『海底牧場』読書感想。
題と表紙イラストに飛びつき読み始めたけれど、思っていものと違い、地に足のついた近未来SFだった。
もっと遠くまで連れて行ってくれるタイプのSFの方が好きなので、ちょっと残念。
不治の広所恐怖症を発症した優秀な宇宙飛行士・フランクリンの挫折と克服の物語。
宇宙飛行士として挫折したフランクリンが次の職として選んだのが”牧鯨局”局員の仕事だった。
2060年、爆発的な人口増加に伴う食糧を補うため、目をつけられたのが、地球で一番大きな身体を持つ“鯨“だったのだ。
最初は局員として、深海を舞台にした冒険劇が広がっていく。
伝説に語られる巨大なウミヘビ等、未知の生物に出会えそうな機会が何度もあるのに、実際目にすることはできない。
そして、その冒険の際に友人を失ってしまう。
思い通りにいかない人生の産み出す悲哀がフランクリンのその後の人生に鳴り響く重低音となっていく。
“たるを知る“ことを学んだ人生の後半、彼は息子を最年少宇宙飛行士として宇宙へ送り出す、その瞬間までそれは続く。
欲しいもの全ては手に入れられないし、諦めたものも数多くあるけれど、それを含めて人生を慈しみ受け入れる大人のハッピーエンド。
期待していた種類の話ではなかったけれど、今の年齢に読む意義のある、とても良い小説だった。
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