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新嘗祭-新穀を祝い、豊穣を祈る-
11月23日、現在の「勤労感謝の日」は、かつて「新嘗祭(にいなめさい)」として祭日にあたっていました(明治6年から昭和22年まで)。
新嘗祭は、その年に収穫した新米を神様にお供えし感謝を捧げるお祭りで、宮中をはじめ全国の神社で斎行される神事です。川越氷川神社でも、11月23日朝8時30分より執り行います。
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思えば、有史以前の人々も、現代を生きる私たちも、同じようにお米を育て、食べることで生命を紡いでいます。神道は、農耕をはじめとして人間が自然と交わり生活を営む中から生まれた信仰。
当神社の新嘗祭では、神職・巫女が種籾の状態から大切に育てたお米を神様にお供えしています。
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今回は、川越の地に暮らした名もなき人々の稲作の歴史に触れながら、自然と人が織りなす壮大な循環について考えてみたいと思います。
豊葦原瑞穂国—葦や稲穂が豊かに稔る国
春夏秋冬の四季と豊かな自然に恵まれた私たちの国を先人たちは「葦や稲穂が豊かに稔る国」と呼んでいました。
稲作文化に根ざしたこの表現は、8世紀初頭にまとめられた歴史書『古事記』『日本書紀』に見られます。同書によれば稲穂は天照大御神が授けたものとされています。
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では、川越の地ではいつ、どのように稲作が始まったのでしょうか。
考古学の知見を頼りに遡ってみます。
川越における稲作の始まり
縄文時代が終わる頃、川越では海岸線の後退とともに、人々の生活痕が途絶えます。再びその痕跡が見られるのは、約2000年前の弥生時代中頃。この時期に稲作が始まったとされます。
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(出典『川越の歴史 : 市制六十周年記念』,川越市,1982.10)
先の地形変化は、入間川の流路に影響を与え、自然堤防と広大な湿地を出現させました。まさに稲作に適した土地が形成されたのです。
地中からは何層にもわたる葦の痕跡が見つかっています。新たな土地を探し移動してきた人々は、葦と稲の生息地の重なりを知っていたのでしょうか。
湿地帯一面に繁茂する葦を前に、大喜びで鍬を握る姿が想像されます。
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(出典:川越市総務部市史編纂室 編『川越市史』第1巻 (原始・古代編),川越市,1972)
境内から出土した古代祭祀の痕跡
稲作に欠かせない「水」は、恵みであると同時に、洪水や干ばつを招く脅威でもありました。人々は自然の力を畏れ、水や山の神々に祈りを捧げる祭祀を行っています。
当神社の境内や隣接する鶴ヶ島市の遺跡からは、滑石製の祭具(剣型模造品など)が出土しており、これらが古代の祈りの痕跡を物語っています。
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(出典:川越市総務部市史編纂室 編『川越市史』第1巻 (原始・古代編),川越市,1972)
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(出典:川越市総務部市史編纂室 編『川越市史』第1巻 (原始・古代編),川越市,1972)
川越氷川神社では、こうした土地の歴史を背景に毎年新嘗祭が行われます。どなたでもご参列いただけます。古代から続く「自然と人間との調和」や「感謝の心」を改めて感じていただける機会になれば幸いです。