読書記録「八月の御所グラウンド」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、万城目学さんの「八月の御所グラウンド」文藝春秋 (2023) です!
・あらすじ
彼女から別れを切り出された俺(朽木)は、夏の京都に取り残された。
彼女は俺に対して、「あなたには火がないから」、別れるのだという。
殺人的な蒸し暑さの京都から脱出する理由も心の余裕も金もない俺は、幼馴染の多聞から焼き肉に誘われる。
奢りとあらば好きなだけ肉を胃に収めていると、多聞から頼みがあるのだと切り出される。
実は企業から内定を貰ったのだが、研究室をサボりまくったために、卒業論文が書けずに困っている。教授に直談判したところ、ある条件を達成すれば、卒論の材料を提供してやろうと言われたそうだ。
その条件は、「たまひで杯」という野球大会で優勝すること。
卒論のためとはいえ、一体誰が好き好んで朝っぱらから野球をしなければならないのか。そもそも人が集まるのかと聞くと、教授は「大丈夫、なんとかなる」の一点張りだと言う。
というわけで朽木君、君には3万円貸しているのと、今回焼き肉を奢った恩がある。世の中タダより高いものはないのだよ。
かくして御所G(グラウンド)で野球をすることになるのだが、不思議と人が集まった。
ある時は当日欠場が2人いたにも関わらず、中国人留学生のシャオさんと、たまたま通りかかった「えーちゃん」が参加した。
教授の言う通り、なぜか人は揃う。今までずっとそうだったと。
先日、同じく万城目学さんの「鴨川ホルモー」を読了したのを皮切りに、会社の図書スペースの新着図書に並んでいるのを見かけ紐解いた次第。
今まで「万城目作品に苦手意識が…」と言っていた私が、手のひら返しに貪り読んでいる。さながら「ホルモー」で何かを失ったかのように。
それはさておき、「八月の御所グラウンド」である。
朝6時から行われる野球大会にも関わらず、不思議なことに、一度として選手不足で没収試合になったことはないのだという。
工場に勤務しているというえーちゃんに、法学部の遠藤君、彼の後輩の山下君。
だが、最初にある”仮説”を思いついたのは、日本のプロ野球を研究しているシャオさんだった。
ここから話が飛んで、ネタバレに通じる話になる。
既視感を覚えたのは、パワプロクンポケット2の戦争編。ゲームボーイで何度も挑戦したため、やたらと記憶に残っている。
野球選手の主人公がある日目が覚めると、そこは太平洋戦争真っ只中の日本だった。
日本陸軍に配属され、北方・西方・南方の戦線へ赴き、任務でツキを貯めながら生き残るほぼ運ゲーである。
回復コマンドのない戦場では、任務で体力を疲弊し、突然のスコールで体調を崩す。当然敵と戦うこともあれば、爆撃や魚雷から身を守ることもある。
このゲームの生還条件は2つ。1つは頬をつねって夢から覚める。もう1つが200週生き延びることである。
200週生き延びるとエンディングが流れる。焼け野原で何もなくなった土地で、敵味方関係なく野球を始める。
そして主人公が「平和が一番」と言って物語が終わる。
何の話やねん、と思うかもしれないが、そういう時代があって、そのために亡くなった野球選手もいたということ。
野球ボールの代わりに手榴弾を投げることになった投手がいたということ。
平和だったら、戦地へ赴くことなく野球を続けられたかもしれない人々がいたということ。
私にとって、戦争は祖父母が経験した過去の歴史であり、今も冷戦中だと語る方もいるけれども、私にとっては遠い出来事である。
つまりは何も知らないに等しい。だけど、これだけは言いたい。
「平和が一番」だと。それではまた次回!
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