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子ども時代の「すき」は、最強の「武器」になる

この記事では、子ども時代の「すき」という曖昧な感覚が、のちに自分の価値や充実感を高めることにつながることを、実体験をまじえて記しました。キーワードは「自分軸で考える」です。

■ 「すき」は、あなどれない

みなさんは、子ども時代に「〇〇がすき」と漠然と思った経験はありませんか?

この感覚は、とても曖昧です。
明確な理屈はありません。

それゆえ、子ども時代を過ぎると、たいていこの感覚を忘れてしまいます。

ただ、この感覚はあなどれません。なぜならば、これがのちに最強の「武器」になり、自分の価値や充実感を高める推進力になる可能性を秘めているからです。

経歴を図にして気付いた3つのこと

以上のことは、恥ずかしながら54歳になって気づきました。

そのきっかけは、自分の経歴を図にしたことです。

私は、2024年11月に独立20周年を迎えたのを機に、自分のウェブサイトをリニューアルしました。このときの大きな課題は、プロフィールの情報の一部をヴィジュアル化して、文字数を減らし、見やすくすることでした。

そこで、自分の経歴を1枚の図に凝縮して表現しようと考えました。文章よりも図のほうが直感的で、時系列が伝わりやすくなるからです。

その結果、できた図はこちらです。

川辺謙一の経歴図

この図を作成して気づきました。私の場合、子ども時代に抱いた「すき」という感覚を基点にすると、自分の経歴がすっきりと整理できるのです。

これによって、次の3つのことに気づきました。

  • ① 「すき」は、自分軸から生まれる

  • ② 「すき」は、技能を高めるきっかけになる

  • ③ 複数の「すき」が希少価値を生む

それぞれくわしく説明します。

① 「すき」は、自分軸から生まれる

これについては、「当たり前じゃないか」と思う人がいるでしょう。
そうです。「すき」という感覚は主観的なものなので、自分を中心とする軸(自分軸)から生まれます。

子ども時代には、自分が「すき」だと思ったことに興味を持ち、「もっと知りたい」と思う。それは、おそらく多くの方が経験しているでしょう。

しかし、大人になると、これがやりにくくなります。とくに組織に属すると、他人との比較で自分を見る機会が増えるので、自分軸で「いま何をしたいのか」と考えることを忘れてしまいがちです。

だからこそ、自分子ども時代に立ち返り、当時抱いた「すき」という感覚を思い出すことが大切になります。

私の場合は、子ども時代に、以下に示す3つの「すき」がありました。

  • 乗りものがすき

  • 科学がすき

  • 表現がすき

1番目の「乗りものがすき」は、わたしがのちに「科学」や「表現」に興味を持つ根源になる感情です。

私は、「乗りもの」を通して「科学」に興味を持ちました。

「なぜ乗りものが動くのか」という疑問を持ち、本を読んでそれを調べる。そのうちに自分だけの乗りものがつくりたいなり、乗りものの模型を自分でつくり、それが動くかどうか実験する。

そうした繰り返しによって、「科学」がどんどん「すき」になったのです。

また、私は、「乗りもの」の絵を描くことで、「表現」に興味を持ちました。当初は「すき」だから「描く」という、自己満足のためのものでした。

ところが、その方法をいろいろ試すうちに徐々に技能が高まり、「他人に喜んでもらう」ための手段へと進化しました。

私は幼稚園時代から絵を描くのがすきで、「自分が描いた絵を見せたら、他の子や先生が喜んでくれる」という体験をしてきました。また、高校時代には、古文の授業で習う紀行文のパロディを書いたら、同級生にウケたという体験をし、意外と自分は文章を書くのかすきなのだと気づきました。

そうした繰り返しによって、「表現」がどんどん「すき」になったのです。

② 「すき」は、技能を高めるきっかけになる

これは、多くの人にとってわかりやすいでしょう。

一般的には、技能の向上にはトレーニングが必要であり、苦痛をともないやすいです。たとえばスポーツでは、まず基本的な「型」を学び、ひたすら反復練習をして、身体に覚え込ませるということがよく行われます。これは、おそらく多くの人にとってハードなことでしょう。

