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超短編小説「自白の必勝法」
「刑事さん。自白したら、本当に刑期を短くしてもらえるんですね?」
「ああ、司法取引ってやつだ。だからさっさと被害者の監禁場所を教えるんだ! 誘拐されてもう三日、てめえの言う通り水すらやってねえなら、今日中に死んじまう」
俺は、今にも嚙みつきそうな中年刑事と目を合わせ、ゆっくりと地名を言った。
「あすこの山はバブル崩壊で放棄された空き家だらけなんでね。俺だってどの建物か覚えちゃいない。適当な家の
超短編小説「身代わり」
事故だった。
揉み合いの末に押したら、バルコニーから落ちてしまった。突き落とすつもりなんかなかったのに。
手すりから身を乗り出して覗き込んだ、遥か下の花壇には赤い血が広がっている。ぴくりとも動かぬ肉塊になったのは、我らが王子だ。割れてはいけないところが割れていて、遠目に見てもはっきり死んでいると分かる。
まるで未来を予言するかのように、自分と瓜二つの死体。顔も服装もまるで同じだ。あえ
怪談「ブログ執筆依頼」
Cさんから飲み会で聞いた話。会話はそれっぽく再現してあります。
リモートワーク制にしたら退職者数が何倍にもなったので、うちの会社の上層部は慌てて「在宅勤務を減らそう!」「飲み会を増やそう!」という方向に舵を戻した。
「手取りの少なさが原因だろ」という魂の叫びはさておき、久しぶりに行った飲み会で、Cさんから聞いた話。
中途でうちに来たCさんは、前職を辞めた後、数年無職の期間があったという。貯金を
怪談「深夜のASMR」
「ASMRってご存じですか?」
――焚火の音や石鹸を削る音、耳かきの音なんて有名ですよね。心地いい音のことなんですけど、一時期はまっていたんです。ああいう意味のない音を聞いていると、寝付けないのが治るかなって。
時々見るアルファベットの連なりはそういう意味だったのか、と得心しながら私はうなずいた。
後輩のBさんは無意識なのか、安眠動画について話しながらかりかりと机をひっかいている。
「実際効果