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つみかさね

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4000字前後の短編小説です。
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記事一覧

【超短編小説】せよ

 目が合った。  この表現が正しいのかはわからないが、直感的にそう思った。  住居の植え…

三山 重
1か月前
8

【短編小説】渦

 鈍い音がして顔を上げると、店の奥のカウンター席から誰かが転がり落ちたようだった。ほどよ…

三山 重
7か月前
1

【短編小説】staRtice

 電車の遅延で到着が大幅に遅れてしまった。劇場に辿りついた時には公演の十分前だったという…

三山 重
9か月前
2

【短編小説】お揃いの

 ゆらゆらと立ち上るほんのりツンとした甘い香りが、熱を帯びたまま鼻腔をくすぐる。手を合わ…

三山 重
9か月前
3

【短編小説】うんめいのひと

 ごしゅじんさまは今日もかえってきません。まい日のおそうじとおせんたく、おりょうりはつか…

三山 重
10か月前
4

【短編小説】 隠して

 隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だっ…

三山 重
1年前
3

【短編小説】アイソレーション

「僕、人を殺してしまいました」  土の匂いが夜風に舞い上がる。土に汚れてその美しさは隠れてしまった。黒髪が茶色く染まって、視界の端に映り込んだ。空は相変わらず星を敷き詰めて輝いている。自由に腕を伸ばした木々たちが、僕から空を隠すように揺れた。  シャベルが不規則なリズムを刻んでいる。その手を止めても、シャベルの音は鳴りやまない。  深夜一時過ぎ、僕は履歴の下から二番目にあった名前に電話をかけた。久しぶりの電話が自白と懺悔になるとは思いもしなかった。電話の向こうから聞こえ

【短編小説】インパチェンス

 腕が重くなって手を止めた。気がつけば咲ちゃんの声ももう聞こえない。私を好きならその声を…

三山 重
1年前
4

【短編小説】私のオトモダチ

 気がつけばみいこはひとりぼっちだった。  幼稚園の頃から結月とは親友で何をするにもどこ…

三山 重
1年前
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【短編小説】保護

 連絡もなく佐知香が我が家にやってくるのは、今に始まったことではない。いつも決まって身体…

三山 重
1年前
3

【短編小説】 口実

 アルコールと揚げ物の匂いが充満した空間に誰かが連れてきた煙草の残り香が入り混じっている…

三山 重
2年前
1