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“香り”を探究する中学生が、世界中のあらゆる香りを創る企業の社長へインタビュー!企画~記事作成まで

こんにちは。文京区のユースセンター(※1)「b-lab(ビーラボ)」の運営に携わっている横田です。b-labは、日々中高生たちが思い思いの放課後や休日を過ごす「中高生の秘密基地」です。

前回に続き、中高生の「やってみたい」を実現するためにどのようなサポートを行ったのか、中高生とスタッフのエピソードをご紹介します。

▼前回の記事

※1 ユースセンター中高生(ユース)にとっての、家庭でも学校でもない自由な第3の居場所。

 “香り” の探究を深めるために企業へのインタビューを企画!

b-labでは年間2回、フリーペーパー「Cha!Cha!Cha!」を発行。制作にはb-labスタッフ数名(編集長、デザイナー、学生インターンなど)に加えて、有志の中高生たちが関わっています。

フリーペーパーチームのMTG風景

今号では、前号でも活躍してくれた中学3年生のゆかさん(仮名)にインタビュー企画を任せることになりました。

発端は、ゆかさんに「今年はどういうページ作りに関わりたい?」と尋ねたこと。ただ、いきなり「何をしたい?」と聞いても、なかなかアイデアは出てきません。そこで、「前の号みたいな感じがいい?もっといろいろやってみたい?」と選択肢を提示しながら、意欲を確認します。

すると、「実は、外部インタビューをやってみたいです。学校の探究学習で、癒しとか香りについて調べているので、そういう会社に話を聞いてみたいかも」との声が。

「せっかくなら本人がやっていて楽しい内容だといいな。それなら本人の興味に合わせた企画がいいのでは?」と思っていたので、ゆかさんの案にすぐに賛同しました。

緊張しながらもインタビューを進めるゆかさん

また、学校で探究学習が本格化している中で、b-labへ来る中高生にとって学校外でプロジェクトを進行するのはスケジュールや時間的に難しい部分があります。そこで、学校の探究学習とb-labでの活動を連動させることで、本人にとって「b-labで活動するメリット」を最大化できると考えていたのです。

中学生と大人が協力してインタビュー日を迎えるまで

そうと決まればすぐに同じパソコンを見て、文京区内で香りや癒しにまつわる事業を行っている会社や団体、お店を一緒にリサーチ。いくつかの会社・団体を見た結果、文京区内にある「The Nioi Comapny」こと、香りのプロフェッショナルであり、香りづくりをビジネスとして成功させてきたプロモツール社へインタビューを打診しようということになりました。

プロモツール社の方へ具体的に「何を聞きたいのか」「なぜ聞きたいのか」はゆかさんに用意してもらい、私は以前新聞社で記者をしていた経験があるので、実際のインタビュー風景を想像しながら質問の順番を一緒に考えていきました。

また、企画書作成やアポイント取りなど、中高生だけで実施が難しいことは大人である私がサポート。メールでインタビューの依頼をしたところ、なんとすぐにOKのご連絡が……!

社長が直々にb-labへ来てくださることになり、インタビュー当日までにゆかさんと一緒に何度も流れの確認を行い、当日を迎えました。

社長と対談!中学生が主体となってインタビューを実施

そしてインタビュー当日。

「はじめまして。私は中学3年間を通して「癒し」について探究していて、今年は香りについて調べています。本日のインタビューを楽しみにしていました、よろしくお願いします」という、ゆかさんの挨拶から始まりました。

ゆかさんはプロモツール社について綿密に調べていたため、基本的には私は話さずに見守り、ゆかさんに進行を任せます

「一番難しかった香りは何ですか?」(その答えは、なんと「うなぎの蒲焼の香り」!)
「そもそも香りってどうやって作るんですか?」
「勉強中の中高生におすすめの香りってありますか?」
と、相手の目を見てメモを取りながら、プロさながらのインタビューをしっかりこなすゆかさん。

実際に香りを体験している中高生とb-labスタッフ

インタビュー当日は社長自らディフューザーを持参していただき、カレーやチャーハンなどの香りを体験させていただく場面も。中高生だけでなくスタッフも、あまりの再現度に目が丸くなりました。

インタビューを終えると、ゆかさんから「ひとりの中高生として純粋に面白いなと思いましたし、学校での探究学習に使えそうなありがたいお話もたくさん聞けました」という声が。

社長からも、「香りについてこれからもぜひ勉強していただきたいです。みんなには『私はこういうことがやりたいな』というのを見つけて、そこに向かって頑張って、どんどん夢を大きくしていってもらいたいです」と励ましの言葉をいただきました。

20,000字から2,000字へ!記事の作成も中学生が行う

インタビューした内容を実際に記事にする執筆作業をゆかさんにお願いしようかどうか迷いつつ、「どうする?」と聞いてみると、「やってみたいです!」との返答が。

文字起こしをして約20,000字の文章を、10分の1である約2,000字の原稿へとライティングしてもらうのは、中学生にとっては容易ではありません。

「まずは、一番伝えたいことを決める。それを伝えるために必要なトピックを挙げていくと、そぎ落とすべき部分も見えてくるー」

偉そうに言えるほどのスキルは私にもないのですが、新聞記者時代の経験を活かして、できるだけのアドバイスを全力で送ります。

最初に決めた「伝えたいこと」がぶれていないかを確かめながら、一緒に最終稿へと仕上げました。

「これをやって」と押しつけずに活躍の場を用意する

今回ゆかさんのインタビューや記事執筆に伴走した経験を通して、私自身、理想の伴走に一歩近づいたような気持ちになりました。

b-labで働いていて日々感じるのは、「これをやってほしい」と願うのと、「これをやって」と押しつけるのは全然違うということ。押しつけは絶対にしたくないと思っていたからこそ、今回ゆかさん自身にとってもメリットになるよう、学校での探究活動とb-labでの活動を紐づけました。

また、中高生にすべてやってもらうのではなく、大人がすべて進めるのでもなく、ゆかさんにアイデア出しやインタビュー、執筆をしてもらいつつ、私はアポイント取りや取材の仕方・執筆のアドバイスをする。そうやって中高生と一緒にちょうどいいペースで伴走できたという感覚があります。

今回ご紹介したゆかさんのお話は、b-labに来る中高生の、数ある活動の中のひとつ。他にも、b-labの音楽スタジオを紹介する記事をバンドマンの高校生が執筆したり、b-labのアクセスマップを新たに描きおろしたり。スタッフ、中高生が一丸となって、フリーペーパーの制作を行っています。

10月に配布されたフリーペーパーの紙面

10月には無事、文京区内の全中高生に、計約25,000部のフリーペーパーが配布されました。

自分が作り上げた記事やイラスト、デザインが文京区全域の中高生の手に渡る喜び、手ごたえを感じてほしい。区長をはじめ、大人とじっくり対話し、話を聞くことで自信をもってほしい。

そして大人である私たちは、「これをやって」と押しつけるのではなく、ただ活躍の場は用意しておきたい。そんな想いで、今後も中高生のための居場所づくりを進めていきます。


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