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心細さや不安て、どう乗り越えて大人になった? ~おススメしたい!「ブルー きみは大丈夫」(IF)~
※シーンの紹介はありますが、ストーリーについてのネタバレはありません
ハートフルな子供向けの映画がまた一つ。
と思ったらちがったー!!
前半でこそ、そうなのだけどね。
大学生の頃、英米児童文学を専攻して、自分がファンタジーの世界に簡単に入れるタイプなのだと知った。周りはそうでもないと少しずつわかるのだけど、今はっきりわかるのは、もう50歳も過ぎたのにいまだにファンタジーが好きだから。
20歳当時は今より強い好奇心とエネルギーで、様々な分野の本や映画に手を出した。好きな対象が狭まっていくなんて、知識としてしか知らなかった。
でも「ファンタジーが好き」な気持ちは今も継続中。研究者でもないのに何歳になってもファンタジーがただただ好きなんて、頭の中がお花畑みたいだと思ってあまりおおっぴらにしないようにしていた。
こんなに夢中になったり、心落ち着いたりするのには何か理由があるはず。そう思って読み始めた「大人に贈る子どもの文学」。
猪熊葉子さんが80代後半に書いた内容に、「私はおかしくない」と言い聞かせ、恥ずかしさから脱しようとしている。
今回「ブルー きみは大丈夫」を観ていて、ファンタジー児童文学を読んでいるようで、前半は不思議な気分だった。原作があるのかなって思うくらい。
大人の入り口にさしかかった12歳の主人公。
家族や自分の心に漠然と、でも強い、命と成長の不安を感じていて誰にも言えない。
異世界への扉。
ファンタジーへの持っていき方や設定が児童文学っぽい。
ただ前半は、ファンタジー大好きな私にも世界観がわかりづらく、入り込みにくい。
まあでも子供時代に作った架空の友達だからね。たくさんいる謎のキャラクターたちが微笑ましい。
みんなにもいただろうか。イマジナリーフレンド。
原題の「IF」は、もしも私にこんな友達がいたら、といった想像を描く「IF」だし、「イマジナリーフレンド(Imaginary Friends)」の頭文字を取っての「IF」。
つまり不安な時や困った時に、空想上で自分を励ましてくれたり慰めてくれたりした存在。
私には一つだけ覚えている存在がある。
よく体調を崩して寝込んでいたので、本を読むのでなければ天井を眺めて過ごす時間が長かった。そこにはディズニーアニメに出てくる大人の女性キャラクターみたいな人がいて、よくその人に「大丈夫だからね」と言って微笑んでもらっていた。
大人になったら忘れてしまうその存在を、子供の頃には皆持っているという。もう空想していたことすらもさっぱり思い出せない人も多い。
中盤で、ビーのおばあちゃんフィオナが踊るシーン。心細そうでいながら、自信に満ちていく力強さも伝わってきて心揺さぶられる。
突然、ストーリーに厚みが増してきて「あれ? 思っていたより大人向けかも」と感じ始める。
私としてはおばあちゃんの立ち居振る舞いに、やたら親近感なのだけどね。段々自分の年齢がそっちに近づいてきていて気持ちがわかるのかも。もしも自分に孫がいて、訪ねてきたら私もあんな風になりそう!
コミカルな雰囲気と、ミュージカルな楽しいシーンと、急に厚みを感じるシーンが入り混じってきて、ライアン・レイノルズも役柄にピッタリ。
実はライアン・レイノルズが好きなために、この映画を観たいと軽い気持ちだったこともあって、すごくすごく油断していた。
教訓とか子供らしさとかからの感動の押しつけなんかはなくてね。
主人公ビーには、何故見える必要があったのか、その心情を思いやる。
そして大人が、子供時代と今の生活を振り返りたくなる。決して心細さや不安はなくなるわけではない。「よし頑張れ」「踏ん張らないと」って自分に言い聞かせる場面てたくさんあるよな。
猪熊葉子さんの本を読みながら、ファンタジーは、不安や緊張など強いストレスを感じている時、大人にも必要だって腹落ちしつつあるところだった。それを映画を通して教えてもらった気がして、観て良かった。
油断してのぞんで良いけど、大人が楽しんで観てほしい映画。最後まで胸がいっぱい。
*
あとキャラクターたちの声が、サム・ロックウェル、ブラッドリー・クーパー、マッド・デイモン、オークワフィナ、ジョージ・クルーニーなどなどなど! パンフレット見るまで気づかなかった。豪華過ぎ!!
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