【書評】当事者にしかわからない苦悩〜『吃音─伝えられないもどかしさ─』(近藤雄生)
以前、吃音に悩む少年を描いた小説の書評を書きました。椎野直弥さんの『僕は上手にしゃべれない』という小説です。
この記事にリンクを貼った吃音のノンフィクション『吃音─伝えられないもどかしさ─』をようやく読むことができました。こちらも涙なくしては読めない作品でした。作者は近藤雄生さん。2019年の本屋大賞ノンフィクションにもノミネートされました。
1、内容・あらすじ
100人に1人、100万人が抱えているとされる吃音。
それだけの人が悩んでいるのにもかかわらず、発症するメカニズムも治療法も未だにわかっていません。
また、医学的な位置づけも曖昧です。精神障害に入るのか身体障害に入るのか、あるいはそのいずれでもあるのか。治せるものなのかそうではないのか、また、話せる時と話せない時があるのはなぜなのか──。
この曖昧さが、吃音を抱える人たちの困難に拍車をかけています。
吃音が人生に大きな影響を与えた人たちへの丹念な取材を通し、当事者たちが抱える問題の深刻さに迫ったノンフィクションです。
2、私の感想
この本を読んだ理由は、私自身も吃音の生徒と関わっているからです。また、『僕は上手にしゃべれない』を読んで吃音に強い関心を抱いた、ということもあります。
それらがなければこの本も読まなかったかもしれません。しかし、最後まで読み終えて「これは多くの人が知るべき問題だ」と強く思いました。
吃音を抱えている人の状況はきわめて深刻だということがよくわかります。
特に、吃音のために就職もままならない人が多く、何人もの事例が書かれています。中には、自殺を考える人も。
ところどころ泣きながら読みました。
吃音というものについて、現在は医学的にどこまでわかっているのか、どのように接するべきか、などについても詳しく書かれています。
3、こんな人にオススメ
・教育関係者
学校現場での理解が進めば、吃音を抱える人たちの困難は減ると思います。
・吃音で悩んでいる人
著者の近藤さんも吃音で悩んでいた一人です。
・世の中の人全員
究極的にはこれです。吃音に対する理解が進むことを願ってやみません。