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『コカイン・ナイト』読書感想。
火に薪をくべるがごとく罪悪により強制的に踊らされ続ける人生と、死人のように無為に生きる夢遊病者のような人生、あなたならどちらを選ぶ?
高級リゾート地エストレージャ・デ・マルで働く弟フランクに放火殺人の容疑がかかったことを知り、その地に向かうトラベルライターのチャールズ。
活気づいた町の様子に魅せられる一方、万引きや強盗、その他の犯罪行為を警察に悟られないよう隠し通そうする住人たちの様子に違和感を覚える。
町の住人である女医のポーラ、クラブのテニスコーチ・ボビーと出会い、交流することで、町の歩んできた歪んだ復興の真実を突き止めることになる。
犯罪、ドラック、セックスは空を彩る花火や、日常を非日常に変える祭と同等のものであり、人が生きる上で必要不可欠な起爆剤であるというモットーのもと、犯罪行為を繰り返すボビーに最初は嫌悪感を持つが、次第に引き込まれてゆくチャールズ。
真実を知ったとき、彼の下した結論とは如何に。。
Spotifyで配信中の『ハイパーハードボイルドグルメリポートnovision』のパパラッチ飯の回で、インタビューされていたパパラッチのアカギさんが放った一言が胸に呼び起こされる。
パパラッチになった理由を問われた際の
”小学生のとき、飛行機事故をニュースで見たのがきっかけですよ。そのときワクワクしちゃったんです。人にはそうゆうことを面白がる本性があるんですよ”
という言葉を思い出さずにいられない小説だった。
自分や世界と真正面から向き合っているからこそ、頭にこびりついて離れない残酷な真実。
大半の人が見て見ぬフリをしてやり過ごせることが、アカギさんやJ・G・バラードにはできなかった。
彼の自伝的小説『太陽の帝国』で、虐げられながらも日本の航空兵に憧れる少年の、身の置き場のない孤独と共通するところがある。
この小説の”悪が起爆剤となり、世界を活性化させる”という主張は納得しかねるところもあるけれど、世界の真実を真っ向から突いていることは言うまでもない。
戦争がなくならないという現実。
この事実が裏付ける残酷な真実。
迷宮のような世界の仕組みを彷徨い歩き、螺旋階段を登り詰めた先に、いつか思いもよらないユートピアが待ち受けることを願わずにはいられない。
今の真実と未来の現実は同じでなくても良いのだから。