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甘美なるカヤジャムの世界
マレーシアのジャム「カヤジャム」とは
初めて食べたのは、数年前に生まれて初めてシンガポールに行ったとき。とにかくおいしすぎて、即座に私の好物ベスト10にランクインしました。日本に帰っても忘れられず、YouTubeでレシピを調べて作ったことも。
もともと私はイギリスの「レモンカード」というカスタードクリームを凝縮したようなジャムが大好きだったのですが、それを東南アジア風にしたものと聞いて、納得。
東南アジア風というのは、バターの代わりにココナッツミルク、バニラの代わりに現地でお菓子によく使われるパンダンリーフが使われます。あとはたっぷりの卵とお砂糖。
ゆっくり卵に火を入れながら、トロトロトロトロに詰めていくと、ぽってりとしたジャムになります。出来上がりは、パンダンリーフから色が移って、萌黄色というのか、きれいな薄緑色。果物が入っていないので、正確にはジャムでなくクリームですが。
これをパンにのせて食べると絶品。パンダンのやさしい香りと卵の濃厚な存在感で、幸福感に包まれます。シンガポールやマレーシアでは、カフェで朝ごはんにカヤトーストセットというものがあり、カヤジャムがサンドされて外側がカリカリに焼かれた食パンと、温泉卵がでてきます。温泉卵に数滴醤油を垂らして、スプーンで半熟の白身と黄身を小さなピースに分けるようにかき混ぜ、そこにカヤジャムサンドをディップして食べるのです。その幸福や、言葉につくせないほどの深い味わい。そもそも卵たっぷりのカヤジャムに、半熟卵が加勢して、それはそれは贅沢な味わいになります。そこに、濃いめのマレーシアコーヒーをぐいっといくと、もう完璧。
「カヤ」という名前は「豊かな」「リッチな」というマレー語だそうです。その名に恥じぬリッチなジャムです。
最近、タイの食料品店で売っているのを見かけましたが、なにぶん高いので、クアラルンプールに行ったら、たくさん買って帰ろうっと。