『白の闇』読書感想。
突然目の前が真っ白になり盲目になる、謎の感染症が蔓延し、世界中がパニックになる。
世界中でただ1人、盲目にならなかった医師の妻は目が見えなくなったふりをして夫に付き添い、医師と共に精神病院へ隔離されることとなる。
盲目になることにより、他人の目を気にする必要がなくなった人々の粗暴で奔放な振る舞いを目の当たりにし、現実を取り繕っていた社会の脆さを知るのはたった1人盲目にならなかった医者の妻だけ。
「元から何も見えなかったのよ」
ラスト、妻の放つ言葉が重くのしかかる。
他人に作られたものにより成立する仕組みによりかかり過ぎたことによる悲劇は確実に私たちの世界と地続きにあるものだ。
社会に対する警鐘だったのだろう。
今はもう引き返すことすら叶わない。