![マガジンのカバー画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122878614/68545909fe9bd9e6da8e30413091c4a4.jpeg?width=800)
- 運営しているクリエイター
#奥深さ
復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話
マガジンにまとめてあります。
暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。
河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。
街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第24話
マガジンにまとめてあります。
魔術師ギルドの者たちの中でも、とりわけ野心的な者たちは言った。
「水をワインに変え、食べ物を何もない空中から取り出し、不浄なる生ける亡者を消滅させ、失われた手足を再生させ、見えない目、聞こえない耳をよみがえらせ、また死者をも生き返らせることが出来たなら、どんなにか素晴らしいことでしょう!」と。
グランシアの友人の女魔術師がそう言うのを、アルトゥールは聞いたこ
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第12話 エピローグそして新たな始まり
マガジンにまとめてあります。
一行は、《ため息の響く丘》にあったアジトから見つけた、大量の金貨と、センリシアたちが対価として受け取ったのであろう大粒の宝石を山分けにした。
「よしよし、これでまた当分は遊んで暮らせるぞ」
アルトゥールたちは、プロフーサの街に来てから根城にしていた酒場にまた来ていた。今は仕切りで隠された個卓にいる。財宝の山分けは、《ため息の響く丘》のふもとでやった。不気味が
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第11話
マガジンにまとめてあります。
アルトゥールは標的の二人センリシアとマリシオンが葬られた墓地へやって来た。通称〈罪人の墓場〉は特に重い罪を犯した者が地下に横たわる場所だ。
ここには墓石は立たない。粗末な木の杭が立ち並ぶだけだ。無愛想で年齢の分からぬ女の墓守に礼を言って鉄柵に囲まれた中に入ると、誰も他にはおらず静かだった。
ここに来る前に、グランシアからこう言われた。
「もうセンリシアの
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第10話
マガジンにまとめてあります。
しかし未だ裁きの代償は受け取っていない。であればこそ青い包帯の守護者が、ネフィアルの裁きよりも遥かに優しい──そう優しいと言えるだろう──最期を二人にもたらしたのだとしても、代償もまた受け取る必要がなくなったのだ。
「これで僕が責任を負える範囲の話は終わってしまった。グランシアとヴィルマには何と言えばいいか分からないが」
北の地の戦士はそれには返事をしない。
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第9話
マガジンにまとめてあります。
ここは《死者の街》だ。アルトゥールはリーシアンを連れてここに来た。
「俺もその宝石柱を見たかったな」
「いや、間違いなくお前は見ない方がいい」
アルトゥールの物言いは皮肉げだが、口元には皮肉げでもない笑みが浮かんでいた。
《死者の街》は青い色に満たされている。古来、青は死者を弔(とむら)うための色とされてきた。不吉な色ではない。永遠の安らぎの色だ。
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第8話
マガジンにまとめてあります。
ここでヴィルマは意外な話をしだした。《死者の街》だ。
そう、《死人の街》とかつては言われていた場所がある。《ため息の響く丘》のふもと、アルトゥールとグランシアが登って行ったのとは反対側に。
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第7話
ヴィルマは、アルトゥールとグランシアを連れて、《ため息の響く丘》から一番近い城塞都市のプロフーサの街を案内してくれた。
もっとみる【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第6話
メイスは神聖なる武器である。他の武器とは異なる。それはみだりに武力を用いぬと決意した者の武器である。
ただし、用いる時には最大限の威力を発揮させるのだ。普段からそうした覚悟を持つようになる。
それゆえに神官となる道を選んだ者は好んでこの武器を使う。他の武器を使う者は、神技の力に陰りを生じる。ゆえにメイスは神聖なる武器である。
「神聖なる武器を用いる者には自制心が生まれる。そう、例えばだ
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第5話
アルトゥールは、近くにあったエメラルドの石柱を、メイスで叩き折った。比較的、細めの石柱であるが、渾身の力でなくては砕けない。
その時、欲は無く、うかつさも無い。ただ集中して無心にメイスを叩きつけたのだ。濃い色の緑の宝石の柱は、砕けて欠片を辺りにばらまいた。その一つ一つが、もしも手に入れられるなら半年は遊んで暮らせるほどのひと財産だ。ここにいる者たちは、全員目もくれない。
砕けた石柱の上部
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第4話
天幕の向こう側に逃げた長の様子は、アルトゥールにもグランシアにも見えはしないが、長はその時《風の魔術師》を呼んでいた。グランシアの《銀光の矢》は長の背に刺さらずに消えた。長のマントにはそれだけの力がある。
もっとみる【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第3話
黒葉は丘の頂上で栽培されていた。蔓(つる)草であるのに支えもなく真っ直ぐ上に伸びている。蔓(つる)にびっしりと黒い小さな葉が茂る。蔓の色は、ごく普通の草と同じように緑だ。
もっとみる【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第2話
「なんて美しいところなの」
グランシアは感嘆を漏(も)らした。
「そうだ、きれいな場所だな。怪しい薬のような物がここで作られているなんて信じられないくらいだね」
アルトゥールは、紫水晶の色の瞳で、辺りを悠然と見渡して続けた。
「この丘の頂上に、例の黒葉糖が作られている場所がある。情報の出所は確かだよ。ロージェのいる《裏通りの店》だ」
「それなら確かなんでしょうね」
グランシアはロ
【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第1話
誰にも伝わらないことがある。誰にも伝わらなければそのままにしておけ。その人は、きっと言っても分かりはしない。いや、分かりたくはないのだ。
君はこれからあらゆる人々を傷付ける。そしてあらゆる人々を慰め、癒やすだろう。その二つは同時に進行する。どちらか片方だけにすることは出来ない。それはどちらも等しく君自身の長所から、為せることを為した結果から現れる。君が誰かを傷付けないなら、君は誰をも助けない