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300人規模の組織で、ボトムアップな文化を発展させるには?「カルチャー編集室」の試み

こんにちは。広報部のあべあいりです。
子どもの居場所づくりや学び支援を行う認定NPO法人カタリバは、13年間過ごした東京・高円寺から、東京・中野にオフィスを移すことになり、移転準備を機に組織の文化を再編するプロジェクト「カルチャー編集室」が立ち上がりました。

組織カルチャーの課題解決は、一見すると経営や人事の手で、組織構成や人事制度によるアプローチを想起させます。しかしカタリバでは、コミュニケーションのデザインを通じてカルチャーを見直し強化していくプロジェクトとして、広報部が「カルチャー編集室」を推進しており、私はプロジェクトマネージャーを担当しています。

「カルチャー編集室だより」では、これから数回にわけてカルチャー編集室の活動内容、オフィス移転の様子をお届けしていきたいと思います。第1回目となる本記事では「カルチャー編集室」が立ち上がった背景についてお話します。

私たちも手探りからのスタートだったこのプロジェクト。インナーブランディングやインナーコミュニケーションを重視する企業・NPOの広報担当の方、組織の一体感を高めたい方、多くの人の意見を集約したオフィス移転の成功を目指す方々にとって、少しでも参考になればうれしいです。


「カルチャー編集室」はメンバーの主体性を育み、クリエイティビティを高めるプロジェクト

13年間拠点としてきた高円寺から中野へのオフィス移転を機に組織文化を見直していこうとする議論のなかで、2023年11月頃に「カルチャー編集室」の構想が生まれました。

その際に「もっとNPOらしい、ボトムアップのカルチャーを強めていきたい。」という代表の言葉をどう解釈していくかは、プロジェクトの方向性を決めるためにとても大切なポイントでした。

カタリバにはビジョン・ミッション・コアコンピタンス・クレドがあります。
カルチャーはこれらがうまく駆動できる風土や土壌のような存在で、言い換えたら「言葉にならぬ雰囲気」だと解釈しました。

また、2024年5月に開催した全社会議では「カタリバの強み」を考える2日間の研修を実施。全社会議を経て、改めてカタリバの強みといえる言葉が沢山挙げられました。
例えば…

  • 現場からはじめる:n=1から様々な事業が生まれ、様々な状況にいる子どもに支援が届けられている。現場の声を聞く

  • 課題定義:現場の声をきっかけに、課題を定義し、発信する。課題解決のためには様々な人と協力することが大切で、その最初に課題定義(アジェンダセッティング)を行う

  • 本気や熱量の伝播:カタリバが課題解決に本気で取り組む姿勢で、周りの人が変わっていき、社会の風向きを少しずつ変えることができる

  • 対話を通して、共感を生み、仲間をつくる:どんな時も対話を通して共感を生み、仲間をつくることで、様々な課題を解決していく

  • クリエイティビティ:既定路線を崩したり、0→1を生み出すマインドをもっている

  • 専門性とアマチュア性:プロフェッショナルとして専門性を磨きつつも、より身近な生活者目線(アマチュア性)を使いこないしながら、よりクリエイティブに生み出し、届ける

など、他にも様々な「カタリバの強み」が言語化されました。

2024年5月に開催した「全社会議」の話し合いの様子

カタリバの役割は、子どもにとって必要なことを迅速に届けることを通して、これからの社会の当たり前をつくっていくことだと私は考えています。

行政や民間企業が難しくともNPOだからこそ、スピーディーに動き、届けたり、新しい取り組みにチャレンジすることは強みといえそうです。

こうした強みを発揮・駆動させていくために、カルチャー編集室は誰もがチャレンジできて、それを応援する雰囲気をつくり、組織全体のクリエイティビティを高めることを目指そうと考えました。

そのゴールを見据えながら、まずはじめに取り組んでいくことはメンバーが「主体性」を発揮できる環境づくりです。

組織の成長とともに浮かび上がった課題

創業期からカタリバでは、メンバー間での密な対話により、まだ世の中に「社会貢献」や「CSR」といった言葉が浸透していない時代から組織運営を行ってきました。

現在では、さまざまな状況にある子どもを支援する組織へと成長し、それに伴いメンバーが増え、業務委託も含めて300人規模の組織に。地方拠点も複数あり、また遠隔地からオンラインで関わるメンバーも多数います。

情報共有や意思疎通の難しさも見られるようになってきましたが、ビデオ会議や承認システムの導入、月1で組織全体で集まるオールメンバーミーティング、年1の全社会議等を実施することで、組織運営を効率化しつつ、ガバナンスの強化にも励んできました。

一方で、こうしたシステム化やテレワークによってインフォーマルなコミュニケーションの機会が減り、メンバー同士の相互理解が薄れてしまうという新たな課題感が浮上してきています。

「名前はチャット上で知っているけど、お話したことはない」という「オンラインだけの関係性」になるメンバーも増え、自然な対話の場が減り、組織と個人との距離感も広がってきていると私自身も感じています。

ウィズコロナを乗り越えたきた団体ですが、アフターコロナのハイブリッドワークが主流となったなかで、これからどのように対話を用いて組織文化を再編していくかが、課題の一つといえそうです。

「主体性」を重視した組織づくり

カルチャー編集室が目指すのは、メンバー一人ひとりが「主体性」を持ち、自らの意思で行動できる組織文化の再構築です。

一般的に組織文化というと、人事制度やルールを見直して組織のシステムや業務プロセスにアプローチします。

しかしカタリバでは、システムやプロセスだけに依存せず、メンバー同士のつながりや、互いに理解し合うことで自然発生的に生まれる「主体性」を活かし、組織運営や事業活動を進めていくことが、組織全体の力を引き出す鍵だと考えています。

そのために「自分の意見が尊重される」「やりたいことが実現できる」感覚を持てるようになることが、貢献意欲の向上につながるはじめの一歩ではないかと考えています。活動を通して、こうした好循環を生み出していきます。

「カルチャー編集室だより」として活動の様子をnoteでお届けします!

このプロジェクトは、広報部が中心となって進めていますが、カタリバに関わるメンバー全員の主体的な関与が不可欠です。メンバーが自ら考え、行動し、互いに理解し合いながら新しい文化を共に築いていくことで、組織に新たな活力が生まれると考えて活動しています。

2024年4月頃からオフィスの移転に関するワークショップやイベントを複数回開催し、これまでに延べ150名以上のメンバーが活動に参加しました。

カルチャー編集室の活動を誰もがタイムリーに把握できるよう、
「カルチャー編集室新聞」という社内向けポータルサイトを運営しています。

なかにはワークショップを経て生まれた、新たな取り組みもあります。そのような活動の具体的な進め方や様子を伝えるために「カルチャー編集室だより」として、noteに連載することになりました。

カルチャー編集室の活動を通して生まれた事業横断型のコミュニケーション機会
「コーヒータイムFIKA」の様子

あらためて、カルチャー編集室は組織の一体感と共創する文化を再構築するための試みです。今回はカルチャー編集室が生まれたきっかけや、どんなことを目指して活動しているのか、まずはどんなことに取り組んでいこうとしているか等についてお伝えしました。

次回のカルチャー編集室だよりでは、具体的に行ったオフィス移転に関する意見収集・集約に関するワークショップの内容をお伝えします。楽しみにしていただけたらうれしいです!


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