ところが、世の中には、それを苦痛だと感じず、どんどんと技能を高めることができる人がいます。それは、トレーニングによって自分の技能が高まることを「楽しめる」人がいるからです。

すきこそものの上手なれ」という言葉があるように、「すき」なことに興味を持ち、それをもっと知りたいと思うことは、技能を高める大きなきっかけとなります。

かくいう私も、「すき」という感情のおかげで、「科学」と「表現」に関する技能を高めることができました。また、1996年春には両方の技能で、他人からお金がもらえるようになりました。

なお、当時は、これはあまり大っぴらに言うことができないことでした。現在とちがい、会社員の副業・兼業が原則として禁じられていたからです。

このため、こっそりと二足のわらじをはき、両方の技能を磨きました。表向きは会社に属する技術者としての腕を磨きつつ、一目につかないようにクリエイターとしての腕を磨く。これを継続することで、両方の技能を高めることができました。

③ 複数の「すき」が希少価値を生む

これは、複数の分野の知識や技能、経験をかけ合わせることで、自分の価値を高める希少性が生まれる、という意味です。

かくいう私は、会社員時代に技術者としての自分の価値を高めることがあまりできませんでした。会社の研究機関では、自分よりもはるかに優秀で「とんがった」技術者たちが集まっており、彼ら彼女らについていくのがやっとだったからです。

それゆえ、子ども時代の「すき」をふり返る余裕はありませんでした。猛スピードで変化する業界の流れに乗り、日々の仕事に追われた結果、すっかり「自分軸」を失い、「仕事を通して社会に貢献する」だとという高尚なことを言える立場にはありませんでした。

そこで私は、一念発起。
2004年に会社を辞めて独立し、フリーランスになりました。

このとき、次に示す2つの目標を掲げました。

  • 「すき」を仕事にする

  • 自分の技能を最大限に活かす

そこで、自分の「すき」について、次のように考えました。

子ども時代には、次の3つの「すき」があった。
・乗りものがすき
・科学がすき
・表現がすき

それならば、3つの「すき」を全部活かせばいい。少なくとも、乗りもののことをある程度知っていて、技術者としての経験と、出版の仕事をした経験の両方を積んできた人は、日本ではほとんどいない。
この希少性は「武器」になる。

私はそう考え、乗りものを通して科学や技術を一般向けに翻訳する仕事をはじめました。つまり、「乗りもの」を「科学」の視点でとらえ、一般の人が理解しやすいように「表現」する活動を開始したのです。

この結果、私は、独立から20年以上もフリーランスとしての活動を続けることができました。それは、先述した3つの「すき」が、自分の希少性を高めるうえで最強の「武器」となり、活動継続の推進力になったから、と自分なりに分析しています。

なぜならば、希少価値となる「武器」がないと、フリーランスの世界では生き残ることができないからです。この世界では、生存競争が激しいので、中途半端に一芸に秀でている状態では、すぐに後塵を拝することになります。

■ 子ども時代の「すき」を大切に

以上、自分の経歴を図にして気付いた3つのことを記しました。

この図ができたことで、子ども時代の3つの「すき」が、自分の人生に大きな影響を与えたことが、あらためてわかりました。

私は、最近になって、今の職業が「適職」であると実感できるようになりました。ここで言う「適職」とは、「天職」とまでは言えないけれど、自分の「希望」と「適性」に合致した職業のことです。

もし会社員のときのように「自分軸」を失ったままなら、こうした実感を持てなかったはずです。子ども時代に抱いた3つの「すき」を活かせず、実績も残せず、「自分なりに社会に貢献している」という実感も持てなかったでしょう。

その点においては、私の「すき」を受け入れてくれた世の中に対して、たいへん感謝しています。

ぜひみなさんも、「他人軸」ではなく「自分軸」に立ち返り、子ども時代の「すき」という感情を、あらためて思い出してみませんか? 他人の目は気にせず、「自分がもともとどうしたかったのか」「いまどうしたいのか」を考えるだけでOKです。

そのことは、ひょっとしたら新たな人生を切り開き、自分の価値や充実感を高めることにつながるかもしれませんよ。

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川辺謙一@交通技術ライター
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