僕に詩は書けない。
僕に詩は書けない。
僕は裕福であるから詩が書けない。
僕は足りているから詩が書けない。
僕は凡庸であるから詩が書けない。
僕は利口だから詩が書けない。
僕は詩に恵まれていない。詩は僕を愛さない。
空っぽな心臓からカラカラと音がなる。
腰折るたびに落花生の殻が僕を笑う。
僕は学者になれない。
僕は頭が悪から学者になれない。
僕は社会に慣れているから学者になれない。
僕は器用であるから学者になれない。
僕は顔色を窺うから学者になれない。
僕に没頭する必要はない。学問は僕を愛さない。
僕を愛してくれるものを僕は愛せない。
擦り切れたゴム底愛でる女のどこに魅力がある。
僕は人を愛せない。
僕は諦めがいいから人を愛せない。
僕は信念を信じられないから人を愛せない。
僕は嘘をつくから人を愛せない。
僕は一人っ子だから人を愛せない。
僕は死を恐怖している。死は愛を無意味にする。
行かないでくれ。ほんとうは怖がりなだけなんだ。小心者なんだ僕は。
許してくれ、許してくれ、なにも信じられないんだ。疑うことを止められないんだ。
死だけがその輪郭を強めてくる。私の境界を切り取ってくる。
拙い僕を許してくれ。拙い僕を、どうか、どうか…