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散文詩

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記事一覧

未来

永遠に愛されるもの

君が手に入れるはずのもの

それは目地の黒ずみであって

君の小説ではない

電脳街案内板、まだ目の覚めている君へ

僕らはいつだって、ぼんやりとした硬さの石を頭に抱えながら、忘れたふりして生きている。偏頭痛の電流が、たしかにその不安が眠っている場所を教えてくれる。

∴∴∴電脳半身浴∴∴∴

いんたーねっと中毒者の君へ

この世界は全部酸素不足で

息苦しさに終わりはない

この海へおいで

どうせなら甘い煙の中で

溶けてしまおう

 むかしむかし、街には掲示板があった。電信柱があった。高架下に落書きがあった

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僕だけの思い出

僕だけの思い出

昔住んでいた町の
自転車で少し行ったところに
大きな池のある公園があった
中学にあがって僕は引っ越したから
君と出会ったのはずいぶん後になるけれど
どうしてか、一緒に歩いた思い出がある

君の姿は高校生で
出会ったばかりの少女の君で
とびきりの笑顔で僕の横にいる
遠い、古い写真のような温かい思い出

本当の思い出も僕だけの思い出も
もうどちらも手が届かないのだから
そっと抱かせておくれ

あと少し

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亡き祖国の詩

美しき哉
愛ゆえに平原の草草は風に揺れ
遥かヒマラヤの雪深き山々に我々の詩を運び聞かせる

三つ束の矢よ
我ら家族の結束を星々に刻め
その愛に満ちた目鷹に似たりて
美しき哉

美しか哉
決意ゆえに氏族の旗は風に揺れ
遥かキエフの城にも我々の怒りを響かせる

三つ束の矢よ
我らの血を彼の大地に刻め
その高貴なる爪鷹に似たりて
美しき哉

美しき哉
希望ゆえに子は母の胸に揺れ
遥か星の降る時までこの歌

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神よ!

神よ!
どうしてあなたは
ガーベラの咲く花園に
彼女を一人残したのか

神よ!
おかげで私は
アスファルトを宛もなく
思い出を求めて歩かねばならない

「さようなら!」
溌剌とした声に振り向けば
花園の戸は閉ざされるその時であった

それが何を示すかも分からず私は
ぎこちなく笑顔を返すだけだった

神よ!
せめてあの戸を叩かせてくれ
叩かせてくれさえすればそれだけで
それだけで私は十分なんだ

対なるもの

対なるもの

河原のチガヤと自転車

補習ノートとガリガリ君

溶けた氷と背骨のくぼみ

サバの頭と転んだ箸

威勢のよいセミと夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と自転車

サボったプールとガリガリ君

脂汗と背骨のくぼみ

甲子園ラジオと箸の一方

忘れた嫌悪と夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と一万円

サボったプールと腕の痣

脂汗と喘ぐ息

甲子園ラジオと日常

忘れた嫌悪とカラス

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備忘録a、薄いピアス

 私は何者で、どこから来て、どこへゆくのか。
 待ちゆく人も同じである。どこから来て、どこへゆくのか、我々は徹底的に無知である。

 しかしながら、私達は出会う。出会うとそこには事実が生まれ、事件が起こり、その時初めて我々は感じる。

「生きているのだ、確かに、この時を。それだけは、疑いようのない…」

 今朝の夢で新たに知ったことが2つあった。唇にあけた薄いピアスに触れた時の危うい愛おしさ。そし

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礼拝

我が主人よ
三帰三礼をもってその御名に応えます
三界への招福と光なき者共への許しを
ここに願います

我らが主人よ
固き誓いと日々の礼節をもってその祝福に応えます
御名の下にある王国に招かれることを
ここに願います

我らが主人よ
この身この心は主人の為に
心ばかりの安寧と慈悲をここに願います

予言、五月

五月 雨の翌日
夜空に遮るものなく 澄み渡る空気

都会の夜に星はいらない

窓を開け 椅子に座り まぶたの裏を通してじっと宙を見通す
静けさが生まれる

意思はまっすぐな風 音のない衝撃 群青の鈍い輝き
誰か見たものはいるか 見ようとするものはいるか
空を駆ける 秘めるべき使者の姿を

予感

私たちは世界に散らばる粒である

粒であると同時に波でもある

粒としてぶつかり、波として交わる

そうするうちに、夜、予感が芽生える時が来る

今夜は、女神に会える

身支度をし、森へ旅立つ心積もりをする

願わくば、実りのある巡礼であることを

戦士

届かぬ愛は秘匿するべし
然してその熱は何処へ征く

夢にて私は戦士となる
蛮族の装いで森から世界を睨む
護るは君
加護を受け信心を斧に宿らす

少女よ、どうか私に女神の祝福を

それでも私は、

私の部屋には本が多い

あんまり本が多いので

本の上に本を乗せた

東京には建物が多い

あんまり建物が多いので

建物の上に建物を乗せた

とかく世間には人が多い

あんまり人が多いので

人の上に人を乗せた

本をいくらか捨ててみたが

本を積む癖は治らない

田舎に土地は余っているけど

「時勢だから」とビルは立つ

なんだか人は減ったようだけど

まだまだ私は上に立つ

本はそれに慣れて

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僕に詩は書けない。

僕に詩は書けない。
僕は裕福であるから詩が書けない。
僕は足りているから詩が書けない。
僕は凡庸であるから詩が書けない。
僕は利口だから詩が書けない。
僕は詩に恵まれていない。詩は僕を愛さない。

空っぽな心臓からカラカラと音がなる。
腰折るたびに落花生の殻が僕を笑う。

僕は学者になれない。
僕は頭が悪から学者になれない。
僕は社会に慣れているから学者になれない。
僕は器用であるから学者になれな

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ゼリー色。

夏休みの昼、なぜか君と二人で歩いていた。
空には大きな雲が浮かび、蝉の声が僕らを覆っていた。
無口な君と、学校の帰り寄り道して、ジュースを買って、
それなのに僕だけがどぎまぎしていた。

「ゼリー色」
「えっ」

水たまりに青空が写っていた。

「水だけど、水じゃないから、ゼリー色」

また君は歩き出した。

「明日はアイス買おうよ」

都合よく蝉が鳴く。
映り込む空はゼリー色。