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読書記録「海辺のカフカ(下)」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、村上春樹さんの「海辺のカフカ(下)」新潮社 (2002) です!
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・あらすじ
15歳の誕生日を迎えた時、僕は家出を決意した。夜行バスで四国に向かい、小さな図書館の片隅で暮らすことになった。
僕は様々な人と出会った。夜行バスで一緒になったさくらさん、図書館で受付をしている大島さん。そして、図書館館長の佐伯さん。
僕は佐伯さんやさくらさんが、僕の母や姉だったらいいのにと思った。
母と姉は、僕が4歳の頃に家を出ていった。そのため、戸籍上においても、僕の親は父しかいない。
しかしその父も、何者かの手により殺された。時間的には、僕は確かに四国にいた。だけど、その頃の記憶は残っていなかった。
これは父の予言通りなのだ。「お前はその手で父を殺し、母と交わり、姉とも交わることになる」だろうと。
「どうやら君には数々の乗り越えるべき課題を課題を抱えこんでいるみたいだね」と彼は言う。乗り越えるべき課題、と僕は思う。
久方ぶりに村上春樹さんの長篇作品を読み終えた。大学4年生の頃に読み始め、社会人になって読み終えた「1Q84」以来である。
上巻を読み終えた時の読書記録に、通しの感想は下巻を読み終えたらと記した。
しかし、読了した今でも、何を書けばいいのか、分からないでいる。正直、何を読み終えたのかも曖昧である。
君の外にあるものは、君の内にあるものの投影であり、君の内にあるもののは、君の外にあるものの投影だ。だからしばしば君は、君の外にある迷宮に足を踏み入れることによって、君自身の内にセットされた迷宮に足を踏み入れることになる。
例えば、サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)」の主人公は、目の前の現実を嘆いていた。
ニューヨークという街で過ごし、気取り屋のピアニストやうそっぱちの劇場や映画に対して、ひどく参っている。
だから彼は純粋なるもの、穢れを知らないものを求めていた。
一方「海辺のカフカ」では、かつて母に捨てられた経験が、少年が考えている以上に心を蝕んでいたかのように見える。
そして、まだ社会に出たことのない、義務教育すら終えていない少年である。
それなのに(あるいは、だからこそ)、少年は自分の力だけで生きようとする。誰にも頼らず、一人で生きることばかり考えている。
少年には愛情が足りていなかった。いや、愛情を知らなかった。
なぜ誰かを深く愛するということが、その誰かを深く傷つけるというのと同じじゃなくちゃならないのかということがさ。つまりさ、もしそうだとしたら、誰かを深く愛するということにいったいどんな意味があるんだ?
少年には、母と姉が家を出ていった理由がわからなかった。なぜ自分を捨てたのかを、考えることができなかった。
しかし、逆に言えば、母が僕を捨てなければならない理由があったのかもしれない。
つまるところ、この作品の大筋は、「かつて母に捨てられた少年が、母の愛情に気づき、母を許すまでの物語」なのだろう。
そのために、彼らはとても長い旅をした。たくさんの人々の助けを借りて、やるべきことを成し遂げた。
それを見届けられただけでも、この作品を読んで良かったと思う。
もっとも、考察の余地がある箇所に折り目はつけている。
少年が森の奥底でたどり着いたあの場所についてとか、彼らが開いた「入り口の石」のこととか、『海辺のカフカ』のこととか。
だけれども、私は考察が得意な読書家ではないものでね。説明しないと分からないと言うことは、、、ってやつよ。
「ことばで説明してもそこにあるものを正しく伝えることはできないから。本当の答えというのはことばにできないものだから」
少なくとも、「海辺のカフカ」を読了したため、飲み友達から言われたことに従えば、これからはハルキストを名乗ることができる。
もっとも、私はこれまでハルキストを自称したことも、自らをハルキストだと思ったこともないのだけれども。
やれやれ。それではまた次回!
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