴェマリアが終わり、席をたつ。感動しすぎで、横にいた夫と抱き合って泣いてました・・・。
「春の祭典」コンサート終了。外に出たら強風がおさまってました。
興奮しすぎてすぐには記事にできず。2日たって、やっと冷静に記事にかけました。
芸術。すばらしい。
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