読書記録「負け逃げ」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、こざわたまこさんの「負け逃げ」新潮社 (2015)です!
・あらすじ
「死ぬほど退屈で、でも最低限の生活には困ることのないぬるま湯のような」この村を、いつか僕は出ることができるのだろうか。
夜が果てしなく長く感じるようになったのは、いつ頃からだっただろうか。田んぼと畑に囲まれたこの村は、夜な夜な不快な声が聞こえる気がする。どれだけ行っても逃れることのできない、悪魔の声だ。
だから僕は毎晩、イヤホンを付けて自転車で山を超えた先の国道を目指す。悪魔の声を振り切るために、最大の音量と最速のスピードで。
そんなある夜、国道沿いのラブホテルから出てきたばかりの同級生 野口と出会ってしまう。いつも足を引っ張るような歩き方をしている彼女は、生まれつき右足に障害を抱えている。
自転車の後ろに乗せて話を聞くと、どうやら度々村に来た男と寝ているらしい。この村とつながりを持った人間たちを逃さないために、それがこの村に対してできる、唯一の復讐だとも。
恐らく彼女は、彼女の右足は、この村から出ることができないのだろう。そしていつの日か、この村に殺されてしまうことを悟っている。だから彼女は、いつか村を出る僕とつながりを持とうとはしない。
野口もまた、この村にいる悪魔の声が聞こえるのかもしれない。彼女に限らず、この村の人々はみなこのぬるま湯のような村に抗っているのだろうか(あらすじは「僕の災い」より)。
先週上野不忍通りは「池のほとりの本のみち」にて、持ち寄り本棚にあった本を頂き、この度読み終えた次第。
解説(重松清さん)によると、こざわたまこさん自身が東北の田舎出身であり、小さな村で"大して不幸でもないくせに不自由しか感じていないような男の子と女の子"をテーマに田舎と著者の話を描いたらしい。
私の地元は、まぁ東北とかと比べたらそこまで田舎ではないけれども、時折地方特有の人間関係の網の緻密さを感じることがある。
同級生の〇〇は出た道右に曲がって5軒目の家の人と結婚したとか、逆に〇〇は未だに彼氏がいないだとか。私の地元でもそうなのだから、田舎のように限られた人間関係の中では、余計に密なのだろう。
前に読んだ凪良ゆうさんの「汝、星の如く」然り、辻村深月さんの「傲慢と善良」然り、村や島という"小さな世界"から抜け出したいと思う人は多い。現に私だって薄々その気持ちがあるから、実家を出たのだし。
地元を出たいという理由は様々である。それが東京で夢を叶えるであったり、ただ単純に親から離れたいであったり。
ただ少なくとも、そこに留まっていたら、死にはしないが不自由を感じたまま生きることになる。実家に帰る度に、そう思ってしまう。
勿論、地元に残ることや返ってくることが悪いということではない。生まれ育った町に貢献したいとか、地元で結婚して今幸せっていう友だちもいる。そういう風に考えられることに、憧れなくはない。
都会に出て何かを成すとか、必死になって生きれる人に、私は輝きを見出す。おそらく自分は、中途半端に生きているから。
それでも、それこそ「負け逃げ」でもいいから、もうちょっと必死に生きたいと思った。必死になって逃げれば、どこかしらにたどり着けるのだから。それではまた次回!
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