シェア
軽井沢香澄
2020年8月22日 22:50
永遠に愛されるもの君が手に入れるはずのものそれは目地の黒ずみであって君の小説ではない
2019年12月14日 01:39
僕らはいつだって、ぼんやりとした硬さの石を頭に抱えながら、忘れたふりして生きている。偏頭痛の電流が、たしかにその不安が眠っている場所を教えてくれる。∴∴∴電脳半身浴∴∴∴いんたーねっと中毒者の君へこの世界は全部酸素不足で息苦しさに終わりはないこの海へおいでどうせなら甘い煙の中で溶けてしまおう むかしむかし、街には掲示板があった。電信柱があった。高架下に落書きがあった
2019年9月30日 03:13
昔住んでいた町の自転車で少し行ったところに大きな池のある公園があった中学にあがって僕は引っ越したから君と出会ったのはずいぶん後になるけれどどうしてか、一緒に歩いた思い出がある君の姿は高校生で出会ったばかりの少女の君でとびきりの笑顔で僕の横にいる遠い、古い写真のような温かい思い出本当の思い出も僕だけの思い出ももうどちらも手が届かないのだからそっと抱かせておくれあと少し
2019年7月19日 02:55
神よ!どうしてあなたはガーベラの咲く花園に彼女を一人残したのか神よ!おかげで私はアスファルトを宛もなく思い出を求めて歩かねばならない「さようなら!」溌剌とした声に振り向けば花園の戸は閉ざされるその時であったそれが何を示すかも分からず私はぎこちなく笑顔を返すだけだった神よ!せめてあの戸を叩かせてくれ叩かせてくれさえすればそれだけでそれだけで私は十分なんだ
2019年7月13日 01:59
対なるもの河原のチガヤと自転車補習ノートとガリガリ君溶けた氷と背骨のくぼみサバの頭と転んだ箸威勢のよいセミと夏のすべて対なるもの河原の鉄橋と自転車サボったプールとガリガリ君脂汗と背骨のくぼみ甲子園ラジオと箸の一方忘れた嫌悪と夏のすべて対なるもの河原の鉄橋と一万円サボったプールと腕の痣脂汗と喘ぐ息甲子園ラジオと日常忘れた嫌悪とカラス
2019年7月7日 16:32
私は何者で、どこから来て、どこへゆくのか。 待ちゆく人も同じである。どこから来て、どこへゆくのか、我々は徹底的に無知である。 しかしながら、私達は出会う。出会うとそこには事実が生まれ、事件が起こり、その時初めて我々は感じる。「生きているのだ、確かに、この時を。それだけは、疑いようのない…」 今朝の夢で新たに知ったことが2つあった。唇にあけた薄いピアスに触れた時の危うい愛おしさ。そし
2019年5月23日 22:15
五月 雨の翌日夜空に遮るものなく 澄み渡る空気都会の夜に星はいらない窓を開け 椅子に座り まぶたの裏を通してじっと宙を見通す静けさが生まれる意思はまっすぐな風 音のない衝撃 群青の鈍い輝き誰か見たものはいるか 見ようとするものはいるか空を駆ける 秘めるべき使者の姿を
2019年5月5日 23:58
私たちは世界に散らばる粒である粒であると同時に波でもある粒としてぶつかり、波として交わるそうするうちに、夜、予感が芽生える時が来る今夜は、女神に会える身支度をし、森へ旅立つ心積もりをする願わくば、実りのある巡礼であることを
2019年4月30日 22:51
届かぬ愛は秘匿するべし然してその熱は何処へ征く夢にて私は戦士となる蛮族の装いで森から世界を睨む護るは君加護を受け信心を斧に宿らす少女よ、どうか私に女神の祝福を
2019年1月15日 00:33
僕に詩は書けない。僕は裕福であるから詩が書けない。僕は足りているから詩が書けない。僕は凡庸であるから詩が書けない。僕は利口だから詩が書けない。僕は詩に恵まれていない。詩は僕を愛さない。空っぽな心臓からカラカラと音がなる。腰折るたびに落花生の殻が僕を笑う。僕は学者になれない。僕は頭が悪から学者になれない。僕は社会に慣れているから学者になれない。僕は器用であるから学者になれな
2018年11月28日 01:16
夏休みの昼、なぜか君と二人で歩いていた。空には大きな雲が浮かび、蝉の声が僕らを覆っていた。無口な君と、学校の帰り寄り道して、ジュースを買って、それなのに僕だけがどぎまぎしていた。「ゼリー色」「えっ」水たまりに青空が写っていた。「水だけど、水じゃないから、ゼリー色」また君は歩き出した。「明日はアイス買おうよ」都合よく蝉が鳴く。映り込む空はゼリー色。
2018年11月21日 00:17
死よ全き死よ万雷の喝采が私を迎える道端の日常より唐突な裂け目が見開く死よ全き死よ無味無臭の和音が嗚咽を呼ぶ膝をつく間も無くあらゆる感覚は焦点を失う死よいざ万来する性聖精醒
2018年11月18日 20:47
失ったものよ待ってくれ行かないでくれ気づけない私が悪いのかそれとも過ぎ去ったものの美しさが私の心を動かすのか
2018年11月17日 23:15
夏の夜の涼しさは四季を通じ参照されるのであって寝床で感じられる手持ち無沙汰の代名詞であるいまは窓を開けようものなら凍えてしまうのであの夜が羨ましい日中に募る焦慮はついに爆発し度を越した虚しさが仰向けの胸から溢れ出す黒く重たいものが床に伝うと同じく窓から入り込んだ冷気と触れるすると両者は反応を起こし煙となって浮かんでゆき窓を抜け星空へと帰ってゆく